民主党政権になったから相撲の八百長がバレた あと八百長力士は律義

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現在新宿武蔵野館とシアターN渋谷で映画『ヤバい経済学』がロードショー中。同作は全世界で400万部を売り上げた同名の書(経済学者のスティーヴン・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・ダブナーの共著)が原作で、人間界で起こるさまざまな事象について経済学的観点から記したもの。

今回の映画版はオムニバス形式になっているが、その中には「相撲の八百長」に関しての回として、『“大相撲の八百長”はデータで証明できた!?』というものがある。『ヤバい経済学』著者は「7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の勝率が75%」というデータが統計上おかしいことを指摘した。

さて、最近の相撲界では、八百長関与で引退に追い込まれた力士が大量に登場したことが話題となった。そして、「みそぎ」の場所として5月には「五月技量審査場所」が開催された。「技量審査」と言っているだけに、絶対に八百長はあってはならない場所だが、果たしてこの場所で八百長はあったのか? 相撲ジャーナリストで八百長を指摘した記事を執筆したが故に日本相撲協会から裁判を起こされた武田頼政氏に同場所14日目(5月21日)に話を聞いてみた。

――た、武田さん! 「技量審査場所」では八百長ありましたか! 八百長の見分け方を教えてください!

武田:これはまた直接的過ぎる質問ですね。まぁ、今日は「釣り出し」が決まり手の取り組みが何件かありましたが、「釣りだし」ってのは典型的な八百長相撲なんですよね。よく、テレビは「もつれて倒れるのはガチ」なんていいますが、「四つ」になって倒れるのも実は怪しいのでは、と見ています。

――経済的観点からして、八百長って力士にとってトクなんですかねぇ? 普通人間ってトクしないと動かないと思うのですよ。

武田:あまりトクではないと思いますよ。大体ですね、いいことやっていると思ってる八百長力士はひとりもいません。流れできちゃっている人がほとんどなんですよ。

――オォッ! 出た! 「流れで」。力士のメールで「立ち合いは強く当たってあとは流れでお願いします」なんてのもありますよね。

武田:そのメールの件はさておき、八百長ってものは上がやっちゃってるから自分もその流れで……、ということが多いのです。親方から強要されたりもしますしね。かつて八百長を告発した元小結・板井さんの場合、親方からマッチメークされ、結果八百長相撲をやるに至りました。

――なんか弱みでも握られているから八百長を受けるんですか?

武田:弱みってことではなく、「貸したら返す」といのが礼儀というか……。妙な風習があるんですよ。

――じゃあ、八百長をやっている人は律儀なんですか?

武田:そういうことです。八百長をする力士たちは互助会なんですよ。自分だけがいい思いするのはダメ、ということで星をやりとりし、オミット(相殺)されるのです。でも、八百長をやる価値があるくらいの番付上位にいかなくては八百長なんて意味がないので、ある程度強くなくては駄目ですよ。八百長力士はそれなりに強い力士なのです。ただ、番付をキチンと維持するために負けてあげるという側面はあるかと思います。実力は大抵の場合はキチンと反映されるものの、時に土俵がすべったりして、本来は勝つべき実力を持った力士でも負けてしまうことがあるわけですね。


――こうした「運」は排除しようってのが八百長の狙いなのですね。

武田:まぁ、「実力的に負けるべき相手には負けてあげる」ってところでしょうか。元々「本当の力」を図る場所としては巡業や普段の稽古があるわけですね。その場で「あっ、こいつは相当強い。負けるべき相手だ」ということが分かる。巡業先で力関係が決定し、本場所でその関係が現れるといったところでしょうか。国会の本会議と同じですよ。各委員会とか食事会とかではバシバシやりあっているのに、国会では予定調和で質問をし、回答している。

【本場所は「セレモニー」で、本当の力比べは巡業・出稽古で】

――NHKって相撲も国会中継もオンエアしますが、彼らってそういう日本的な予定調和が好きなんですね!

武田:中には巡業や稽古でわざと負け、本場所で実力を発揮し買ってしまうガチンコ力士もいますよ。巡業や稽古では10-0で負けていた下位力士が本場所で勝つってこともあります。「注射」(八百長)するというのは保険をかける、ということ。カネをもらう力士にしても、「強いな」と思える相手だからこそ星を売るのです。どうせ本気でやっても負けるんだから売った方がいいのです。八百長は番付安定装置であり、番付通りのヒエラルキーが保たれる装置なのです。トップからあまねくお金が行き渡るってのが八百長です。例えば、一番80万円で星を売った大関は、下から30万円で買ってあげる――そういう形でお金が流れていくのですね。

だから、本場所ってのは「セレモニー」で、本当の力比べは巡業や出稽古なのです。で、本当の力比べで弱かったらもはやその力士は「落ち目」扱いになる。相撲界の人に言わせれば、「あのさぁ、序列づくりが普段からちゃんとできているんだから、本場所で目くじらたてるべきではないよ!」なんて言う人もいます。でもね、見てる人はそう思っていません。八百長って見ている人への裏切りですよ。とはいってもこれまで全く裏が取れなかったのです。やっとメール流出により、八百長の裏が取れたということです。

――技量審査場所では、新入幕で前頭16枚目の魁聖が初日から9連勝し、結果的に10勝5敗となりました。これって魁聖がガチンコですさまじく強かったってことですか?

武田:こういう非常にイレギュラーな場所にありがちなことですよ。魁聖が破竹の勢いで勝っているだけに、空気を見て負けてあげた人もいることでしょう。でも、場所の終盤では4連敗したりしているわけで、強い力士と当たり出して負けがこむのは自然といえば自然でしょう。

――それにしても、八百長力士って「後は流れで」なんてメール書き、絵文字まで入れて軽い気持ちでやっているように思えるのですが、どんな気持ちでやってたのですか?

武田:バレると思ってないんですよ。メールの内容、軽い調子で書いていますが、こうして、罪の意識が出ないようにしているのです。ただ、逆に軽いから痛々しいよね……。ただ、八百長はやっぱりやってはいけないことなんです。それぞれみんな悩むのです。今回の映画『ヤバい経済学』でも出演した板井さんは、引退した後、すごい後悔したと言っています。自分の心を汚している、お客を裏切っていると思うのです。元々強いから小結という地位まで行けたわけですから、忸怩たるものが勝負師としてあるんじゃないですかね。

【民主党政権になったから八百長問題がバレた】

――なんで今回ようやく八百長問題が明らかになったんですか?

武田:元々権力者に寄り添っているのが相撲界です。それが民主党政権になって様変わりし、八百長問題が露呈したのです。八百長問題の発覚は、野球賭博にまつわる携帯電話の押収から始まったわけですが、自民政権であれば、そもそも警察は八百長の証拠メールを出そうなんて思いませんよ。民主党政権だから何でもある、ということですね。

――『ヤバい経済学』では元横綱・曙と元大関・小錦まで出ていましたが、彼らは「八百長はないと願いたい。俺らはしていないけど……」みたいなことを言っていましたが、これについてどう思いますか?

武田:彼らはそう言うしかないでしょう。ただね、私から言わせれば、曙には「恥さらし!世界最強格闘技なんてそれまでは言っていたのに、プロレスで負けるなんて!」と言いたいですね。

【八百長撲滅に必要なのはバカ高い親方名跡売買と多過ぎる本場所の廃止】

――よくテレビに出ている相撲記者っているじゃないですか。「八百長なんてないはずです!」なんて昔からよく主張していた人。ああいった方々から武田さんは嫌われていますか?

武田:いや、「この野郎!」とか言う人はいませんよ。直に会うと優しい方が多いですよ。ただ、あの村社会で生きてきた相撲ジャーナリストは、私と一緒にテレビとかは出られないですよ。だって、うなずいただけで問題になるからね。私だって彼らに「生活圏を捨ててまで戦え」なんて言いません。

――これから相撲はどうなっていくのでしょうか。

武田:稽古場へ行ってると相撲の面白さって分かってきますよ。元々日本人にとって相撲って巡業だったのですよ。それが本場所がテレビ中継されるようになり、巡業の楽しみが失われ、大相撲が変質してしまった。本当はもっと淫靡なものだったのに、スポーツと認識されるようになって八百長が横行するのは当然の帰結です。分不相応なお金が入って来るものだから、色々な不正の温床となるのも自然な流れです。相撲は菊の御紋を抱き、タニマチ、政治家、警察も手を出せないから腐敗も進んだ。

それに、本場所は90日もやっていますし、全国各地へ巡業へ行くから部屋が違えど力士同士でお友達になります。そういうところから腐敗が始まり、そこに金が発生するという構造があります。これがほかの武道とは違う点ですね。あと、取り組の相手にしたって別に「親の敵じゃないんだから……」って思ってやっています。貴乃花は「親の敵」ってくらい思い込んでガチ相撲やっていましたよ。だから頭がおかしくなったワケです。そこまで追い込まなくてはガチ相撲できないってのはおかしな話ですよね。

大体、親方名跡売買に1.6億円という金が動くので、負けたから引退ってワケにはいかないんですよ。それと場所数も多過ぎです。この二つの問題が解決しないと八百長はなくなりません。この状況を放置しておいて八百長だけをやめさせるってのは、全体の環境整えないと無理です。それをしながら、八百長が自然自然に淘汰される勝負環境を作らなくてはいけません。

武田頼政:1958年生まれ。航空雑誌の記者を経て相撲の記事も執筆するようになる。一連の八百長疑惑を告発し続けたため、相撲協会・力士などから集団訴訟を起こされる。新著は

『ブルーインパルス』(文藝春秋)東京五輪で上空に五輪マークを描いた航空自衛隊の「ブルーインパルス」の墜落事故の真相を20年以上かけて調べ上げた集大成をここに発表する。(6月9日発売)

インタビュー・文/中川淳一郎(ネットニュース編集者)



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