■ガンバ大阪の「最高傑作」は、今期序盤苦しんだ

OSAKA発世界――。稲本潤一に始まり、今季は安田理大がオランダに渡るなど数々の「欧州組」を輩出してきたG大阪の下部組織。常に飛び級でクラブ記録を塗り替えてきた「最高傑作」は弱冠19歳にしてキャリアの「最終目的地」欧州のビッグクラブにたどり着いた。

「移籍も結婚も相手があってこそできるもの。特に早いとは思っていない」。バイエルン・ミュンヘンへの移籍に加え、結婚という公私において大きな節目を迎えた宇佐美貴史だが、今季に限って言えば、宇佐美たる所以を見せつけた試合は少ないと言わざるを得ない。U22の代表落選も、決してサプライズとは言い切れないのが現状だ。

プロ入り3年目にして初めて、主力の座を確保して挑んだ今季序盤、「至宝」と呼ばれる男に本来の輝きはなかった。FWの一角を務めた昨季とは異なり、今季は攻撃的MFを預かった背番号11は開幕戦のC大阪戦でこそ、持ち味のフィニッシュだけでなく、パスセンスなど懐の深さを見せつけたものの、その器用さがその後のプレーに災いする。

「去年のように外連味なくゴールに向かう姿勢がない。らしくないプレーでのミスが多い」(西野監督)。期待値が高い選手には、常にその最大値を求める指揮官もその不満を隠そうとはしなかった。

クラブの枠組みを超えた日本の才能に誰もが期待するのが自らの仕掛けと日本人離れした鋭い振り足からのフィニッシュ――。折悪しく、当時1トップを務めたエースのアドリアーノが中盤との連動性を欠いたこともあり、宇佐美が本来のシュート力を発揮する場面は少なかった。

■自己解決する謙虚さとクレバーさ

ただ、過去に天才と呼ばれながら消えていった幾多の才能と異なり、この19歳は自らの課題や現状を自己解決する謙虚さとクレバーさも兼ね備えている。2試合連続で途中交代を強いられた直後の福岡戦。あたかも昨年の大宮戦を彷彿とさせるドリブル弾で今季、初ゴールを叩き出すと、ようやく迷いが吹っ切れた。

「今までは、自分を見失っていた感があった」。アタッキングサードでの仕掛けに再び目覚めた宇佐美だが、同時に心の中では自らに新たな、そして飛び越えるには決して簡単でないハードルを課そうとしていた。

「ステップアップに挑戦すべきなのか、ガンバに残るべきなのか迷った」。両親ともに熱烈なG大阪サポーターで幼少から筋金入りの「ガンバ愛」を持つ19歳は、入団からわずか3年で世界最高峰の舞台であるバイエルン・ミュンヘンへの期限付き移籍を決意した。

「現段階で今のレギュラーと同等の力を持っているとは思えない」(宇佐美)。さすがの天才も自らの立ち位置を冷静に見つめているが、同じG大阪ユース出身の橋本英郎は昨季、後輩の可能性をこう看破していた。「貴史は既にガンバでも力を抜き気味でやれてしまっている。高いハードルを与えたら、その環境に適応できる力はある」。

■大きな可能性と課題

もちろん、ロッベン(オランダ)やリベリ(フランス)らそうそうたるスター選手を擁するバイエルンのアタッカー陣にあって、さすがの怪童も定位置確保は簡単でないことは自覚している。「現段階で同等に争える力を持っているとは思えない」とは宇佐美。ただ「現段階で」という枕詞を付けるあたりに、自らへの潜在能力に対する自信も垣間見せるのが、宇佐美の頼もしさでもある。

一方で可能性の大きさと同様に課題も存在する。西野監督がかねがね指摘し続けてきたオフザボールの動きの少なさだ。今年初招集されたA代表でも出番はゼロ。ザッケローニは宇佐美を五輪世代にカテゴライズしているが、メッシ(アルゼンチン)やネイマール(ブラジル)らは年齢に関係なくA代表で主力を務めている。「飛び級」たるナンセンスな概念が飛び交うのは日本ぐらいで、カルチョの国からやってきた指揮官には現状の宇佐美をA代