任期5年の韓国・李明博政権も残り少ない。来年12月には次期大統領選がある。再選はできないため後がない。そろそろ「歴史に残る政権の業績」が気になりはじめるころだ。この「業績」に影響を与える要素のひとつが、北朝鮮との外交でいかなる成果をあげたかだが、韓国の大統領と北朝鮮の関係について産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏が解説する。

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 韓国の歴代政権はその“業績作り”のため対北関係を利用しようとした。南北関係は民族的課題であり、対北関係で業績を上げると「民族史に残る政権」ということになるからだ。そこで歴代大統領は任期中、南北首脳会談開催にこだわった。

 金大中元大統領しかり盧武鉉前大統領しかり。とくに金大中氏など、初の南北首脳会談(2000年6月)実現でノーベル平和賞をもらっている。

 ただこの二人の大統領はいずれも一昨年亡くなっている。それ以前の大統領(全斗煥、盧泰愚、金泳三)は健在なため、二人の早死(?)について街には「平壌もうでの祟り」という声がある。業績としての評価がいまいちということを含め、だから南北首脳会談は危ういプロジェクトなのだ。

 対北関係で「断固とした姿勢」を維持してきた李明博大統領だが、政権末期を迎えやはり「南北首脳会談ありや、なしや」が話題になっている。南北関係が冷却・膠着状態だけに、打開策として秘密接触説がよくささやかれている。

 しかし李大統領および青瓦台当局は「北に門戸は開いている。いつでもやる気はある。しかし会談のための会談はやらない」と繰り返している。つまり過去の首脳会談のように、こちらが頭を下げ、モノ・カネを出して「会談をやっていただく」式の、イベント風会談はやりたくないというわけだ。

 李明博大統領には、大統領になる前のソウル市長時代だが北朝鮮との付き合いでいくつかのエピソードがある。

 金大中政権の末期の2002年、北朝鮮の経済使節団がソウルにきた時のことだ。晩餐会の席に李明博氏も招かれた。その席でメイン・テーブルにいた北の団長から、李氏に会いたいと伝言があった。李氏が韓国経済の高度成長を実現した経営者出身と知っていたからだ。

 しかし李氏は「会いたい方がやってくるべきで自分がわざわざ立って行くことはない」と断わったというのだ。

 さらにソウル市長の在任末期の2006年(盧武鉉政権時代)、北朝鮮から招請状がきた。「それなりの知事や市長はみんな一度は平壌を訪れている。ソウル市長も任期中にぜひきてはどうか」という。しかし李氏は「訪問料(手土産)は出さない」「陸路で出かけたい」「金正日総書記との会談」を条件にしたため、訪問は実現しなかったという。

 つまり李明博大統領の北朝鮮観は「困っているのは北であって南ではない。なぜわれわれが頭を下げ会談を請う必要があるのか」というものだ。

 そこには北に対する経済的な絶対優位を背景にした経済マインドが働いている。金正日総書記と会ったという名分やカタチ、象徴性にこだわる政治家の政治マインドとは違い、対北観はかなりドライというわけだ。

※SAPIO2011年5月25日号




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