『T京マンガ』座談会(1/5) 「本当にマンガを描いたことのない人たちが入学してるの?」

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【漫画座談会について】漫画に関係するゲストを迎えながらTwitterやメールなどを活用して座談会を不定期におこなってます。前回の漫画座談会はこちらからどうぞ。(企画:深水英一郎、編集サポート:古街、ニコラシカ)

●参加者
喜多野土竜:元編集者・漫画原作者
一色登希彦:漫画家。「日本沈没」「モーティヴ」「ダービージョッキー」等
スチームトム:新人漫画家。社会人生活を続けていたが、2010年に突如仕事を辞め独立。ゼロから漫画家の道をスタートしたばかり。この座談会の進行役
タマ:漫画家志望の学生
とと:漫画家志望の学生
岡本健三郎:原作者志望の大学院生(新人賞受賞歴有、博士後期課程)

●『T京マンガ』座談会

さて今回は、ちょっと前にネット上で話題になった『T京K芸大学マンガ学科一期生による大学四年間をマンガで棒に振る』(以下『T京マンガ』)について語り合おうということで、漫画家志望の学生さんからプロの漫画家さん、原作者さんなどにお集まりいただきました。
T京K芸大学の方やこの作者とお知り合いの方もいらっしゃるということで、興味深いお話をきけることと期待しております。よろしくお願いいたします。
質問1
この『T京マンガ』ですが、まず目に止まるのは、マンガ学科の生徒のほとんどがマンガなんて描いたことがないという奴らばかりだという部分。このあたりはどうなのでしょうか? 本当に大多数が誰もマンガ家を目指してないあるいはマンガを描いたことがない人ばかりという状況だったのでしょうか?


タマ:
知っている限りではありますが、入学当時、同学年の人で投稿あるいは持ち込みをしたことがあるという人は4〜5人、オリジナルのマンガを一本描きあげたことがあるという人は3割いるかいないかといった感じでした。
余談ですが二次創作を含めた同人活動をしている人もちらほら。

喜多野:
だいたいそんな感じですかね。実は自分もT京K芸大学マンガ学科に関しては、知り合いの編集に頼まれて、講義の補佐みたいなこともやったし、斉藤むねお先生に無理を言って、特別講義みたいなこともお願いしたんですが、生徒の反応のなさに少しガッカリしました。講義の内容は、ジャンプ・スクエアの『マンゼミ』でやってることをもっとかみ砕いて、実際に作例とか描いて見せたんですけど。ピンときてる生徒は一握り(20%ぐらい?)だったかも。

とと:
恐らく、学年ごとに差はあると思います。
しかしながら入学当初、描いたことある人や道具の使い方や原稿用紙の使い方をわかっているという人がいるかという問いかけに対して大半の人が原稿用紙の使い方がわからないと聞いてがく然としたのは覚えています。

喜多野:
本当に初心者レベルだなぁ(笑)。それではプロが見てもうなるような内容を教えたとしても、猫に小判は当然かもしれません。自分は専門学校にもお呼ばれして講義をしたことはけっこうありますが、やっぱり学生の意識は低い。というか、低いという自覚自体がないんじゃないか……と。とりあえずマンガは子どもの頃から読んでるし、小説とかと比較してスラスラ読める。簡単に読めるから描くのも簡単だろうと、無意識に思ってるんじゃないかと感じます。

とと:
マンガに関しては、完成原稿として描いた経験のある人間が少なかったような気がします。マンガ家になりたい、と思っている人が大半以上だったと思います。

喜多野:
いちおう、なりたい意識はあるんですね。でもそれは、やる気がない専門学校生とかも似たようなものかも。就職はしたくない、でも進学するほど勉強は好きじゃないし、もう少し親のスネをかじっていたい・気楽な身分でいたいから、とりあえず専門学校に入っておこう……という意識ではないかと。親も、家で就職もせずにブラブラされてるよりは、学校に行ってくれてたほうが安心感があるし、自分はマンガってよくわからないけれど、マンガ家というのは高額納税者番付の常連だったから、上手くすればもうかるんじゃないか……とか考えているんじゃないでしょうか。

スチームトム:
親の身としては「とりあえず」で進路選んでほしくないですけどね。

岡本:
自分はマンガ学科関係の人間ではないのですが「描いたことがない」人が多いということは、特に不思議だとは感じませんでした。いつマンガ家を目指し始めるかは人それぞれでしょうし、入学を契機に、と思う方も多いのではと思いますし。さすがに「目指していない」というのは作者の誇張表現で、そんなことはないと思うのですが……。

喜多野:
スタート自体は、そんなに問題ではないですよね。もちろん人それぞれですが、25歳でマンガ家志した人を知ってますけども、その人は27歳でデビューしています。今まで何十人かのデビューに関わってきましたが、志して3年以内がひとつデビューの目処かなと思います。むしろ、小学校の頃からズルズルとマンガ描いていて、道具とか技術コレクターになってしまい、肝心の作品がちっとも面白くないというタイプのほうが、怖いかなと思います。

スチームトム:
聞いておいてなんですが、目指している人が少ないからって「なんてヒドイ学科だ!?」とはなりませんよね。私も大阪芸術大学の映画の専攻でしたが、映画で食える人なんてそうそういないし、食えると信じている人自体が珍しかったです。マンガで食えるとは思ってなくともイラストレータなど、違う就職口が開けると学生達は思っているでしょうね。

喜多野:
おお、島本和彦先生や庵野秀明先生、自分が尊敬してやまない魔夜峰央先生を生んだ大阪芸術大学! でも、芸術系の大学は実態としてはそんなもんですよね。日本の美術系大学には油絵や日本画、彫塑の学科はたくさんありますが、でもそれで食えるプロになるのはほんの一握り。それは音大卒業者にしても同じなんですが……。

(つづく)




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