国会の内部をえぐり出すノンフィクション

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(ホームページに書かれている文言について)「選挙に勝つためには、あそこは一番受けそうな、みんなが欲しいと思っていることを書くんです。党の情報だからね」(p48)
(若い人たちに向けて)「うん、自信持とうよ。楽観的に行こうよ、と思うよね」(p50)
「僕にとって大事なのは、僕が掲げるビジョンではなく、皆さんの生活であり皆さんの幸せであるはずだと思う。政治家がビジョンを掲げて突き進んでいくことが素晴らしいとは思っていない」(p53)
「座右の銘はお客様第一主義です。顧客である国民の皆さんに対して、ほかの政治家よりもよりよい生活を提供していくのが僕の責任です」(p56)

 これらは、気鋭のノンフィクション作家である中村安希さんが若手を中心とした政治家18人へのインタビューの中で彼らから引き出した発言の一節である。
 これらの発言をどう解釈し、受け止めるかは読み手次第だが、中村さんは「(こういう言葉が出てくるなんて)びっくりした」とインタビューで語っている。

 前作『インパラの朝』で開高健ノンフィクション賞を受賞した中村さんの最新作『Beフラット』(亜紀書房/刊)は前述の通り、政治家へのインタビューを通して現在の国会の内部をえぐり出すノンフィクションだ。
 「政治家にビジョンは要らない」という政治家もいれば、今の日本に対して厳しい言葉を投げかけ、新たな社会を築こうとする政治家もいる。中村さんは「特にバブル崩壊後に社会に出た世代とそれ以前に社会に出た世代では、温度差は相当あると思います。40歳以下の人の方が、『自分たちは崖っぷちにいる』ということを強く認識しています」とコメントする。

 中村さんは、本書の冒頭で、物心ついたときには経済成長が終わっていて、不況の時代しか知らず就職難や過労死といったことすら当たり前の現象として受け入れながら育ったと書いている。
 今の若い世代は、日本の経済成長を肌で体験したことがなく、様々な社会問題を背負いながら大人になった。さらに、福島第一原発の事故で「直ちに問題はない」というアナウンスが何度も政府から出されたが、この言葉は「いずれ問題が発生するかも知れない」という意味にも取れる。
 今起こっている様々な問題を引き継がなければいけない若い世代の政治家が、何を考えているのか、本書が暴き出した実態は極めて重要なことだろう。自分が政治とどのように関わっていくか、どう見守っていくか、考えるきっかけを与えてくれる一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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