〈涼宮ハルヒ〉シリーズ4年ぶりの新作、『涼宮ハルヒの驚愕』が5月25日午前零時、ついに発売された。今回リリースされたのは、(前)(後)2巻セットに64ページのオールカラー特製小冊子「涼宮ハルヒの秘話」が付属する初回限定版(本体カバー裏には定価もISBNもなく、シュリンクに貼ってあるシールのほうに印刷されている)。分売・返品不可の買切という条件にもかかわらず、確定部数は51万3000セット(2冊合わせると102万6000部)と、ライトノベル史上最高の初版部数を記録した。

〈涼宮ハルヒ〉シリーズ全体の総売り上げは、この2冊分を含めて累計800万部。海外版、漫画版を含めると総計1650万部に達する(数字は公称)。『驚愕』発売を記念して、5月〜6月発売の角川グループ各社25誌の表紙に涼宮ハルヒが登場する(新人物往来社の〈歴史読本〉7月号にもハルヒが登場)。

 シリーズの歴史をざっとおさらいしておくと、第1作『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞の大賞を受賞し、2003年6月に角川スニーカー文庫から刊行。
 主要登場人物は、素っ頓狂な美少女・涼宮ハルヒ、語り手のキョン、萌えキャラの未来人・朝比奈みくる、クールな超能力者・古泉一樹、無口な宇宙人(情報統合思念体によって造られたヒューマノイド)・長門有希。以上5人の高校生がハルヒの強力なリーダーシップのもとに結成したSOS団(世界をおおいに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)が織りなすドタバタ劇がシリーズの基本線。自主映画製作に学園祭に野球に合宿に"嵐の山荘"に同人誌づくり......の一方、タイムトラベルあり、ディック的な現実改変あり、異次元(閉鎖空間)あり。「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の世界を現代SF的に再構築したような----と言えばあたらずといえども遠からずか。
 いとうのいぢのイラストの魅力も相俟って、『憂鬱』発売当初から人気を集め、翌2004年には早くも『このライトノベルがすごい!2005年版』で作品部門1位を獲得した。

 しかし、本格的に人気がブレイクするのは、2006年夏の京都アニメーションによるTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』放送から。エンディング曲「ハレ晴レユカイ」のバックに流れる主要キャラクターによる踊り(通称ハルヒダンス)がYouTubeを通じて世界的に大ヒット。世界各地のファンがハルヒダンスを踊りネットに動画を投稿するブームが巻き起こった。
 2009年には、新作14話を加えた全28話を時系列順に再構成して放送。新作パートでは、同じ夏休みが15498回リピートされる中編「エンドレスエイト」をほぼ同一の内容で8週にわたって放送するという前代未聞の実験的な試みを敢行し、物議を醸した。
 2010年には、初めての劇場版「涼宮ハルヒの消失」が公開され、単館系ロードショーとしては驚異的な大ヒットを記録している。

 本日発売の最新作『涼宮ハルヒの驚愕』(前・後編)はシリーズ第10弾。話の中身は、第9弾『涼宮ハルヒの分裂』の直接の続編----というか、もともとは『分裂』と『驚愕』が合わせて前後編になるはずで、当初は『分裂』発売の2カ月後、2007年6月1日に『驚愕』の発売が予定されていた(『分裂』に入っている投げ込みチラシには"続巻『涼宮ハルヒの驚愕』6月1日発売決定!"とある)。つまり、今回の『驚愕』は、当初予定より4年遅れ。その4年のあいだにシリーズの人気はうなぎ昇り。文字通り待ちに待った新作刊行となった。

 キョンやハルヒが2年生に進級した春から始まる『分裂』の真ん中あたり、第一章の最後で入浴中のキョンにかかってきた電話から、物語はαとβの2パートに分裂。それぞれの物語が交互に語られてゆく。αではお気楽な日常が続く一方、βではSOS団に重大な危機が......。
 という流れをそのまま引き継いで、『驚愕』も、αパートとβパートが並行して進んでゆく。世界はなぜ分裂したのか? はたしてSOS団に新入生は入団するのか? というあたりが『驚愕』の読みどころ。SOS団と真っ向から対立する4人組との関係もいよいよヒートアップしてくる。
 作中ではまったく時間が経過していないので当然と言えば当然だが、4年のタイムラグはみじんも感じさせず、前後編まとめて一気に読ませる。4年前に読んだきりという方は、(著者自身も『驚愕』あとがきで推奨しているとおり)『分裂』を再読してからの一気読みをお薦めする。

 なお、初回限定版特製小冊子『涼宮ハルヒの秘話』(64ページ)は、33ページの書き下ろし短編「Rainy Day」を収録。中学3年生当時のキョンと佐々木のエピソード(および、キョンの口癖の起源)が描かれている。

(大森望)







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