東日本大震災の被災地支援活動により注目を浴びる自衛官たち。入隊に興味を持った人もいるだろうが、幹部クラスを目指すのならば防衛大学卒が圧倒的に有利となる。防衛大学とは、自衛隊のエリート養成機関。だが、その実態はあまり知られていない。

 大学があるのは神奈川県横須賀市。京浜急行・馬堀海岸駅、徒歩25分だ。大学といっても、生徒たちは普通の学生とはかなり異なる生活を送っている。卒業すれば一般大学と同じように学位が授けられるものの、身分は学生ではなく「特別職公務員」であり、あくまでも「勉強するのが仕事」。そのため、通常の公務員と同様にバイトが禁止されている。

 入学試験ならぬ「採用試験」を受けてひとたび入学すれば、朝8時30分から17時15分までギッチリ授業、自由時間は22時30分の消灯までの間だけという厳しい生活を送る。外出できるのも土曜と日曜のみで、外泊は2年生になってようやく認められ、しかも年間11〜21回と制限されている。さらに、在校中には授業だけでなく、自衛官になるための訓練も組み込まれている。

 かなり厳しい生活だが、その分いい面もある。例えば学費。防大の学生は入学費も在学中の学費もタダ。しかも、あくまで公務員なので約11万円の月給(学生手当)と30万円以上のボーナス(期末手当)までもらえる。住まいも学生全員が入学と同時に入寮するという全寮制のため、お金の心配をすることなく訓練に励むことができる。

 まさに生活の全てが訓練のためにある学校で、学生に遊ぶ時間は残されていない。新聞を読んでいただけで教官から「そんなヒマはないだろう」と諭された、なんて伝説まで残っているほどだ。

 卒業後は曹長となって、陸海空それぞれの幹部候補生学校に入校。自衛隊の幹部を目指していく。とはいえ、もちろん全員が幹部になれるわけではない。「知力、体力はもちろん性格面が(幹部に選ばれる)大きな要素を占める」と元教官。学生同士でもめ事があったときに仲裁役を任されたり、催し物で率先して幹事を引き受けるような学生は、「仲間から信頼されており、かつ調整能力が高い」と見なされるのだという。ちなみに、教官の目から見れば、「あいつはどのくらいまで昇進する」というのは、ほぼ9割方的中するそうだ。

 卒業式では首相が訓示を述べ、最後に帽子を一斉に放り投げるのが伝統。テレビのニュースでこのシーンを見た人もいるだろう。彼らは厳しいカリキュラムを乗り越えたエリートたちなのである。