書店営業に聞く、「本屋の意外な楽しみ方」

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本屋さんって、どこも同じようなものだと思っていませんか? 本なんてネットで買えば十分…と思って、めっきり足が遠のいている人もいるのでは。ネットショッピング全盛のこの時代に、書店に行く楽しみって何かあるの? 誰か教えて!

今回のちょいたつは、休みがあれば本屋、旅行に行ったら本屋、ちなみに仕事は都内の出版社「花伝社」で書店営業をしているという油井亮太郎さん(25歳)。「今年のゴールデンウィークは、関西の本屋めぐりの旅をしました」と笑う油井さんに、本屋の意外な魅力と楽しみ方について、聞いてみました。

■本屋は町の顔である
−本屋さんって、どこも同じじゃないんですか?

「むしろ逆です! 本屋はその立地によって、品揃えが全く違うんですよ。たとえば、同じ大手書店チェーン店でも、郊外ならコミックが非常に多かったり、都心ならビジネス書が豊富だったり。本屋は、土地の性質が非常に反映されやすい場所なんです」

■ビルと本屋の深い関係

−なるほど。ビルやデパートのなかにある本屋さんはどうですか?

「ビルなどの施設の中にある本屋は、その施設が打ち出しているカラーの影響を受けます。例えば秋葉原駅の近くには、ビル内に入っている3つの本屋さんがあるのですが、

・「ヨドバシAkiba」内にある「有隣堂 ヨドバシAKIBA店」は、コンピューター本
・「アトレ秋葉原」内にある「三省堂書店 アトレ秋葉原1店」は、オシャレな本や実用書
・ビル全体が書店になっている「書泉ブックタワー」内は、アイドル・鉄道に関する本

などが、それぞれ豊富な印象ですね。ほかにも、イトーヨーカドーなどのスーパー内にある本屋では、主婦向けの料理本をたくさん見かけますね」

■本棚の個性を堪能

−では、油井さんが本屋さんを楽しむ際のポイントだと思うことを教えてください。

「ぜひ、本棚をじっくりと観察してほしいですね。書店では主に、新刊を中心に置く『平積み』と、すでに刊行されている本を置く『棚』の2箇所に分けて置きます。平積みの場合、新刊はだいたい売れるのでどの店でも同じような品揃えになりがち。一方、既刊は本屋さんの売り方に左右されやすいため、書店のスタッフは常に試行錯誤をしています。つまり棚は本屋さんの個性が顕著に現れる場でもあるわけです」

■東野圭吾に注目?

−ううん……本棚がいろいろ工夫されているのは分かりましたが、素人目から見るとあんまり違いが分からないかも…。油井さんが「おおっ」と思う棚ってどんな棚ですか?

「東野圭吾さんの小説がひとまとめになっている本屋さんを見ると、『スタッフさん、アツイ!』と思いますね。本屋さんは、本の売り上げを集計するとき、出版社別などで、カテゴライズした上でまとめて行います。つまり、本屋さんにとって、出版社別に本が陳列してあったほうが、メンテナンスを行ううえで非常に都合がいいわけです。しかし、東野圭吾さんのように、さまざまな出版社から本を出している作家さんの本を見つけるとき、それが出版社別の棚で陳列されていると、客側としては非常に探しにくいですよね。ですから、作家別といった具合に、出版社以外のテーマを元に作られた本棚には、手間をかけてでも本を売りたいという、スタッフさんの愛がこもっていると僕は思います。もちろん、出版社ごとに作られた本棚は帯が揃っていて見やすいという人も多いので、あくまで好みの話ですが」

−普段何気なく見ている本棚って、実はスタッフさんの努力の結晶だったのですね。

■ひとことアドバイス
「最近の僕の一押しは、京都市左京区にある、本と雑貨のセレクトショップ『恵文社一乗寺店』。個人で作った雑誌なども豊富で、他の書店ではお目にかかれない本に出会えると思います。書店に関わる人の間でもちょっとした有名店なので、ぜひ観光がてら訪れてみては」

「本屋は、その土地を凝縮した場所」と油井さん。本屋さんを通じて、その土地のカラーや住民の顔を見ることができるのだとか。本屋は単に本を買うだけの場所ではないのかもしれません。確かにこれは、ネット注文などでは味わえないこと。本屋さんに行く魅力って、こんなところにあるのかもしれませんね。

(小野田弥恵/プレスラボ)



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