ミステリ好きの間で「エッセイのような不思議なミステリ」と呼ばれている作品があります。それが英国人作家マーティン・ブースの『暗闇の蝶』(新潮社)。そんな小説が7月2日公開のジョージ・クルーニー主演の映画『ラスト・ターゲット』の原作となったことで、今あらためて注目を集めています。

 主人公は、イギリス人のミスター・バタフライ。イタリアの田舎町に隠棲し、蝶の絵を描いて暮らしています。悠々自適の生活を送るバタフライですが、どうやら陰で何らかの裏稼業を営んでいる模様で、人を避けるように生きています。そんな彼の元に、過去を知る人物がある「依頼」を持ち込んで......という物語。

 ミステリの体裁をとっていますが、内容はほぼ主人公の「語り」で構成されています。それもストーリーとは直接関係ない国家論や文明論、人生論などといったウンチクばかり。しかも、主人公は住んでいる場所や自分の名前すら明示しません。静かな語り口だけが全編を覆っています。そのため、「エッセイのようなミステリ」と呼ばれているのです。

 主人公の「語り」が小説の読みどころとなっているため、これまで映画化にはあまり向かない作品だと思われてきました。そのため、監督のアントン・コービンは「西部劇の要素を取り入れた」と言います。「よそ者が小さい町にやってきて、その町の人と交流するが、過去に追いつめられ、対決を迎える。本作は正確には西部劇ではないが、構造的には西部劇を踏襲している」(コービン)。

 こうした脚色により、映画は原作よりもサスペンスフルな内容となっています。とはいえ、原作の持つ静謐な雰囲気もそのまま残し、アクションよりも人間関係に重きを置いた印象。CGを多用した昨今のハリウッド映画とは毛色の違う、大人向けの映画となっています。

映画『ラスト・ターゲット』
2011年7月2日(土)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー








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