イタリア国外のクラブの魅力が、セリエAの役者たちを惹きつけている。外国人選手たちだけではない。今夏はまず、イタリア代表DFドメニコ・クリッシトが国外への道を選んだ。同選手は税込で2000万ユーロ(約23億3000万円)という条件で、ゼニト・サンクトペテルブルクと5年間の契約をかわした。

クリッシトに続き、MFルイス・ヒメネスもイタリアに別れを告げている。ドバイからの誘いはあまりに強力なもので、彼はUAEでファビオ・カンナヴァーロと一緒になる。これだけではない。アレッシオ・チェルチもスーツケースを用意している。ローマの下部組織で大きな期待をかけられながら、イタリアではまだブレイクしていない彼は、マンチェスター・シティへの移籍に迫っている。

2006年のワールドカップ優勝の立役者だったイタリア代表の2選手も、天然ガスマネーの魅力に惹きつけられている。ジェンナーロ・ガットゥーゾとヴィンチェンツォ・イアクインタのことだ。彼らもまた、クリッシトのようにロシアへ行くかもしれない。

スペインとイングランドのリーグは、大きな魅力を持っている。よりリッチで、より競争力があり、より刺激的だからだ。一方、ロシアやUAEのようなリーグへの移籍を検討するのは、金銭的に興味深い機会となるからだ。

この現実に直近で直面したのがチェゼーナである。富豪たちの攻撃に、彼らは肩をすくめるしかなかった。チェゼーナはヒメネスに別れを告げることとなったのだ。彼はカンナヴァーロが所属するUAEのアル・アハリと合意に至り、4年契約をかわした。金額は明かされていない。

プレミアリーグから誘いが来れば、抗うのは難しいことだ。今、24歳のチェルチが何を感じているかは、容易に想像できるだろう。ロベルト・マンチーニ監督が率いるマンCが、彼に注目しているのだ。おそらく、彼にとってはキャリア最大のチャンスとなるだろう。しっかりとしたオファーであれば(700万ユーロ=約8億2000万円と言われる)、フィオレンティーナがチェルチを手放す可能性はある。

バルセロナは29日、MFチアゴ・アルカンタラの契約を2015年まで延長し、契約解除金を9000万ユーロ(約105億円)に設定した。確かに彼は、先日のU-21代表欧州選手権のベストプレーヤーだ。だが、9000万ユーロというのは、サントスFWネイマールの倍、同MFガンソの3倍という数字だ。

こういった金額を前に、セリエAの各クラブは見物人でしかないようだ。イタリアサッカー界のマーケットを動く2人のビッグネームが、ウディネーゼFWアレクシス・サンチェスとパレルモMFハビエル・パストーレであるのは偶然ではない。

サンチェスとパストーレがその価値に見合ったオファーを受け取ったのは、スペインとイングランドのクラブからだった。イタリアのクラブはより貧しいのである。天然ガスの皇帝やアラブの長、石油王たちは、イタリアでは投資しないのである。