【ヒゲの隊長・佐藤正久議員が語る】「自衛隊はスーパーマンじゃない」被災地で活躍する自衛隊員の知られざる苦労

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 「自衛隊ってすごい!」――。今回の大震災であらためて自衛隊の活動に舌を巻いた人は多いことだろう。被災地で活躍するその勇敢な姿は、被災者のみならず、日本中の希望として各メディアにこぞって報道された。しかし、震災現場で自衛隊が具体的にどのような活動を行う集団なのかということはこれまであまり知られてこなかった。はたして、震災現場や社会における自衛隊の役割とはどのようなものなのだろうか。過日、『ありがとう自衛隊 〜ヒゲの隊長が綴る日本再興奮闘記〜』(ワニブックスPLUS新書)を出版したばかりの元・自衛官、イラク派遣隊長を務めた際は「ヒゲの隊長」のあだ名で親しまれた参議院議員・佐藤正久氏に、知られざる自衛隊の現場について話を聞いた。

――今回の震災における自衛隊の活動で、佐藤議員が一番印象に残っているものはどのようなものですか?

「行方不明者の捜索ですね。この任務は、生存率が大きく下がる最初の72時間が勝負と言われます。震災発生当初はガソリンも供給できず、水や食料も届かないという状況の中で自衛隊が活躍をしました。自衛隊は自己完結性を持った組織のため、食事も風呂もガソリンもすべて自ら賄うことができ、備蓄もある。ただ、今回の震災では被災地域が広範囲に渡り、当初は自衛隊でも物資が足りませんでした。ご遺体を発見してもそれを運ぶ担架すら不足しており、ご遺体を背中に背負って運んだり、ゴム長などもないので、カッパを上から着ただけの状態で海水の中に入っていったりしていました。瓦礫で傷んでしまったご遺体の中には手足がなかったり顔がつぶれていたり、とくに津波では服が脱げてしまうため、裸のご遺体もたくさんありました。そのため、泥だらけになったご遺体を洗ったりすることもあったんです。とても厳しい状況でしたが、そういったご遺体の回収作業ができるのは自衛隊しかいないわけですから、やるしかないんです」

――自衛隊の災害派遣部隊の活動というのは、まず行方不明者の捜索から始まるんですか?

「はい。最初は人命救助、捜索ですね。その際、ご遺体も見つかるわけですから、一番優先順位が高い。同時に後方部隊は食事や水の支援を行います。今回は東北地方に住んでいる500人以上の隊員に出動命令が出ましたが、自分の家族と連絡も取れないまま現地へ向かい、行方不明者の捜索、あるいは孤立者の救出といった任務にあたった隊員も数多くいました。実際に家族が亡くなったり、家が流された隊員もいます。でも、自衛隊員は自分の身内よりも一人でも多くの被災者を救い出し、少しでも早くご遺体を家族の元に戻す、という使命感を持っているんです」

――自衛隊では行方不明者の捜索や瓦礫撤去など、災害派遣のための特殊な訓練もされているのでしょうか?

「あくまで国防のための訓練であり、災害用の特別な訓練をしているわけではありません。訓練には精神面、肉体面、スキル面の3つがあります。まず、精神面は日ごろから鍛えておかないと、いざ任務にあたる時に心が折れてしまいますよね。今回、若い隊員の中にはご遺体を見たことがなかった者も多く、本当につらい状況だったと思います。さらに雪や雨が降る中、かん水しているところに入り捜索活動を行い、戦闘服は2着しかないので次の日もまた濡れた服を着ていかなければならない。食事も被災者の前で食べるわけにはいかないので、場合によってはご遺体を運んだ車の中で食べなければなりません。精神的な強さというのは、現状よりももっとつらい訓練の中で培っておかなけえれば絶対に耐えられるものではありません。

 肉体的な強さについてもそうです。例えば30〜50キロの重い荷物を背負いながら、100キロの道のりを歩くという訓練があります。実際の戦場では体力温存のため、そのような長距離を歩くことはありません。しかし、日ごろから訓練を行っていれば、いざという時に無理が利くようになるんです。