“幻のロックフェス”「富士オデッセイ」とは?

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 現在公開中の映画「マイ・バック・ページ」は、1969年から1971年までの3年間を舞台に、その物語が展開される。

 戦後の世界の転換期と目される1968年を中心に、60年代、そして70年代はまさに“激動”とも呼べる時代であったことは確かだ。
 音楽評論家、ノンフィクション作家の田家秀樹氏は60年代末から70年代のサブカルチャー(特に音楽)の足跡をつづった『70年代ノート』(毎日新聞社/刊)で、70年代という時代を、次のように語る。

 そんな十年間は、新しい音楽や文化が台頭してくる現場そのものであった。(p10)

 例えば、その時代を代表する音楽といえばフォークであるが、同時にロックの黎明期でもある。
 1970年。ローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ボブ・ディラン、ピンク・フロイド、ドアーズなど名だたるロックミュージシャンが出演予定者として名を連ねた、一大“ロックフェスティバル”が企画されたという。
 その名も「富士オデッセイ」。
 8月15日から8月22日まで、静岡県の伊豆富士見ランドで開催されるはずだった、夢のロックフェス。しかし、それは立ち消えになった。本書にはその経緯について詳しく触れられてはいないが、大手広告代理店の撤退や行政の認可が降りず、直前になって中止になってしまったのだという。

 その後、日本では頭脳警察、四人囃子やキャロルといったロックバンドが次々にデビュー、さらにグループ・サウンズの代表格であった「ザ・タイガース」の沢田研二がロッカーに転向するなど、日本のロックシーンは大きく発展していく。
 これらはすべて1970年代初頭の話である。

 「今」を知るためには、これまでの歴史を辿り、何が起きてきたのかを知ることが大切だ。そして、日本のロックがどのような歴史を辿ってきたのか、その黎明期にあたる1970年代を探ることは、今自分が好きな音楽をより深く理解する上で、重要なことではないだろうか。

 本書の中には編集者として知られる松岡正剛や、詩人の谷川俊太郎、俳優の唐十郎らの名前も散見できる。田家氏が言う“新しい音楽や文化が台頭してきた”時代を、肌で感じることができるだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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