写真/若生卓二
いつでもガールズたちの心をつかんで離さない「マンガ」。いわゆる「少女マンガ」から、恋愛物、青春物、友情物などなど、あなたにもきっと、思い入れたっぷりの「心の一冊」があるのではないでしょうか?

名作、人気作といわれる作品など、「おもしろいマンガの条件」を考えてみると、必ず、ドキッとするような名セリフやシーンがあるものです。そこで、「女子のためのマンガ特集」後編となる今回は、女子マンガ研究家や、マンガ誌編集部が選ぶ、「ドキッとするようなイイ男の名セリフ」、「心に突き刺さる女たちの名セリフ」を通して、今おすすめのマンガを紹介します!

大好きな彼からこんなことを言われてみたい! 「イイ男」のぐっとくる名セリフ

女子向けのマンガといえば、やっぱり告白シーンは欠かせませんよね。「気持ちの伝え方」の表現はいろいろありますが、今回は少女マンガをこよなく愛する女子マンガ研究家・小田真琴さんに、イチ押しの名セリフ&名シーンをセレクトしてもらいました。過ぎ去った青春を思い返したり、現在進行形の恋愛と重ねてみたり…と、妄想を膨らませてみて!

グッとくるセリフ1:『娚の一生』1巻 第6話より



“恋”なので仕方ありませんでした

<『娚の一生』1巻 第6話(C)西炯子/小学館フラワーコミックスα>

このセリフは、恋に臆病になっている女性・つぐみとの結婚を望む海江田が、つぐみの親戚たちの前で、2人の関係について語ったときのもの。

「30代半ばの独身女と50代独身の大学教授。それぞれ世間体や社会的地位などがあり、理屈をこねて一歩を踏み出せないつぐみに対して、『“恋”なので仕方がない』と、シンプルかつ情熱なアプローチで迫る海江田に、大人の魅力を感じます。新たな王子様像を示した異色のラブストーリーです」(小田さん)
写真娚の一生』 西炯子/小学館 全3巻 各420円

30代半ばの独身キャリアOL・つぐみの前に現れたのは、祖母のかつての教え子という50歳の大学教授・海江田。成り行きで同居することになり…。




グッとくるセリフ2:『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』1巻 風林火山の巻より



も1回だけ言う
ボクとつきあってほしい

<『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』1巻 風林火山の巻(C)松田奈緒子/集英社>

気になる彼から告白されても、「告白の言葉が軽すぎる」と断ってしまった綾。そして、再び彼から告白されたときのセリフがコレ。
「『愛してる!』と情熱的に言ってもらいたいと思う綾の期待に反して、2回目の告白でも『つきあってほしい』とサラリと言う稲造。がっかりする綾ですが、すぐに彼の手が震えていることに気が付きます。形式的なことにとらわれて自分の気持ちに素直になれない女性にオススメです」(小田さん)

というか、イケメンに2回も告白されるほど思われてるなんて、うらやましすぎです!
写真『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』松田奈緒子/集英社 全10巻 各880円

歴史オタクで変わり者、三十路彼氏ナシの綾と、彼女に好意を寄せる美男子の稲造。男の人と付き合い慣れていない綾の行動にハラハラドキドキの下町人情恋劇場


グッとくるセリフ3:『ハチミツとクローバー』8巻 chapter50より



何で――って、君が好きだからだよ

<『ハチミツとクローバー』8巻 chapter50(C)羽海野チカ/集英社>

青春マンガの代名詞的存在になっている「ハチクロ」からも、名セリフをひとつ。8巻で野宮が新幹線で東京に帰る山田を見送るシーン。「どうしようもなくなったらオレを呼びな」と言う野宮に、「何でですか?」と戸惑いながら返す山田。その後の野宮のセリフがたまりません。

「普段はクールで大人な雰囲気の野宮が、突然真面目に、山田への恋心を正直にぶっちゃけてしまうシーンです。恋をして、いったん脱いだはずの『青春スーツ』をまた着込んでしまうところに、おもしろさとおかしみを感じます」(小田さん)

写真『ハチミツとクローバー』羽海野チカ/集英社 全10巻 各420円

貧乏だけど楽しい生活を送る美大生、森田、真山、竹本の3人と、はぐみ、山田の女子2人。恋や将来に悩む彼らの青春を描いた大ヒット作品。

グッとくるセリフ4:『青空エール』4巻より



小野!! オレ絶対彼女つくんないから!!
甲子園行けるまで誰とも付き合わないから!!
強くなるから絶対!!

<『青空エール』4巻(C)河原和音/集英社マーガレットコミックス>

野球部員の山田くんに恋心を抱くつばさ。勢いで告白してしまうものの、野球に打ち込むからと振られてしまいます。失恋を乗り越えて一歩を踏み出すために、改めて自分の気持ちを伝えるつばさに、山田くんが真摯に言い放ちます。

「この作品は主人公がブラバンで甲子園を目指す、ちょっと暑苦しいくらいのスポ根マンガです。女の子の気持ちを受け止めながらも、こんなかっこいいことを言ってくれる男の子がいたら、失恋もステキな思い出になりますよね。『付き合いたい! 好きだ!』という感情以外にも、憧れの彼が『誰のものでもあって欲しくない』という願望は誰もが持つものではないでしょうか」(小田さん)

失恋すらもエネルギーに変えてしまう青春。若いってすばらしいです。

写真『青空エール』河原和音/集英社 1〜6巻 各420円

甲子園のスタンドで演奏するブラスバンドの姿に憧れ、熱い思いを胸にブラバンの名門高校に入学したつばさ。そこで、同級生の野球部員・山田くんに出会い…。


グッとくるセリフ5:『町でうわさの天狗の子』7巻 第35話より



お前の分が14個だ

<『町でうわさの天狗の子』7巻 第35話(C)岩本ナオ/小学館フラワーコミックスα>

ホワイトデーにお返しを渡さなきゃいけないことを知って19個必要という瞬ちゃん。「何それ、クラスの女子みんなからもらったの?」と詰め寄る主人公・秋姫に対し、彼が言ったのがこのセリフです。

「見開き使ってバーンとこのセリフが出てきて、興奮してしまいました。猜疑心から一転してのときめき! 読んでもらえれば納得してもらえるはず。こんなことを素で言えてしまう無口なクール男子・瞬ちゃんと、秋姫のほんわかした関係に胸がキュンとする作品です」(小田さん)

写真町でうわさの天狗の子』岩本ナオ/小学館 1〜7巻 各420円

天狗と人とのハーフ・秋姫は、超力持ちなこと以外は普通の女の子。学校に行って、恋をして、悩みながら毎日を過ごす。ちょっと不思議な、だけどジーンとくる物語。「第55回小学館漫画賞」受賞。


【選者】小田真琴
1977年生まれの女子マンガ研究家。サイゾーウーマンにて「まんが難民に捧ぐ、『女子マンガ入門』」を不定期連載中。

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