モダンデザインの父として、今なお高い人気を誇るウィリアム・モリス(William Morris,1843-1896)。2011年の今年はそのウィリアム・モリスが、伝説的な企業である「MORRIS & Co.」の前身、「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を1861年(万延元年)に設立してから、ちょうど150年目のメモリアルイヤーに当たる。
今年イギリスでは、新婚当時の家「レッドハウス」や「ケルムスコット・マナー」などモリスゆかりの地で記念イベントが開催され、また「フィナンシャルタイムス」や「CNN」でも特集としてウィリアム・モリスが取り上げるなど、「モリス商会」設立150周年は、インテリアの枠を超え、世界的なトピックとして注目を集めている。

ウィリアム・モリスといえば、「アーツアンドクラフツ運動」の中心人物として、ラディカルな社会思想家としても知られている。18世紀から19世紀にかけてイギリスで興った産業革命は、機械化による大量生産を可能とし、これまで王侯貴族のものだった室内装飾品の一般家庭への普及に大いに寄与したが、その反面、大量生産による製品の質的低下を招いてしまった。また労働者、いわゆる職人はプロレタリアートとなり下がり、資本家たちから搾取され、使い捨てられるといった社会問題も引き起こすようになっていった。こうした中で、モリスは手仕事の美しさを訴える「アーツ&クラフツ運動」へ傾倒、手仕事から生まれる草花や樹木をモチーフとした自然に根ざした美しいデザインを発表し続けた。
このようなモリスの精神は、各国に大きな影響を与え、モダンデザインの源流になっていった。柳宗悦による民芸運動(大正時代)にも大きな影響を及ぼしたといわれている。世界のデザイン界に大きな足跡を残したウィリアム・モリス。現在「MORRIS & Co,」を展開するサンダーソン社では、このほど「モリス商会」設立150年周年を記念したコレクション「The Archive Collection」(アーカイブコレクション)を発表、大きな話題となっている。

プリント・壁紙・織り・刺繍の4冊で構成された「The Archive Collection」には、モリスのアーカイブに保存された資料やモリスが暮らした家々のテキスタイルからインスピレーションを得たデザインが収録されている。
モリスは「ウイロボー」「デイジー」「フルーツ」など、数多くの代表的デザインを残しているが、その中でも、特に不朽の名作といわれているのが「Strawberry Thief」(いちご泥棒)である。このデザインは、せっかく育てたいちごを鳥たちがついばんでしまうという、園芸家たちの日常の暮らしの中にある小さな悩みからインスピレーションを得たもの。ハンターが鳥たちを銃で撃とうとしているところを、モリスがやめさせたという逸話も残っている。この「Strawberry Thief」は、長年モリス愛好家から製品化の要望を受けていたが、リバティー社が供給していたためこれまで実現できなかったという。今回奇しくも150周年に合わせてサンダーソン社での取り扱いの了解がとれ、オリジナルの柄サイズに基づく復刻版が晴れてコレクションに加えられた。
この他にも、ウィリアム・モリスの世界観を表現したデザインが多数収録されており、モリス愛好家にはたまらないコレクションとなっている。