『「戦争」というテーマに正面から取り組もうと思った』―高野和明さんインタビュー(2)

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 第31回は、最新刊『ジェノサイド』(角川書店/刊)が注目を集めている高野和明さんです。
 第2回の今回は、執筆時のエピソードや苦心した点についてお話を伺いました。

■コンゴの状況を知って「戦争」というテーマに正面から取り組もうと思った。
―物語の主な舞台の一つとしてコンゴを選んだ理由をお聞きしてもよろしいですか。やはり本作で描かれている“新種の生物”が現実に生まれる可能性が高いから、ということでしょうか。

高野「そうですね、考証を踏まえた上で、実際に起こりそうな場所を考えました。最初にコンゴ民主共和国という舞台を設定したのですが、この国についての知識が全然なかったんです。コンゴ共和国と混同していたくらいで。そこで、どんな国だろうと思って調べたら、大きな戦争が行われていました。“戦争”というテーマは他の作品で扱おうと思っていたのですが、コンゴの状況を知って、この作品で“戦争”という問題に正面から取り組もうと思いました」

―本作は、今おっしゃった“戦争”であったり、“人間の倫理的な限界”“先進国から見た途上国”など、単なるフィクションでは片づけられないほど数多くのテーマを含んでいます。これらの中から高野さんが最も描きたかったテーマを一つ選ぶとしたら何になりますか?

高野「それは特にないです。逆に、色々な読まれ方をする本だろうと思いますので、読んでくださった方々がそれぞれ何かを考えたり、感じ取っていただけたら嬉しいです」

―何かを伝えたいというよりは、どう読まれてもいいからとにかく楽しませたいというスタンスで書かれたのでしょうか。

高野「そうですね。これは娯楽小説ですので、楽しんでいただければと思います」

―本作で可能性を示唆されている「新種の生物」について高野さんご自身はどう思われますか?

高野「ネタばれになってしまうので詳しくは言えませんが、こうした生物が突然に現われる可能性は低いものの、完全には否定できないような気がします。素人考えかもしれませんけど、分子生物学の分野は、まだまだ山のように謎が残っていますから」

―執筆する際に一番苦心した点はどのような点でしょうか。

高野「全部です…(笑)。資料調べや取材も大変でしたけど、一番はやはりストーリーですね。複数の主人公がそれぞれ別の動きをして、お互いに影響を与え合うというストーリーだと、展開が複雑すぎて読み切るのが大変なんです。特に後半では3つの場所で3人の主人公が別々の動きをしますから、少しでも読み抜けがあると、物語の整合性に問題が出てきてしまう。場面によっては、地球上の三カ所で同時に起こっていることを並行して描くということもしていますし。普通のミステリーですと、細かい謎を追うことでストーリーを繋いでいくんですけど、この作品でそれをやると煩雑になるだけので、物語全体をなるべく太い線で描き出すようにしました。ストーリーそのものを掴んで、ダイナミックに動かすという感じです。とにかく簡単に、単純に、ダイナミックにストーリーを語っていく」

第3回 「スピルバーグ『未知との遭遇』を70ミリで観て、ショックのあまり発熱した」 につづく


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