2011年06月29日配信のメルマガより抜粋

 先週のメルマガに掲載したコラム「拝啓 日本のスポーツ新聞さま」の反響がツイッターを中心にちらほらあった。

 私自身、“かなり”オブラートに包んで書いたつもりだが、これまでああいった内容について書く、指摘するジャーナリストやライターの方はいなかったようで、読者の皆さんにとっては新鮮で興味深い内容になったのかなと想像している。今回、補足的に皆さんに紹介したいこと、書きたいことがあるので短くまとめる形でコラムとしてまとめたいと思う。

 今回のテーマは、私がこれまでずっと主張してきた記者会見の可視化と質問者の所属・氏名の公表に関連した取材現場での記者の姿勢について。先週のコラムで紹介した通り、スポーツナビのようなサイトで会見の全文を公開するような場合で、しかも日本の会見場では司会者から質問前に所属と氏名を名乗ることが義務付けられているにもかかわらず、記者クラブに属するメディアは「質問にも著作権がある」というよくわからない理由で所属と氏名の公表をNGとしている。

 私も偉そうに人のことを言える実力はないが、結局氏名公表にNGを出すのは自分が行なう質問内容に自信がないか、「もしかしたら低レベルな質問かもしれない」と思っているからだと想像する。

 技術的にはすでにテレビ局ではなくともUSTREAMで会見を生中継することができる以上、今後会見が可視化されていく方向にあることは間違いない。そうなれば、質問者の公表にダメだしをしているメディアとしても手の施しようがない。現に昨年のザッケローニ監督の就任会見の時、スポーツ新聞記者たちの質問やそのレベルがネットの掲示板を中心に議論の的となった。

 なぜ私が質問者の公表を熱心に訴えるかというと、結局のところ質問者がきちんと考え、質の高い質問を投げかけていくことで、会見に臨む監督や選手、メディア関係者、そしてそのやりとりを見聞きするサッカーファンのサッカーに対する見識が上がっていくと信じているから。

 私も試合後の監督会見は文字おこしに必死で質問する余裕がない時がまだあるのだが、会見場に到着すると試合内容を振り返った上で監督にポイントとなった部分や戦術的キーファクターを聞くべく質問を考えるようにしている。そういう訓練や経験を積み重ねていくことで質問のレベルも上がっていくのではないか。

 しかし日本の場合、会見後に監督の囲み、ぶらさがり取材があるため、会見が形骸化する傾向にある。私は会見後の囲み取材など非効率で時間の無駄、聞きたいことがあったら会見で聞けばいい、と考えているので二重取材は絶対に行なわないスタンスを貫いているのだが、会見場は「早く終わらせろ」という雰囲気が漂っている。だから、私は早く会見後には囲み取材を開きませんとはっきり言うJクラブや広報、監督が増えてほしいと願っている。

 スペインでも監督会見後に、監督がラジオ番組のインタビューに対応することはあるが、記者団が囲んでぶらさがるような形式にはならない。そんなことをしようものなら、広報担当者から「聞きたいことがあれば会見で質問しなさい」と言われるのがオチ。

 その意味でスペインや欧州での会見というのは会見に来る監督のみならず、質問したり出席する記者団もプロフェッショナルで意識が高い。スペインの場合、試合後の会見もテレビやラジオで生中継されていることが多いので、記者の中にも「見られている」という意識があり、低レベルな質問をしようものなら多くの視聴者、リスナーに恥をさらす結果となる。その緊張感こそが、鋭い質問を生み出し、会見をエンターテイメントに仕上げている。

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