今、熟年の女性作家の勢いが凄い。小池真理子、桐野夏生、林真理子、宮部みゆき、乃南アサ、柴田よしき、諸田玲子、宇江佐真理などなど、実力派作家が鎬を削る。彼女たちは、東京オリンピックの華やかさを体験し、高度成長期を目の当たりにした人たちだ。二一世紀の日本はすばらしい国になっているはず。未来への希望でいっぱいだった時代を知っている。
 篠田節子はそんな作家の一人である。新刊『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』は、少し前ならSFというジャンルに括られた短編集だ。しかし、未曾有の大災害が目の前の現実となり原発の暴走で人類の滅亡でさえ有り得なくはない時代に突入した今、一番身近に感じる作品集になった。
 レアメタルを身体に溜め込んでしまったウナギ、自宅建築現場で発掘された大量の人骨、ロボットストーカーと恋、63年かかったトンネル工事の最終日、とテーマは違うもののすべての作品に共通するのは理科の匂いだ。テレビや映画の科学ドキュメンタリー作品を好んで見る人にオススメの一冊である。

(東えりか)







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