日本ではあまり馴染みのない「プロゲーマー」という職業ですが、海外では数千万円に相当する年収を得るゲーマーも存在すると言われています。そんな中、強豪格闘ゲーマーの「sako」氏が、2011年4月からプロ格闘ゲーマーとしての活動を開始しました。

sako氏は、2010年に開催されたスーパーストリートファイターIVの大会「GODSGARDEN online ♯2」で、世界的に知られているウメハラ氏を破って準優勝し、その名を高め、極めて攻撃的な戦術から「最強の矛」との異名を取るまでになった、今後の活躍が期待される格闘ゲーマーです。

そんなsako氏に、海外や日本のプロ格闘ゲーマーがいったいどうやって収入を得ているのかなど、格闘ゲームのプロ市場について、あまり知られていなかったその実態を語ってもらったインタビューは以下から。4月から新たにプロ格闘ゲーマーとしての活動を始めたsako氏。顔出しはNGながら、Twitterなどでも「sako嫁」として知られるsakoさんの奥さんにも同席してもらいました。


GIGAZINE(以下、G):
sakoさんは4月にTeam HORI所属のプロゲーマーとなったということですが、格闘ゲームのプロというのは、どんな仕組みでお金を稼いでいるのですか?

sako氏(以下、sako):
スポンサーと契約して、チームとして各地の大会に遠征に出て報酬をもらう人もいれば、海外の大会には賞金が出るものも多いので、賞金を狙って自腹で渡航して大会に出る人もいますね。


G:
sakoさんは日本で3人目のプロ格闘ゲーマーということですが、ほかの2人について教えていただけますか?

sako:
ひとりはウメハラさん、もうひとりはときどさんですね。ウメハラさんはマッドキャッツっていうアメリカのチームに所属してます。コントローラーを作っているメーカーさんがスポンサーですね。

G:
やはり、テニスなどのスポーツ選手のように企業がスポンサーについて、収入を保証してくれるのが一番だと思うのですが、ソフトメーカーさんはスポンサードはしないんでしょうか。

sako:
そうですね、いろいろ理由はあると思うんですが、日本ではまだゲームは子供がやる遊びだと思われている部分があって、趣味として認められていないということも大きいと思います。僕らの父親の世代になると、まだゲームのない時代に育っていますから、そうした人たちにとっては子供の遊びと見えてしまうのかも知れません。理想を言ってしまえば、ソフトメーカーさんがスポンサードしてくれるのが一番なんですが、まだ日本では格闘ゲームのプロは3人しかいないし、知名度も低いですからね。


G:
逆に韓国などは急激にゲーム市場が成長していて、プロゲーマーの社会的な認知度も高いと聞きますが、やはり日本はまだまだゲームの社会的な地位が低いということなんでしょうか。

sako:
多分、そういうところがあるんじゃないかと思います。

G:
プロゲーマーのお金の稼ぎ方というところに戻ると、例えばアメリカだと、ウメハラさんと戦うために何ドルか払って対戦するというイベントもあると聞くのですが、そういったイベントも海外では一般的に開かれているんでしょうか。

sako:
そうですね、海外では、授業料のような感じで払ったり、記念参加みたいな感覚でお金を払ってプロゲーマーと戦ったりしますね。

G:
場合によっては、そこでプロゲーマーに勝つと何ドルかもらえたりするということもあったりするんですか?

sako:
何ドルマッチとか言って、お金を賭けると言ったら変になりますが、そういった形式もあるにはありますね。

G:
sakoさんもお金を払ってもらって対戦するイベントを開いたことがありますか?

sako:
ええ、やったことあります。


G:
1回何ドルとか、相場はあったりするんでしょうか?

sako:
相場というのはないんですが、あまり安くはやらないですね。あんまり安くやっちゃうと……

G:
なるほど、ゲーマーの価値が落ちちゃうんですね。

sako:
はい。

G:
プロゲーマーというと、MMOとかFPSのイメージが強いと思うんですが、格闘ゲームのプロというのは増えているんでしょうか?

sako:
そうですね、格闘ゲームのプロは増えてきていますね。

G:
格闘ゲームというと日本が本場というイメージもあるんですが、そうでもないんでしょうか?

sako:
今まではアーケードが中心だったので、アーケードに関しては日本は昔からやっているということもあって強かったんですが、今はスーパーストリートファイターIVも家庭用が出て、いろんなゲーマーのプレイ動画が見れるようになっているから、研究もできるわけです。だから、海外でもうまい人は増えてきています。


G:
ほかの日本のプロゲーマーについてもう少し教えてください。ときどさんはどこかのチームに入っているんですか?

sako:
ときどさんも、アメリカのトラベリングサーカスっていう、洋服を作っている会社があるんですが、そのチームに入ってます。

sako嫁:
彼の場合はちょっと変わってて、海外でも有名なプレイヤー、たとえばジャスティン・ウォンさんも、sakoと同じように周辺機器メーカーとかからのスポンサードを受けているんですが、ときどさんはアパレルメーカーがスポンサーなので、大会でTシャツをアピールしたりするんです。もともとトラベリングサーカスの社長さんが格闘ゲームが大好きで、スポンサードしてるそうなんですが、ゲームと関係ない会社さんのスポンサードってすごく特殊だと思います。

G:
なるほど、でも逆に言えば、これから格闘ゲームのプロというものの知名度が上がっていけば、ゲームと関係無い会社さんからのオファーというのも増えてくるかも知れませんね。

sako:
そうですね。

G:
プロでやっていこうと決めたきっかけはどんなものだったのでしょうか。

sako:
初めてロサンゼルスに招待されて、「もしかしたらプロのオファーがあるかも」っていう話を聞いて、「ちょっと面白そうかな」って。日本人と海外の人が一緒にチームを組むって、あんまり無かったんですよ。それが面白いんじゃないかと。


G:
チームのほかのメンバーはみんな海外の人なんですか?

sako:
海外ですね。

G:
プロゲーマーになることに対して、葛藤や悩みはありましたか?

sako:
ちゃんと生活していけるのかなっていうのがやっぱり気になりましたね。そこさえクリアできれば、もとから格闘ゲームは大好きだし。

G:
やりたいけど、お金がどうかっていうことですね。

sako:
プロになっても食べていけなかったら意味がないし。結局、今は日本でも仕事を掛け持ちしてます。


G:
プロゲーマーと日本のお仕事を掛け持ちしてるんですね。

sako:
そうですね。

sako嫁:
sakoの場合は、今の仕事も続けつつプロをやりたいっていう話で調整して契約したんですが、海外のスポンサーとしては、そこまで高給というわけじゃないんですが、普通に生活していける分くらいは保証してくれるつもりはあったんじゃないかなと思います。ウメハラさんやときどさんは格闘ゲーム一本でやってますし、ときどさんは雑誌でも「公務員やるより稼げるから」とか言ってますしね。だから、もしプロゲーマー一本で食べて行こうと思ったら、日本人でも可能になってると思います。

sako:
一方で、海外のプロゲーマーでも、大半は別の仕事をしながらやっているみたいです。大会のあるときだけ遠征してとか。アメリカだと、国内の大会でも西海岸と東海岸とか、すごく離れることもあったりするので、大会の時は現地に住んでるゲーマーの家にみんなで集まったりしますね。そういうのも楽しいところですね。


G:
日本でもGODSGARDENなど、オンラインでの大会が開催されるようになりましたが、インターネットはプロゲーマーにどう影響しているのでしょうか。

sako:
仕事をしているんで、仕事が終わってからゲームセンターに行く時間ってなかなか無いんですよね。それが家庭用で好きな時間に対戦できるようになって、しかも相手がオンラインなら好きな相手と対戦できる。これは革新的だと思います。格闘ゲームは一時元気がなくなってましたけど、オンラインで大会が開催されるようになって、今やっと新しい芽を出し始めたのかなって感じです。


G:
sakoさんと言えばキャミィですが、キャミィを持ちキャラに選んだ理由はどんなものですか?

sako:
キャラ的にもともとキャミィが好きだったっていうのがありますね。あと、キャノンストライクっていうジャンプ中に出す必殺技があって、これは本来ジャンプ中にコマンド入力する技なんですが、ジャンプをキャンセルして地上スレスレで出すテクニックがあって、これによってすごく戦略の幅が広がるんです。そこがキャミィの面白いところですね。

G:
でも、地上スレスレで出す技はAEでは使えなくなるんですよね。AEでもキャミィを使い続けるつもりですか?

sako:
AEはまだあまりやってないので、実際に試してみて、行けるかどうか考えます。

G:
キャミィを使っていて、苦手なキャラはありますか?

sako:
エドモンド本田とか、ガイルみたいな溜めキャラは厳しいですね。そもそもストリートファイターのような格闘ゲームで、後ろを押しっぱなしで技が出せるっていうのはものすごく強いんですよ。さらにキャミィは、さっき話に出たキャノンストライクで相手の攻撃を潰して攻めに転じるタイプのキャラなので、後ろに下がられちゃうとなかなか攻めきれないところがあります。GODSGARDENだと、たまたまこういうキャラを使う人が少なかったのは幸運でした。


G:
GODSGARDENも家庭用のオンライン機能を使った大会ですが、オンラインだとどうしても発生してしまうラグについては、プロとしては許容範囲なんでしょうか?

sako:
そもそも現在のアーケード環境でもラグは発生するので、そこまで気にならないですね。技は同じように出せるので。ラグと言っても、単に入力のタイミングが画面と数フレームずれるだけなので、目を閉じていてもコンボを出せるようになっていれば、あとは遅れて入力するだけなので。

G:
大会の際にはラグチェックとして1ゲーム使ったりしますが、その間でどのくらいラグが発生しているか確認できるものなんでしょうか?

sako:
できますね。何度もオンラインでやってると、あ、これは何フレーム遅れてるなとか、分かるようになります。

G:
プロとしては、オンライン対戦のラグがあっても十分競技として成立するということでしょうか。

sako:
そういうことですね。


G:
スーパーストリートファイターIVにおいて、コンボの正確さや差し合いなど、勝敗を分けるさまざまな要素がありますが、最も重要なポイントはどんなところですか?

sako:
負けたらくやしいと思う気持ちですね。相手に負けると、くやしいと思って練習して、また強くなります。長い目で見れば、その繰り返しができるかどうかだと思います。

G:
sakoさんでも、やっぱり負けるとくやしいものですか?

sako:
くやしいですよ、クッソーと思います(笑)

G:
スーパーストリートファイターIVについて、他の格闘ゲームと比べて面白いと思える特徴はどんなところですか?

sako:
今までの格闘ゲームと比べて、技がかなり派手になっているし、見ているだけでもかなり楽しめるものになってると思います。単純にK-1とかPRIDEを見るような感じで、あっちが勝った、こっちが負けたっていうように一回大会を見てもらえれば、楽しさが伝わるんじゃないかと思います。

あとは、すごくたくさんの人がプレイしてるってところでしょうか。オンラインにつなぐと、どんな時間でも人がいて、すぐに対戦できます。そういう環境が整っているのが、やっぱり面白いところですね。


G:
スイスの大会ではローズを使って団体戦で優勝されましたが、キャミィから本格的にメインキャラを移行するのでしょうか?

sako:
スイスの大会では途中でキャラ変更ができるルールだったので、相性的に相手がキャミィだと厳しいというのもあって、ローズを使いました。まだあんまり開拓されていないキャラだったので、かなり有効だったのかなと思います。キャミィはまずAEで使ってみてからですね。

ローズに限らず、スーパーストリートファイターIVには、まだまだ開拓すれば上位に食い込めるキャラはいるんじゃないかと思います。日本だと今、GODSGARDEN online ♯2でも優勝したマゴさんのフェイロンがすごく強いんですが、マゴさんが使い始めるまでそこまで強いフェイロンはいなかったんですね。キャラ性能から考えると、烈火拳とか間違いなく強いはずなのに、みんな使ってなかったんです(笑)

G:
例えば、大会でsakoさんのキャミィを見て「自分もあれをやってみたい」と思ったとして、今から格闘ゲームを始めても強くなれますか?

sako:
なれると思います。世界中の強い人の動画がYoutubeとかニコニコ動画に上がっているので、それを見て、良いところを全部盗めば、相当強くなれますよ。格闘ゲームって、昔からずっと同じシリーズが続いてきて、なかなか新規参入が難しかった面がありますけど、今はすごくハードルが下がっているはずです。オンライン対戦なら、ある程度自分と同じくらいの強さの人とマッチングされるし、練習して、対人戦で勝てるようになるとすごく面白くなってくると思います。


G:
格闘ゲームを練習するには、やっぱりアーケードに行った方がいいんでしょうか?

sako:
アーケードでの対戦ってやっぱり独特の面白さがあるんですけど、1回に100円かかりますよね。そういう意味ではアーケードは「戦いに行くところ」なので、家庭用で練習して、アーケードで勝てるようになるとより面白くなると思います。アーケードでは大会をやってたりしますしね。

G:
sakoさんは一日何時間くらい練習するんでしょうか?

sako:
3時間〜4時間くらい毎日やります。コンボの練習は、オフラインで一回完成させてから、オンライン対戦で出せるように2段階で練習しますね。対戦だと、思った以上にコンボって出せないものなので、まずオフラインで、なにも考えずにコンボが出せるようになるまで練習して、完成させてから対戦に投入します。


G:
練習環境は自宅ですか?

sako:
自宅です。

G:
sakoさんは「最強の矛」と言われるほど攻撃的なスタイルを確立していますが、ほかの人とsakoさんの違うところはどんなところなんでしょうか?

sako:
例えば、コンボも、ちょっとだけ強いけどすごく難しいコンボと、ちょっとだけ弱いけど簡単なコンボなら、強いけど難しいほうを完璧に出せるように練習して、そっちを使いますね。やっぱり少ないチャンスで一気に大きなダメージを与えるためには、そういう部分を突き詰めていかないとダメなんです。


G:
プロの皆さんは、アーケードスティックはマイスティックを持っているものなんですか?

sako:
海外の大会だと、みんな自前でスティックを持ち寄って対戦するんですね。だから、みんな持ってますよ。

G:
アーケードスティックの中には、数万円するようなものもありますが、やはり性能が違うんでしょうか?

sako:
性能もあると思いますが、僕はすぐアーケードスティックを壊しちゃうんですよ。安いヤツはすぐ壊れちゃいます。高いヤツはやっぱり耐久性が違いますね。HORIさんのスポンサードを受けてるから言うわけじゃないんですが、HORIさんのスティックはやっぱり頑丈ですね。

G:
コントローラーを操作する腕を怪我すると致命傷なんじゃないかと思いますが、なにか怪我をしないように普段から気をつけていることはありますか?

sako:
そんなに気をつけてないです。爪が割れちゃったこともありますよ。

G:
そういう時も練習はするんですか?

sako:
その時も対戦しました。痛いけど(笑)


G:
体調管理などはどうされてるんですか?

sako:
早寝早起きくらいですね。眠い時はダメです。あとお腹減ってる時。

海外の大会ってけっこう時間がルーズで、対戦相手がどっかに行っちゃって見つからないこととかよくあるんですよ。そういう時は見つかるまで探すんですが、それで対戦の時間がどんどんずれちゃったりして、10時間くらい待たされることもあります。けっこうハードですね。

G:
格闘ゲームというと、反射神経や運動神経など、努力だけではどうにもならない才能が必要なイメージがありますが、そういったものは必要でしょうか?

sako:
才能は必要無いですね。知識と根気です。自分のキャラクターだけじゃなくて、相手のキャラクターの知識も持っている必要があって、この間合いだったらどの技が当たるとか、このキャラにはこの状態でこのコンボが決まるとか、そういった膨大な知識を詰め込んでおかないと、どんなキャラと当たるか分からない大会だと勝てないんです。あとはもう、どれだけ練習するかっていう根気ですね。
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これまでのsakoさんの試合の中から、本人イチオシの試合を選んでもらいました。

ウメハラ戦(GODSGARDEN online #2 予選)
YouTube - SUPER STREET FIGHTER 4 GODSGARDEN ONLINE #2 予選 11-01


sako:
ウメハラさんと予選で当たって負けちゃった試合です。ウメハラさんとは本戦でも戦うんですが、ぜひ本戦の試合と併せて見てください。

ウメハラ戦(GODSGARDEN online #2 本戦)※かなり長いムービーですが、格闘ゲームに詳しくない人にも分かるくらいハイレベルで神がかった展開です
Ustream.tv: ユーザー godsgarden: OnGODS2 Day2 #2, GODS. テレビゲーム


sako:
最初連敗します。ただ、あと一歩、もう少しでなんとかなるっていう感じの試合だったので、あきらめることは考えなかったですね。僕は相手の攻めに対応していくいわゆる「対応型」なので、GODSGARDENの10勝先取っていうルールはありがたいですね。

全米一のガイル戦(スイス大会)
【Beat by contest】 スーパーストリートファイター? 【sako】 ‐ ニコニコ動画(原宿)


sako:
ガイル戦、最初はボコボコにされちゃったんですが、同じ大会で2回戦うことができて、負けられないって気持ちが強かったですね。

【Beat by contest】 スーパーストリートファイター? 【sako2】 ‐ ニコニコ動画(原宿)※上の全米一ガイルとの同じ大会での再戦です


sako:
この大会では、団体戦でアリューンという海外の選手とチームを組んで、優勝したんです。日本人と外国の人がチームを組んで優勝するって、珍しいんじゃないでしょうか。こうやってほかの国の人とチームを組んで大会に出るのも面白いですね。

6月11日から14日に開催され、sako氏やウメハラ氏も参加した大会「ReveLations」の様子は以下のサイトから確認することができます。

Nagoya Street Battle


なお、sako氏は7月29日から31日に開催される世界最大の格闘ゲーム大会「EVO 2011」にも参戦予定です。
Evo Championship Series | Evo Fighting Game Tournaments

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