【愛と混沌の世界】熱海秘宝館に訪問レポ

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6月にしては珍しい快晴の日。
「こんなに天気が良いのなら他に行くところあっただろうなぁ……」しみじみ感じながら、私はロープウェイの乗車券を握り締めていた。向かうは熱海・秘宝館。どこで私は道を踏み外してしまったのだろうか。ぼんやり考える2011年初夏。

秘宝館という場所をはじめて聞いた方のために分かりやすく説明するならば、エロいものばかりを集めた、大人のためのスケベなテーマパークである。陳腐な説明になってしまったが、端的に表現するとこうなんだからしょうがない。1969年4月にオープンした徳島県の男女神社秘宝館が日本で最初とされ、1970〜1980年代には観光地などで建設が相次ぎ最盛期を迎えるが、“エロ=悪”とする風潮が高まったことや景気の悪化の影響で1970年代後半からは衰退していく一方だ。
現存している秘宝館としてマニアの間で有名なのが、今回訪れようとしている熱海秘宝館である。熱海駅前にひっそり置かれた熱海秘宝館のパンフレットの表紙には「愛と神秘のご案内。夢の扉を開くのはあなた」の文字。
ロープウェイ往復乗車券と秘宝館入場券がセットになっているチケットは1700円と安月給の私には決して安くはないが、そんなのおかまいなし。上昇していくロープウェイとともに私の股間……ではなく、胸も期待で膨らむばかり。
予想外だったのがロープウェイに乗車している人の数。秘宝館の前に幾つか熱海の観光名所を巡ったが、このロープウェイ内が一番活気があるように感じた。カップル・会社員同士・嫁と姑(?)などさまざまな組み合わせがひしめきあい、自分たちを待ち受ける光景を想像してかニヤニヤしたり、はしゃいでいたりするなど異様な高揚感に満ち溢れていた。

ロープウェイを降りた私たちを出迎えたのは熱海を一望する絶景。心地よい爽やかな風が体を突きぬけ、快晴のおかげで海の青色が鮮やかに感じる。
ふと展望台の横に目をやると絵馬をぎっしり結びつけられたモニュメントが。説明書きを読むと「あいじょう岬」と呼ばれる縁結びスポットとのこと。DS用恋愛体験ゲーム『ラブプラス+』内にデートの場所として熱海が登場したため、熱海を実際に訪問するラブプラスユーザーがいるとニュースで見たのを思い出した。それを物語るかのように“彼女”との永遠の愛を誓う絵馬が数多く見受けられた。
太陽の反射を受けキラキラ光る海を背に私は秘宝館に足を運ぶ。館内は写真撮影禁止とネット上で聞いていたため、せめて入り口だけでも記念にと思いカメラを向けると、受付で私を鋭く見つめるオジサンが。足早に近づいてきたので注意されるのかと思いきや、「撮ってあげますよ」とのこと。
パンフレットの表紙を飾っている半裸のマーメイド像の前で撮影。他の入場者が見ていた照れからか、無駄にクールな笑みを浮かべている間抜けな自分がそこには写っていた。頼んでもいないのに別角度からも写真を撮ってもらった後にオジサンが指したのは入り口横の亀のオブジェ。
亀のオブジェとぼやかして表現したが、実際は頭部が男根になっている亀のオブジェだ。秘宝館にきて今更何を恥じる必要があるのだ、と思いつつも女子校出身の私は内心激しく動揺。
「亀の頭を優しくなでてごらん」というセクハラとしか思えないオジサンの発言に素直に従い、震える手で亀の頭をポンと触ってみると、亀が喋るので本当にビックリ!「ハイテク利用の秘宝館」というキャッチコピーが恥ずかしげもなく堂々とパンフレットに記載されているように、ココは無駄にギミック満載なのだ。


亀頭オブジェと満足気な笑みを浮かべている受付のオジサンにさよならを言い、薄暗い館内に足を踏み入れてからの記憶は曖昧だ。
というのも『千と千尋の神隠し』で千尋がトンネルをくぐったら別世界が待ち受けていたように、秘宝館内は驚きの光景が待ち受け、とても言葉では言い表せなかったからだ。

ただはっきりしていることは頭で考えてはダメだということ。
体で感じ取らなければならない。
この狂気を。

正気の沙汰とは思えないおみくじがあったり、

童心に戻れないことを悟らせてくれる乗り物があったり、
デカい尻に襲われ本気で怖くなったり、

悪夢としか表現しようがない通路があったり、……とにかく口があんぐり開きっぱなしである。

2時間半電車を乗り継ぎ、辿り着いた熱海秘宝館。長年の思いが募って訪れたはずなのに館内を歩く私の足取りは速くなる一方。めまいを感じ、壁に寄りかかってみるが、その壁紙もよく見ると全裸の女性の模様。気づいたら私は館内を走っていた。
思いは一つ。
早くこの場から出たい。
ノーパンのマリリンモンロー像、バイブやローションなどの大人のおもちゃが景品のアーケードスペース、飛び出す3Dのお尻オブジェなどの展示品を足早に通り過ぎ、出口をくぐる。館内に入る前は快晴だったのにいつの間にかどんよりとした雲が一面に広がり、パラパラと小雨が降り始めていた。

出口近くの喫煙所では行きのロープウェイで一緒だった会社員が遠い目をして海を見つめていた。目の前の広大の海は到着時とは別人のように重苦しく、冷たい。

竜宮城から持ち出したら結果、ヨボヨボのおじいさんになってしまった浦島太郎の玉手箱の例から分かるように、秘められているからこそ価値がある宝もある。熱海秘宝館に秘蔵されている宝はまさにその類だ。現代社会の理屈が全く通用しない空間、熱海秘宝館。退屈な日々に飽きているアナタ! ぜひ熱海秘宝館を訪問して下さい。人生の無常、穏やかな日々のありがたみを痛感してさせてくれます。

熱海秘宝館オフィシャルサイト
http://www.atami-hihoukan.jp/

※この記事はウェブライターの「田中サック」さんが執筆しました。
田中サック:モテない。お金ない。仕事できない。そんな会社員。サイトで自虐漫画描いています。もちろんオタクです。

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