トヨタ、リコール後の復活劇の裏側

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 2009年8月、アメリカでトヨタ製の自動車・レクサスが制御不能となって衝突し、4人が事故死するという事件が発生、さらにその後もブレーキの不具合による事故が起こりました。その品質やブランドイメージで自動車業界のトップ企業に君臨していたトヨタでしたが、事故直後から、トヨタブランドは否定的に報道されるようになります。

 ところが、その1年後にはトヨタはこの危機を脱しています。
 拙劣な危機管理が原因であると非難を浴びたトヨタは、どうしてここまで素早く危機を脱することができたのでしょうか。

 日経BP社から出版されている『トヨタ 危機の教訓』(ジェフリー・K・ライカー、ティモシー・N・オグデン/著、稲垣公夫/訳)は、トヨタが重大な危機を何度も乗り越えてきた重大な要素に「企業文化」をあげています。

 前述のように、トヨタの危機はこれまで幾度もありました。
 1950年、創業者の豊田喜一郎ら経営陣は、自動車産業の成長を見越して、多額の設備投資を行いましたが、その予想に反して自動車の需要は拡大しません。そしてこれが尾を引き、従業員の長期ストライキが起こります。
 このときは債権者の介入によって、社員を1500人以上削減、さらに経営陣が退陣して、経営危機の個人的な責任を取ります。
 このとき、会社の主導権を銀行に奪われたことで、トヨタの企業文化に「自立」という価値観が植えつけられます。そして、この価値観はトヨタの保守的といわれる投資戦略に大きな影響を与え、現在でもうまく機能しています。

 こうしたトヨタの企業文化は、現代の経営者やマネージャーたちに普遍的な教訓を与えてくれると著者たちはいいます。本書にはその教訓が簡潔に4つにまとめられているので、ご紹介していきましょう。

教訓1、あなたの会社の危機への対応は昨日始まった
 企業文化とは幹部が見ていないところで会社が何をするかということです。事業計画プロセスの外で起きる集団的な行動は、リーダーのいかなる言動よりも、会社の方向や運命を大きく左右します。
 会社が危機にどう対応するか、まず自問すべきは、危機管理計画や方針ではなく企業文化や社員についてです。トヨタは、創業以来培ってきた「トヨタウェイ」という企業文化によって推進されています。この「トヨタウェイ」には、「チャレンジ精神」「人間性尊重」「ゲンチ・ゲンブツ(行って、見て、理解する)」「カイゼンマインド」「チームワーク」などがあります。

教訓2、責任を負う企業文化は、責任転嫁の企業文化に勝つ
 問題の解決を奨励する組織が、責任転嫁を許容する組織より業績が良いのは常識的なことです。問題の外にいる人間も、問題を自分の管轄内であるものととらえ、責任を負えば、状況を改善することが可能となります。
 人を非難すると革新的思考は出来なくなります。真の責任の文化では、どこにでも改善の機会を見出すことができるのです。

教訓3、最良の文化でも弱点が生まれる
 「トヨタウェイ」を会社に広めるために努力しているトヨタですら、文化の弱点がありますし、文化そのものが弱体化することもあります。だとすれば他社でもそれが起こるのは当然のこと。
 トヨタの経験が示すように、継続的に改善を進めていく文化にとっての最大の危険は、成功であり、成功が企業の弱体化を覆い隠します。企業は成功に溺れてはいけません。

教訓4、企業文化のグローバル化とは、バランスを取り続けること
 企業文化の共有はトヨタの強みです。しかし、それにはマイナス面もあります。
 集中化と分権化、グローバルとローカルとの適切なバランスを取ることは大半の人が考えるより難しく、リコール危機の根本原因の一つとして指摘された要因は、意思決定が集中化されすぎていたということでした。
 トヨタが学び続ける必要があるのは、何を日本に集中化し、何を地域に分散化するのか、バランスを見出すことであると著者たちは述べています。

 「カイゼン」はもはや海外でも通じる言葉であり、トップクラスのグローバル企業であるトヨタ。このメガ企業を支えている「企業文化」について、見直してみる企業は多いのかも知れません。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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