小山ゆうが『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載中の漫画『AZUMI-あずみ-』第8巻が、5月30日に発売された。この巻では前巻に引き続き、「あずみ」が朝廷に攘夷論を吹き込む聖覚院慈行の暗殺を目論む。

 『AZUMI』は、上戸彩主演で実写映画化もされた漫画『あずみ』の続編である。江戸時代初期を舞台に刺客として育てられた少女「あずみ」の戦いを描く作品である。『AZUMI』は幕末に舞台を移し、同じ「あずみ」という名前の少女が刺客となって戦う。『あずみ』とは時代が離れており、ストーリーは直接結びつかない。手塚治虫『火の鳥』の猿田のように、「あずみ」のキャラクター設定が利用されている。

 『AZUMI』は武田鉄矢原作で小山が作画した『お〜い!竜馬』のクロスオーバー作品でもある。坂本竜馬を主人公にした作品で、竜馬や岡田以蔵、武市半平太らが同じキャラクターとして『AZUMI』に登場する。この巻では以蔵が勝海舟の護衛をしている頃であるが、その以蔵が「あずみ」に恋をする。竜馬中心の『お〜い!竜馬』では以蔵の悲劇性が強調されていたが、それに比べると『AZUMI』の以蔵は焦燥感が少ない。「あずみ」への恋によって、以蔵の人間味を浮かび上がらせている。

 『あずみ』と共通する『AZUMI』の特徴は、あどけない少女が剣豪さえも打ち破るところにあるが、あずみの実力は敵と比べて圧倒的である。勝負はあっけなく決着し、バトルマンガのようなハラハラ感はない。しかし、それ故に戦いのリアリティが存在する。「あずみ」のような超人的少女は非現実的な存在だが、一瞬で決着をつける「あずみ」の戦いぶりが戦闘のリアリティを補っている。

 さらに『あずみ』と共通する『AZUMI』のリアリティは、必死に生きる下層民を描いていることである。「あずみ」自身は洋風の装いで時代から浮いている存在である。この点は伊達政宗がハーレーに乗る『戦国BASARA』のように、ファンタジー系の歴史物と類似性がある。

 しかし、『あずみ』も『AZUMI』も、歴史をファンタジーの世界として描いていない。作中には泥にまみれて生活する下層の人々が描かれる。彼らは虫けらのように踏みにじられながらも、必死に生きている。そこには生々しい生がある。これは本格的な時代劇として時代劇通に評価が高かった2007年放送の大河ドラマ『風林火山』に通じるものがある。「あずみ」の活躍だけでなく、下層民のリアルな描写にも注目である。

(林田力)

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