「仕事には“遊び”が重要」―着メロ仕掛け人が考える20代、30代の働き方

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 先月、『仕事は楽しむが勝ち!』(かんき出版/刊)を出版した、株式会社フェイス代表取締役社長・平澤創さんへのインタビュー。
 平澤さんは大学時代からアルバイトでTV番組の作曲や音楽制作などに関わり、その後、任天堂のサウンド開発部門に就職。25歳のときに株式会社フェイスを起業し、「着メロ」の仕掛け人として注目を浴びます。そんな平澤さんの中に一貫として存在するのが「音楽」です。ブレることのない軸の作り方とは、ヒット作品の作り方とは。ビジネスパーソンのみならず、音楽や文章、写真など、表現の道を志す若者も必読のインタビューを3回に分けてお送りしていきます。今回は中編をお送りします。


―中編:「『着メロ』はどのような発想から生まれたのか」―

―平澤さんは1992年に株式会社フェイスを立ち上げて、1994年には日本で初の音楽のダウンロード販売を開始されています。当時はまだパソコン通信の時代で、ウインドウズ95が出る前でした。その時期からダウンロードビジネスを考え、立ち上げていたということに驚いたのですが、どのようにダウンロードビジネスのヒントを得たのですか?

「この本には書いていないけれど、1994年頃にアイルランドに出張に行ったんです。そのとき訪れたダブリンの大学で、学生が録音した演奏を通信を使って遠隔で聞くというようなことをしていたんですね。これって今では当たり前の話になっていますが、当時は全くそうではありませんでした。それを見て、『これは将来くるな』と思ったんです。
通信を使えば、CDなどにしてパッケージ化しなくても良いわけですよね。1曲だけでもビジネスが成立します。そういう文化があることを知って、『くるな』と」

―ピンときたわけですね。

「ただ、これは1つのきっかけに過ぎなくて、他にも様々なきっかけがあります。ビジネスは点だけでは事業化できません。思いつきや疑問だけでビジネスができないのは、それが点であるからです。それら幾つもの散らばった点と点同士が線で結ばれたときに、ビジネスになるんです。よく思いつきでビジネスをする人がいますが、失敗する理由は明確で、点のままやろうとしているからなんですよね」

―そうした点をたくさん作るためには、20代のうちにがむしゃらに働くことが大切なのでしょうか。

「がむしゃらに、ということが大切です。20代の人に働く意味は何ですかと聞いてみると、どう返答していいか困ってしまうと思います」

―そうですね。私もその質問をされると、ちょっと困ります。

「強いていうのであれば、好きだから、とか」

―ほかには、「その仕事で一人前になる」とか、そういう風に答えますね。

「じゃあ、一人前って何ですか? とか、そういう突っ込みが入ってきますよね。20代のがむしゃらさというのは、自分の中で明確にゴールを決めていない状態のことです。僕は、点を線にしていくためには、自分の目指していく方向に常にスイッチを入れておかないといけないと思っています。例えばライターだったら、どういうライターになるのか、理想とする人は誰か、どのような状態になればいいのかという目標設定をするんです。がむしゃらでいいのは20代までで、30代はそのスイッチのオンにして、ポイントをおさえていく。そういう風にやっていくと思うんです」

―私の周囲の20代の人たちと話していても、やはり働く意味ということに対して、明確な答えをちゃんと持っていないところはあると思います。ただ、20代後半になってくると、少しずつ発言が変わってきているんです。

「この本の帯に、『大切な30代を後悔しないために』と書いているんですが、僕自身はむしろこの本を20代の人に読んで欲しいと思っています。
実は20代が方向感を定めるのに一番いい時期なんです。だからこそ、がむしゃらにならないといけないわけで、方向感を定めるためには、とにかくいろんな経験をしたほうがいいじゃないですか。選択の幅が広がりますし、点の数も増えます。そして、20代から30代にかけてどうしていくのか、本書を通して自分の生き方の方向性を考えていって欲しいと思うんです」

―30代になってからも自分の方向感を定めることはできるのでしょうか。

「遊びが重要だと思います。それは単純な意味での『遊び』ではなくて、仕事も含めて、自分なりのいろんな遊びを持つということです。30代で行き詰ったとき、遊びを通してどのような経験をしてきたかで、それを乗り越えるための方法の選択肢が増えますよね。これは自分に向いているとか、不向きだ、とか。遊んでおかないと幅は広がりませんし、広くないと30代は結構きついと思いますよ。だから、20代の人には、30代のときに選択肢を広げるために、がむしゃらに遊んで欲しいなと思います」

―本書を読ませていただいて、平澤さんの1つの軸に「音楽」があるように思いました。平澤さんと音楽はやはり切っても切れないものなのでしょうか。

「よくどんな音楽が好きか聞かれるのですが、実はないんですよ。本当にいろいろな曲を演奏してきたので。
3歳か4歳くらいからクラシックピアノをはじめて…まあ、正確に言えば親にやらされていたのですが(笑)、小学校6年生くらいの頃に合唱でピアノを弾くでしょ? クラスメイトからは『すごい』と言われるんだけど、その『すごい』って、格好いいという意味ではなくて、男子がピアノを弾いているという見世物的な珍しさなんですよね」

―私はピアノの弾ける男子が格好良く見えましたよ。

「それは、時代が違うんですよ(笑)」

―指の動きとかきれいで。ピアノを弾く姿が格好良くて。

「それはね、男目線だからです(笑)。思春期に入ると、『すごい』っていう言葉は格好良いという意味ではないということに気づくんです。で、どうやったらモテるのかということを考えますよね。そこで、ギターをはじめたんです。もちろん演奏するのはロックなんですが、家庭環境的に言えばロックは俗悪ですから(笑)、モテたいという動機が不純だということで続かない…という風に、話し出すと長くなるのですが(笑)、いろいろな音楽に触れてきたので、好きなジャンルはないんですよ。
この本と関連付けると、音楽を通して、本当に様々な経験をしてきました。アレンジにしても作曲にしても、自分の自己満足でやるのではなくて、ユーザーが欲しがっているものを届けるということが、身体の中に染み付いていたんですよね。ユーザーが欲しいものを届けるということは、ビジネスも音楽も共通している部分だと思いますし、仕事でも遊びが大事だと思った理由は、やはり音楽をやっていたからだと思うんですよね」

―モテるための音楽というのもそうですよね。相手がいて、その人に届けるということですから。

「でも、いきなり今の時代にフォークで『好きだ!』と歌ってもそれはそれで怖いですよね(笑)。やはり時代に沿ったものでなくてはいけません。
自分にとって、音楽は自分の人生に幅をもたせてくれた1つの重要なものです。それに、音楽は今日はじめて明日できるものではなくて、続けることで身についていくものですから、音楽を僕に与えてくれた両親には感謝しています」

―結果的には、音楽は平澤さんにとって現在に至るまで大切な位置を占めているんですね。

「ただね、僕の中では音楽は『逃げ』でもあるんですよ。それはどうしてかというと、音楽には答えがないから」

―確かにそうですね。

「『売れなかった』=『その音楽が駄目』ではないですよね。それに受け手によって全く違う印象を持つし、演奏する人の気持ちの入れ具合によっても全く違いますよね。だから、音楽というのはある意味でいえば、自分の答えを曖昧にするためのフィルターかも知れません」

―後編:「努力の先にあるものとは? 平澤創さんの哲学」に続く―



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