もうずいぶん前から、胸元に引っ掛かっていたことがある。ロンドン五輪アジア2次予選の第1戦が、どうして日本で行なわれるのか、ということだ。

2次予選はホーム&アウェイだ。勝負は2試合の合計スコアで決着がつく。普通に考えれば、2試合目をホームで戦ったほうが有利である。組み合わせを見ると、2次予選から出場するシード国は、基本的に第1戦をホームで戦うことになっている。韓国も、北朝鮮も、中国も、第1戦をホームで戦ってから慌ただしく中東へ向かうスケジュールとなっている。

AFCがなぜこのような組み合わせにしたのかが、僕には理解できない。1次予選から勝ち上がってきた国に、できるだけチャンスを与えようとしたのか? スリリングな2次予選を演出しようとしたのか? そんな配慮が必要だとは思えないのだが。

もうひとつ腑に落ちないのが、この組み合わせを日本側が受け入れたことである。そもそもシード国は有利であっていいはずで、日本は過去4大会連続で五輪に出場している。実績もある。世代を超えた成果をあげれば、ワールドカップにも4大会連続で出場している。

ホーム&アウェイの順番に異論を唱えても良かった、と僕自身は思う。他国に退けられても、声はあげるべきだった。「AFCが決めたから」というだけで無条件に従うのではなく、「なぜそうなったのか」を問いただす意味はあった。

オーストラリアとイエメンの2次予選は、2試合ともオーストラリアのホームで行なわれることになった。イエメンの国内情勢が不安定なためである。過去の事例を踏まえれば、イエメンのホームゲームを中東の隣国へ移す妥協案もあっただろう。歓迎すべからざる変更を回避したのは、オーストラリアが政治力を発揮した結果と考えるのが妥当だ。

第1戦の結果が3次予選進出への希望を膨らますものになれば、クウェートが何かを仕掛けてくる可能性がある。日本でのゲームはすでに終わっているから、報復を受けることはない。ピッチの内外で "アウェイの洗礼" を用意することにためらいはないだろう。

アウェイの厳しい環境のなかで結果を残してこそ、選手は心身ともにタフになっていく。過保護になってはいけない──正論である。だからといって、環境整備を疎かにするのは間違っている。

2次予選がホーム&アウェイの一発勝負で行なわれ、なおかつロンドン世代がU-20ワールドカップ出場を逃していることを考えれば、予選突破のためにできることはすべてやっておく、という姿勢が欲しかった。2次予選を突破できないことになれば、日本サッカー界が受けるダメージはロンドン五輪に出場できないことにとどまらない。次回の予選では、さらに厳しい組み合わせになる。負の連鎖が待っているかもしれないのだ。

ところで、発表された22名のメンバーには、宇佐美貴史の名前がなかった。フル代表の監督も期待する選手が、なぜU-22代表から漏れてしまうのか。彼の選考落ちには憶測も含めて様々な理由があげられているが、どれも核心からは逸れているような気がする。

詳細は今週金曜日 (6/17) 配信のメールマガジンで取り上げたい。

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