「iPad」がバレーボールで重宝されたワケ

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 昨年、バレーボール全日本女子が世界選手権で見事銅メダルを獲得、32年ぶりの快挙を成し遂げました。
 このとき話題になったのが、眞鍋政義監督がベンチにタブレット型端末「iPad」を持ち込み、データを駆使してチームに指示を出していたということです。ところが、実際はバレーボールにおけるデータ導入の歴史は古く、イタリアのセリエAでは十数年前から、そして日本でも時を経ずして導入されています。データを使った戦術の組み立ては、バレーボールの中では全世界的に行われていることなのです。

 では、眞鍋監督のデータの使い方にはどのような特徴があったのでしょうか。
 その全てが、眞鍋監督が著した『「精密力」〜日本再生のヒント〜』(主婦の友社/刊)に収められています。

 まず、「iPad」導入はどのような影響を与えたのでしょうか。
 眞鍋監督は本書でその理由を明かします。データは試合前の「相手チームの解析」や「抵抗するための戦術」を練るのに有効であり、また試合後の自分のチームの分析や、採用した戦術が正しかったかどうかの検証にも役立ちます。
 しかし、これまで「試合中」のデータ分析はしにくい状況にありました。
 参考になるデータをリアルタイムで見ることができなかったのです。

 ある選手のプレーが気になってパフォーマンスの客観的な数値が知りたいと思っても、ベンチから2、3メートル離れているベンチに並んでいるパソコンに歩み寄って、知りたいデータが表示されている画面を呼び出し、モニターをのぞき込む必要があったのです。
 何度もモニターを見るために席を離れていては、タイムロスにもなりますし、意思決定が遅れてしまう可能性もあります。そこで眞鍋監督はiPadを使い、監督席からリアルタイムにデータを確認できるようにしたのです。そのことで、とっさの指示もデータを明確な根拠に出せるようになりました。

 しかし、眞鍋監督はデータが全てであるとも考えていません。
 バレーボールには数値が悪くても使い続けなくてはいけない選手がいるといいます。

・チームの攻撃の中心であるエース
・代えがきかないセッター
・大事な場面で決めてくれるアタッカー
・この選手がいるだけでムードがよくなるプレーヤー


 こうした選手たちを代えてしまうと、それまで以上にゲームの流れが悪くなるケースがあります。つまり、数値にあらわれない何かを持っている人たちです。

 眞鍋監督は、銅メダルを勝ち取った理由をこう分析します。

「世界選手権の好成績の理由のひとつは確かにデータを精密に解析して、活用したことですが、それだけで勝てるほど世界は甘くありません。データから導きだした結論を遂行する選手の「技術」の向上や、向上によってワンランク上の戦術を使えたことなど、いろいろな「精密力」を発揮できたことです」(p44)

 『「精密力」〜日本再生のヒント〜』は世界選手権で、具体的にどのようにデータを活用したのか、日本代表をどう分析しているのかなど、新書とは思えないほど“精密”につづっています。

 精密なデータと、そして選手たちのことをよく知ること。この2つを組み合わせた眞鍋監督率いる女子バレー日本代表に期待がかかります。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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