■関口の成長・チームの一体感維持のための謹慎処分

6月23日、仙台は甲府に4-0と大勝したが、この時仙台にはある問題が起きていた。この日途中出場となった日本代表MF関口訓充は、先発出場でないことに対し監督に異を唱え、試合中・試合後にふてくされたような態度を取った。このことを問題視した手倉森監督は6月26日清水戦に関口を帯同させなかった。すると関口はその日仙台で行われた非帯同組の練習に遅刻した。このため手倉森監督はクラブと協議し、クラブは1週間の謹慎処分を関口に下した。名古屋戦までは直接会っての謝罪も認めなかった。

手倉森監督はメディアの前で「今シーズンは勝ち負け以上に大切なものがある。サッカーをやらせてもらっている我々が恵まれた生活をしていることを考えれば、そこで起こる気分の悪いことは大きいことではない。自分たちより苦しんでいる人達の希望の光になるには、チームのため、東北のために働かなければいけない。試合に出て勝つことだけでなく、正しい態度・姿勢で居続けることが大事。そういう意味で彼の取った態度はチームにプラスになるものではないし、自分はそこは許さないと言って今シーズンやって来た」と処分の理由を語った。

また、手倉森監督は「これは教育」と何度も強調し、「正しい心を取り戻してくれれば良いし、いろんなことが起きつつみんなで成長できれば良い。サッカーを取り上げた中で自分と向き合ってみて彼が成長してくれれば良い」と関口をより人間的にも大きな選手に成長させたいという思いを口にした。

さらに「武藤も紅白戦で好調なので、どこかで使ってあげたい。(大久保)剛志もドラマチックなゴールを決めそうな気がする。若手が出場できない悔しさを抱えながら頑張っているのに、主力が遅刻してきたらしめしがつかない」と手倉森監督は語った。試合に出場できない若手が真面目に練習している中、主力が先発出場できずに不満をあらわにし、練習に遅刻する行為を見逃して試合に出し続ければ、チーム内のモラルが大幅に下がる。常日頃からチームの一体感を重視し、「試合に出ていない選手も含めて全員で戦う」ことを表明している手倉森監督としては、今回の関口の行為はどうしても見過ごせなかったのだ。

■関口、監督・チームに謝罪し練習に復帰

名古屋戦後初の練習となった7月5日、関口はピッチに現れ、久々に練習をこなした。いつもは練習中もよく声を出す関口だったが、この日はややおとなしい様子だった。そして練習後はコメントをせずに練習場を後にした。

練習復帰を認めた手倉森監督は「関口からは1週間雰囲気を壊したことに謝罪があった。いろんなことと向き合って考えて、清水戦と名古屋戦の力になれなかったことを申し訳ないと話してくれた。『今年はチームとして背負っているものがある。日本代表なので、それをもっと受け止めて欲しい』という話を自分からした」と関口との会談の内容を語った。「今日は関口を受け入れる側の態度も一流だったし、関口もチームの『一員』として入ってくれた。このチームは一体感がある、また強くなれると確信した」とこの日のミーティングと練習の雰囲気を見て、さらなる一体感向上に手応えを感じた様子だった。

手倉森監督の話を聞く限り、関口は十分反省しており、今回の問題はこれで収束するものと思われる。関口の練習でのパフォーマンスについて手倉森監督は「疲れが抜けてリフレッシュできている。コンディション的に問題はない。人一倍やろうとしてくれるだろう」と早くも柏戦での活躍に期待を寄せていた。

関口の謝罪・練習復帰により、チームは再び一体感を持って走り出しそうとしている。関口自身もピッチ上で良いパフォーマンスを出すことでサポーターの期待に応えようとしている。