企業が目指すべき「グリーン・オーシャン戦略」とは?

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 東日本大震災をきっかけに大事故に発展してしまった福島第一原子力発電所の問題。様々な人が東京電力や政府の対応に批判の声をあげているが、この問題は多くの企業にとっての無視できないものになっている。
 環境ジャーナリストとして様々な企業の「CSR」について調べている中野博さんは新刊『グリーン・オーシャン戦略』(東洋経済新報社/刊)において、企業のCSRの重要性を主張しているが、今回の東電の事故とその後の対応をどのように見ているのだろうか。緊急インタビューを行った。
 今回は、昨日に引き続き、中野博さんへのインタビュー後編をお伝えする。

■中小企業を取り巻く「CSR」の現状

―この『グリーン・オーシャン戦略』で掲載されている「CSR」の事例は大企業が中心となっていますが、中小企業はどのような反応なのでしょうか。

「先ほども言ったように、中小企業まではCSRというものが行き届いていないですね。それは仕方ないところがあって、スタッフが少ないとか、正直余裕がないという声もあります。ただ、中小企業の中でも募金活動や地域清掃をやっているところもありますし、この本の第1章の終わりに都田建設という企業の事例を掲載しているのですが、ここは“心の美しい経営”として注目を浴びています」

―中小企業でも出来ることをしっかりとやっていくことが大切だと思います。

「そうですね。まずは消費期限とか、販売者としての最低限度のルールを守る。そういうところを徹底することが大事です。先日、富山県の焼肉店で食肉偽装問題が起こりましたけど、注意を怠ると社会に大きな影響を与えてしまいます」

―そうですね、あの問題は社会に対して大きな影響を与えました。

「ただ、私は8年くらい前から中小企業に対してCSR講座などを開いているのですが、言われたらそれは確かに分かる。けれども、やらない。それは何故かというと、先ほども申し上げたように、直接売り上げに関わらないというところがネックになっているんです。でも、万が一、失敗して、工場であれば爆発事故を起こしてしまった。そのときどういう対応しますか、と問いかけるんです。やはり、マイナスの情報も開示できる企業は信頼されますし、その信頼が企業のブランドとなります。信頼を勝ち取るブランド戦略の重要性に、中小だけでなく大企業もなかなか気づいていないと思います」

―この本のタイトルとなっている「グリーン・オーシャン戦略」というのはどのようなものなのですか?

「この本はもともと経営者、経営幹部向けに書いた本です。普通、企業の経営戦略本だと、どのように競合他社に勝つかということが念頭に置かれて書かれるけれど、この本では、どういう風に未来を創っていくかを考えて企業経営するということを念頭に置いて書いています。つまり、儲かっているだけじゃなくて、儲かった先がどうなるのか、ということを考えるということですね」

―競合企業と戦いながら、どんどん倫理的な道から外れていくのではなく、企業同士が協力し合うのもそうですし、企業と行政や研究機関、NPOなどとも手を組んでいかなければいけないと思います。

「ライバル企業ごとプラットフォーム化してしまい、一緒にやりませんかというという風にならないといけないのかも知れませんね」

―この本を読んでいて、私自身「共感」というのは重要だと感じました。あの企業がこの街にいてくれてよかったと思わせる企業ですね。

「そうですね。企業が存在してくれてありがとうという想いを持たれることは、企業にとって大切なことです。それは地域密着で、街をきれいする活動を行っているからなのかも知れないし、その企業がやっている事業が地球環境をよくすることなのかも知れない。でも、感謝されることは重要なことです。それはこの本の第2章の“シェア・ブランディング”というところにまとめています。どういう未来を創るか、そのために企業は何をするのか。それを徹底して考えることです。これはよく考えたら当たり前のことなんですよね」

―でも、その当たり前が難しいんですよね。

「そうなんですよ。これは自分で会社を経営してみるとよく分かります(笑)。理想は分かるけれど……やはり利益が上がらないとやっていけない」

―それはジレンマですよね。

「だから、まずは出来ることからする。利益の1%のお金を自然保護のために使いますとか、ワンアクション置くだけでいいんですよね。意外と出来るもので、出来ないと思い込んでいる節があると思います」

―「CSR」は経営幹部など大企業でも一部の人のみしか強くは意識していないとおっしゃいましたが、社員全体がその意識を持って取り組むということが大切なのではないでしょうか。

「社会人として何が正しいのかということを考えることですよね。去年、正義についての本や哲学の本が売れたけれど、やはり、みんな、社会に対して疑問を感じて、“人間とは何か”という基本に戻った問いに対峙しているのかも知れません。特に今回の震災は、それを強く感じさせたと思います。企業は経営者含めて一人ひとりが、自分の仕事について様々な視点から考えて、次世代の人たちに自信をもって“こんな仕事だよ”と教えることができるのか問いただす良い機会だと思います。この本にはそう胸を張って言えることをしている企業の事例を多く掲載しているので、読みながら、自分の中でディスカッションの種にして欲しいですね」

(聞き手/金井元貴)



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