ソユーズ打ち上げパブリックビューイングレポート
こんにちは、咲村珠樹です。今回の「宙(そら)にあこがれて」は、JAXAの宇宙飛行士、古川聡さんが乗ったソユーズ宇宙船打ち上げのパブリックビューイングレポートをお届けします。

現地でレポートしたいのはやまやまですが、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地はあまりにも遠いので、パブリックビューイングとなりました。打ち上げ日時は現地時間の6月8日、午前2時15分(日本時間午前5時15分)。打ち上げ生中継のパブリックビューイングは午前4時30分に始まります。夜も明けきらぬ筑波宇宙センターに到着。今回の生中継は、ここにある特設スタジオから放送されることになっています。

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パブリックビューイング会場は、広報棟の視聴覚室。

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右写真で背中にJAXAの文字が見える方は、先代の筑波宇宙センター長です。

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筑波宇宙センター会場の定員は100名。これは開場当時の写真ですが、打ち上げ時刻が近づいた午前5時には、ほぼ半分の席が埋まりました。この時間帯、交通機関はタクシーか自家用車しかないのですが、小学生から60代まで、幅広い年齢層の熱心なファンが集まりました。

今回の打ち上げ中継のパブリックビューイングは、この筑波宇宙センターの他にJAXA宇宙科学研究所(ISAS)相模原キャンパス(神奈川県相模原市)、秋田大学、そして横浜市内のホテルでは、古川さんの母校、私立栄光学園(神奈川県鎌倉市)の同窓生らが集まり、打ち上げを見守ります。

この他、JAXAホームページやUSTREAM、ニコニコ生放送をはじめとするインターネットでのストリーミング、また一部のCATV局でも生中継が放送されました。

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これはUSTREAMとニコニコ生放送の中継をしたカメラ。この他報道陣では、フジテレビや朝日、毎日など新聞各社が取材に来ていました。

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演台に取り付けられた、古川さんが参加する第28/29次国際宇宙ステーション長期滞在(ISS Expedition28/29)のミッションパッチステッカー。これはJAXAオリジナルのもので、周囲には英語・ロシア語(キリル文字)・日本語で「古川聡」と書かれています。また、古川さんが乗り組むソユーズ宇宙船と国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」が黄色く強調されています。そして古川さんが滞在中に行う生命科学と宇宙医学分野の実験を象徴する、DNAの二重らせん構造と人体、そして心臓の鼓動が描き込まれていますね。

会場には、筑波宇宙センターに勤務するJAXA(当時は宇宙開発事業団:NASDA)同期入社の方が、手製のグッズを携えて応援に駆けつけていました。入社式の後に撮影した記念写真だそうです。古川さんは宇宙飛行士候補に選抜されたのを受けて、それまで勤務していた東京大学付属病院(第1外科学教室)を退職し、入社しています。「成」の字右下にいるのが古川さん。

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その他に、古川さんの写真パネルが登場。ロシア連邦宇宙局(Roscosmos)の打ち上げ・帰還用宇宙服(ソコル:ロシア語で「はやぶさ」の意)姿でポーズをとっています。

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さて、ソユーズの打ち上げロケットは非常に特徴的です。1950年代に開発されたICBM、R-7を基礎として衛星打ち上げ用ロケットに転用し、徐々に改良を重ねて技術を熟成してきたもので、世界初の人工衛星であるスプートニク1号も、ちょうど50年前、ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を行ったヴォストーク1号も、この系列のロケットで打ち上げられています。基本設計が古い反面、どんどん改良を重ねている為に信頼性が高く、ソユーズ打ち上げ時の事故は1983年(乗員は非常用ロケットで脱出して無事)を最後に発生していません。

また、構成も独特です。2段目のロケットを四方から取り囲むように1段目のロケット(4基)が配置(NASAでは1段目を補助ロケットブースターと呼んでいます)された末広がりのスタイルで、本体とも言える2段目は非常に軽量化されています。このため、ロケット単独では1段目を含めた総重量を支えきれず、他の国のロケットのように自立することができません。なので発射台では、四方から支持架により「宙吊り」の格好で据え付けられ、エンジンが始動して推力がロケットの自重を上回り、上昇しはじめると支持架がはずれて外側に倒れる……という「チュルバン(チューリップ)」発射方式と呼ばれる特徴的なものが採用されています。

言葉で説明しても判りにくいですから、実物……というのはちょっと無理なので、ミニチュアを使ってチュルバン発射方式をご覧にいれたいと思います。素材は2004年にタカラから発売された食玩「王立科学博物館 第二展示場」シリーズです。

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左写真が発射台に据え付けられた状態。燃料(石油系のケロシンと液体酸素)充填と宇宙飛行士搭乗を経て、打ち上げ45分前には左右からロケットを覆っている整備構造物が左右に展開し、続いて25分前にサービスタワーが離れて、ロケット手前に見えるトラス構造の支持架(裏側にもう2つあります)のみの姿になります。そして、打ち上げ時には支持架が、まるで花が開くように外側へと倒れ込みます。これが右写真の状態です。

この姿は非常に美しく、またケロシン燃料のロケットなので、液体水素(炎は見えない)と違って赤い炎を吹き出しながら、まるでたいまつを逆さにしたような姿で天へと昇っていく様子は見ごたえがあります。

今回、古川さんが搭乗するソユーズは、ソユーズTMA-Mという新世代(大きく分けて5世代目)の機体で、2回目のテスト飛行(ソユーズTMA-02M)を兼ねています。といっても、ソユーズ宇宙船もロケット同様、1967年の有人初飛行以来、徐々に改良を加えて熟成した機体であり、新世代とはいえ基本性能の安全性は十分確保(1971年のソユーズ11号以降、乗員の死亡事故は起きていない)されています。

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これは2009年にJAXAの宇宙飛行士、野口聡一さんが搭乗したソユーズTMA型の模型。今回のTMA-Mも基本的に姿は変わりません。ちなみに1990年、当時TBSの記者だった秋山豊寛さん(ソ連認定の宇宙飛行士)が日本人宇宙飛行士として初飛行した際のソユーズは、さらに1世代前のTM型です。

TMA型とTMA-M型の大きな違いは、搭載しているコンピュータがアナログ式のアルゴン16型から、デジタル式のTsVM101型に更新されたことです。これにより機器が小型軽量化され、70kgの重量軽減がなされました。軽減された分、積載貨物量(ペイロード)が50kgから120kgに拡大し、より多くのサンプルを国際宇宙ステーションから持ち帰ることができるようになります。間もなくスペースシャトルが退役し、国際宇宙ステーションから物資を持ち帰る手段は、このソユーズに限られてしまいますから、少しでも多くの荷物が積めるというのは重要な改良点です。また、コンピュータの消費電力も小さくなり、電源容量にも余裕ができました。処理能力も向上したので、飛行士前方に配置されている液晶ディスプレイ(ネプチューン)もカラー化され、表示される情報量も増加しています。

今回のソユーズTMA-02Mは古川さんの他、ロシアのセルゲィ・ヴォルコフ船長に、NASAのマイケル・フォッサム飛行士が搭乗しています。

ヴォルコフ船長はソ連時代の宇宙飛行士、アレクサンドル・ヴォルコフさん(ソユーズT-14、TM-7、TM-13で飛行、宇宙ステーション・ミール滞在中にソ連が崩壊し、一緒に滞在していたセルゲィ・クリカエフ飛行士とともに「ソビエト人として宇宙に行き、ロシア人として地球に帰ってきた人間」となった)の息子さん。世界初の「親子宇宙飛行士」です。

マイケル・フォッサムさんは、前回の宇宙飛行だったスペースシャトルSTS-124では、先日のスペースシャトル・エンデバーの最終飛行で船長を務めたマーク・E・ケリー船長(世界初の双子宇宙飛行士)のもと、JAXAの星出彰彦飛行士とともに、ミッションスペシャリスト(MS)として搭乗していました。今回は第29次長期滞在(Expedition29)のコマンダーをつとめます。

各地から寄せられた古川さんを応援するメッセージの中には、東日本大震災の津波で自宅を流された、宮城県気仙沼市の男の子から寄せられたものもありました。

さて、打ち上げ中継が始まりました。ロケットと宇宙船についてのお話はここまでにしましょう。

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中央アジア、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地。今回のソユーズTMA-02Mは、ここの1番射点(サイト1)から打ち上げられます。ここは1957年10月4日に世界初の人工衛星スプートニク1号を、そして50年前の1961年4月12日にガガーリンが人類初の宇宙飛行を行ったヴォストーク1号が打ち上げられた場所で、通称「ガガーリン発射台」と呼ばれています。……もっとも、その記念すべき発射台そのものは、1983年に起こったソユーズT-10-1号打ち上げ時の事故で破壊されてしまいました。

現在、ソユーズ打ち上げ用の射点は、第1と第31が設定されていますが、ほとんどがこの第1射点を利用しています。ロシアではガガーリンら、過去の宇宙飛行士が搭乗前にとった行動にちなんだ験担ぎ(ロケット搭乗前の立ち小便や、忘れ物をしても取りに帰らないなど)が色々行われており、ひょっとしたらこれもその一環かもしれません。

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ロケットエンジンが始動し、徐々に発射台から離れていきます。会場に集まった人々から拍手が起こり、無事の離昇(リフトオフ)を祝福しました。

この後、画面はソユーズ船内の映像に切り替わりました。ソユーズ内部には、目につくところにマスコット人形が吊るされています。これは宇宙に到達した(無重量状態になった)ことを確認するためのもので、まっすぐぶら下がっていたマスコットが浮遊しはじめると、ロケットの燃焼が終了し、宇宙空間に到達して無重量状態になったと一目で判るようになっているのです。今回はヴォルコフ船長の息子さんが選んだ、子豚のマスコットでした。打ち上げからおよそ10分後、このマスコットとチェックリスト確認用のボールペン(ヒモでクリップボードと繋がっている)が船内を浮遊しはじめると、無事の宇宙空間到達(ロケットからの切り離し成功)を祝って、再び拍手が起こりました。

これからソユーズTMA-02Mは、2日後の日本時間6月10日午前6時22分に、国際宇宙ステーションのロシア小型実験モジュールMRM1「ラスビエット」にドッキングし、午前9時頃に宇宙ステーションへと移動する予定です。こちらも当日の午前8時30分から午前9時30分までの間、インターネットやケーブルテレビで生中継するほか、以下の施設でパブリックビューイングが行われます。

◆一般会場
秋田大学(秋田県秋田市)
六本木ヒルズ森タワー52階 スカイプラネタリウムII会場(東京都港区)
相模原市立博物館(神奈川県相模原市)
上田創造館(長野県上田市)
黒部市吉田科学館(富山県黒部市)
西堀榮三郎記念探検の殿堂(滋賀県東近江市)
リナシティかのや(鹿児島県鹿屋市)

◆JAXA施設
角田宇宙センター(宮城県角田市)
筑波宇宙センター(茨城県つくば市)
調布航空宇宙センター(東京都調布市)

会場によっては入館料がかかるなど、各会場で対応が異なる場合があるため、来場の際は各施設に事前に問い合わせることをお勧めします。

国際宇宙ステーションにドッキングした後、古川さんは第28/29次長期滞在(Expedition28/29)クルーとして様々な実験や、石としての経歴を生かしたクルー・メディカル・オフィサー(クルーにけが人・病人が出た際、地上の航空宇宙医師の指示のもとに応急処置を行う)をつとめることになっています。

国際宇宙ステーションの長期滞在クルーは、3ヶ月ごとに3人ずつが入れ替わるようになっており、「第◯次」というのはその周期ごとに分けられています。ですからおよそ半年の滞在中、複数の長期滞在チームに所属することになるんですね。

第28次長期滞在(Expedition28)では、
アンドレィ・ボリセンコ飛行士(ロシア)……コマンダー
アレクサンドル・サマクチャエフ飛行士(ロシア)
ロナルド・ギャレン飛行士(アメリカ)
マイケル・フォッサム飛行士(アメリカ)
古川聡飛行士(日本)
セルゲィ・ヴォルコフ飛行士(ロシア)
となります。

ボリセンコ、サマクチャエフ、ギャレンの3飛行士は、9月16日にソユーズTMA-21で帰還予定です。そしてフォッサム飛行士をコマンダーとする第29次長期滞在(Expedition29)が開始されます。さらに10月2日、9月30日打ち上げ予定のソユーズTMA-22で3人のクルーが到着し、以下のクルー6人が揃います。
マイケル・フォッサム飛行士(アメリカ)……コマンダー
古川聡飛行士(日本)
セルゲイ・ヴォルコフ飛行士(ロシア)
ダニエル・バーバンク飛行士(アメリカ)
アントン・シュカプレロフ飛行士(ロシア)
アナトリィ・イワニーシン飛行士(ロシア)

古川さんら、ソユーズTMA-02Mで宇宙ステーションに向かった飛行士は、11月16日に乗ってきたソユーズTMA-02Mに乗って帰還予定となっています。この間、6月のうちに打ち上げ予定となっている欧州宇宙機構(ESA)の無人ステーション補給機、ATV-2による補給を受け、7月にスペースシャトル最後の飛行となるアトランティス(STS-135)を迎える予定です。順調であれば、11月にアメリカの民間企業、スペースX社による初の無人ステーション補給機「ドラゴン」が試験飛行を行ってドッキングする予定ですが、現在のところはっきりと決定している訳ではありません。

なお、古川さんはTwitterアカウント(@Astro_Satoshi)を持っており、飛行中もツイートする予定です。生の感想を見ることができるので、ぜひご覧になってください。また、JAXAのサイトでも情報が逐次公開されるので、そちらもどうぞ。

◆古川宇宙飛行士最新情報
http://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/furukawa/news/
◆古川宇宙飛行士Twitterアカウント
@Astro_Satoshi


【文:咲村 珠樹】
某ゲーム誌の編集を振り出しに、業界の片隅で活動する落ちこぼれライター。
人生のモットーは「息抜きの合間に人生」
そんな息抜きで得た、無駄に広範な趣味と知識が人生の重荷になってるかも!?
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