シンデレラより浦島太郎に共感する女子

 銀座の映画会社・東映に務める"銀座OL"でありながら旅人。たかのてるこさんは、有給休暇を利用して30数ヶ国もの国々をほとんど1人で旅してきた。20歳の大学時代に初めて1人で旅をした香港・シンガポール・マレーシアと、就職を前にした大学4年の時のインド旅をまとめた旅行記『ガンジス河でバタフライ』は、今では書店の旅行棚のインド付近に必ずある、インドに惹かれる若者たちのバイブルになっている。

 そんなたかのさんの旅の出発点は、いつでも大好きな映画の中にあるというけれど、実はもっと古い原点は、子供の頃に触れ続けた"旅"や"冒険"にまつわるおとぎ話にあるのかもしれない。

 「古今東西のおとぎ話はわりと読んでいました。『浦島太郎』『桃太郎』、チルチルミチルの『青い鳥』や『ジャックと豆の木』......。小さい時って、ほぼ家と幼稚園や学校との往復ですから、知らない世界に連れて行ってくれる本というのが楽しみで仕方なかったですね」
 
 冒険や旅の物語ばかりを特に選んでいたわけではないが、

「そもそも日本に限らず世界の童話は、旅がモチーフになっているものがすごく多いですよね。『ワンピース』などの漫画もそうですが、印象的には8割くらいが未知の世界に連れて行ってくれるものじゃないでしょうか」
 
 血湧き肉踊る冒険譚。今も昔も子供が求めるのはやっぱりそれ! そんななか、たかのさんにとって特に印象深かったのは『浦島太郎』なのだそう。

 「竜宮城ですごくいい思いしてたのに、最後おじいさんかよ!って(笑)。普通のハッピーエンドじゃないから、何を言わんとしてるんだろうと子供心に思いました。でも、シンデレラみたいに誰かに見つけてもらって幸せになるというよりも、能動的な浦島太郎の方がよっぽど共感できたんです。まぁ、子供心にわかってたんですかね。着飾ったところでシンデレラにはなれないよなって」
 
 たかのさんのこの発言、共感できる女子はけっこう多いと思う。ちなみにたかのさんは、『キャンディキャンディ』も苦手だった質である。ただ、結局のところは「どこか羨ましかったのかも」と結論づけられたが。
 
 とにもかくにも"別世界に連れて行ってくれる物語"大好き少女だった小学生時代。星新一や筒井康隆のSFシリーズや、世界名作シリーズで日々別世界への扉をこじ開けていたわけだけれど、衝撃的過ぎる別世界にも出合ってしまった。

 「手塚治虫さんの漫画、特に『火の鳥』の「望郷編」ですね。地球の人口が満杯になり、エデン17という無人の惑星へ移民した若いカップルが新生活を始めた矢先、恋人のジョージが事故で亡くなってしまうんですが、少女ロミはジョージの子どもを身ごもっていたので、ロボットの家政婦に息子の世話を頼み、20年間人口冬眠した後、自分の子供と結ばれるんです。でも、生まれる子供がなぜか男の子ばかりなので、子孫を絶やさないために、何代も人口冬眠を繰り返すんですけど、みんなが彼女とヤリたがるから、もう鞭を持ってアマゾネスみたいになっちゃって。地球から遠く離れた星で、子孫を増やして懸命に生きるロミの心の中には、いつも地球への望郷の思いがあふれていて‥‥。こんなこと描いていいのかなって思うくらい、とても衝撃的な生命観、倫理観でした。自分だったらどうするんだろうって。すごすぎる、手塚治虫! と思いましたね」
 
 その後中学へ進んでからは、本よりも映画への興味が沸く。山のように映画を観る日々が始まった。


〜後編は、大興奮のユン・ピョウ祭り! お楽しみに!〜

※本インタビューの一部は『J-WAVE BOOK BAR』(2011年6月11日 23:00〜オンエア)にて放送されます。

(プロフィール)
たかのてるこ
旅人、エッセイスト。1971年、大阪生まれ。これまで旅した国は30数ヶ国。映画会社勤務の傍ら、プライベートで旅した映像をテレビ局に売り込み、本人が旅人と制作を兼任した旅番組「銀座OL世界をゆく!」シリーズなどでも知られる。デビュー作は長澤まさみ主演でドラマ化もされた『ガンジス河でバタフライ』。著書に『モロッコで断食』『モンキームーンの輝く夜に』『キューバでアミーゴ』など。最新作はルーマニアを旅の舞台とした『ジプシーにようこそ!』 
たかのてるこHP http://takanoteruko.com/







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