東電を救済するための政府による「ウソ?」

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昨日政府は関係閣僚会議で東電賠償の枠組みを決定した。関連する政府文書はこちらです。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/songaibaisho_110513_01.pdf

この内容がこれまで政府がおこなってきた説明を食い違っているようなきがしてならない。つまり、どこかに「ウソ」があるように思えてならない。

さきほど衆議院議員の河野太郎さんにご寄稿いただいた原稿( http://getnews.jp/archives/116201 )は「東電のウソ」について言及したものだったが、ここでは、政府の発言と文書の違い、つまり政府のついているウソはあるのかという点について考えてみたい。

東電賠償問題に関しては3つの大前提があるはずだ。


1.被災者の方への賠償を迅速かつ確実におこなう
2.電力供給を止めない
3.国民への負担を最も小さくするものであること

しかし、昨日政府が関係閣僚会合で決定した東電賠償の枠組みは

「東電の負担を最も小さくする」

ということを前提としてつくられたもの。国民の負担を小さくすることを大前提とされていない。これでは、東電とそれを取り巻く利害関係者しか得をしない。国民の利益を第一に考えるべきであるにもかかわらず、前提が間違っている。このような国民を置き去りとした案がすんなり通るわけがなく、紛糾は必至。その結果、賠償問題の最終的な枠組み決定がされに遅れてしまう可能性すらある。

そして政府は、この枠組案の問題点を隠すために、表立ってウソをつきはじめたように見える。菅総理は枝野官房長官は、以下のような発言をおこなっている。

・「東電の救済ではない」
・「電力料金は上げない」
・「国民負担にはならない」

本当だろうか。最初にあげた政府文書を読むと、その内容と表立っての説明に違いがあるように見える。この件について元官僚で「官僚のレトリック」という著書を持ち元通産省官僚であった原英史さんに話をきいてみた。政府文書「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する 政府の支援の枠組みについて」より引用

――政府文書と、表立っての説明を見てみると、食い違いがあるようにも見えるのですが。

原:「言っていること」と「正式決定に書いてあること」に違いがありますね。食い違いを見ていくと、6つのおかしな点があります。


1.「東電の救済」は明記されています
2.東電の賠償額には上限が設定されています
3.電力料金は上がります
4.国民負担は必ず生じます
5.株主と債権者の負担は求められていません
6.政府は責任を負いません

――たくさんありますね……かいつまんで質問させてください。まず「東電の救済ではない」と菅首相が話しているのをテレビ等で観ましたが、この部分も文書とは食い違っているのでしょうか。

原:「東電の救済ではない」と菅総理が話している様子はニュースでも繰り返し流れていましたね。でも政府文書をみるとこの言葉と全く逆だということがわかります。今回、損害賠償のために「機構」を設けることになりました。そしてその機構が東電に対し「上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない」と書いてあります。

――手厚い援助ですね。

原:これはつまり、「東電を救済」するということなんです。

――気になるのは電気料金の件です。これだけの規模ですから、間違いなく電気料金に反映してくると思うのですが、枝野官房長官は「基本的に電力料金の値上げによらずに賠償の資金を出す」と述べ、そのための枠組みだということを強調しています。現実的な話なのでしょうか。

原:政府文書では、「電気料金を上げない」とはどこにも書いてありませんね。ここに書いてあるのは「負担金を事業コストから支払」ということです。

電力料金は、電気事業法19条で「コスト+適正利潤」と定められています。つまり負担金分コストが増せば、当然、電力料金は上がることになります。

――電気料金が上がる、という時点で国民負担は始まっているような気もしますが、枝野官房長官は、東電と関係者の努力で賠償額に相当する額を出すことができるとおっしゃっています。

原:つまり「国民負担はない」ということを言っているのですが、さきほどの政府文書上は、東電と関係者で頑張っても足りなければ国民負担になってしまいます。そもそも、東電と関係者の自助努力の範囲で収まるとは想定されていないです。

――それで済むのであれば、このような枠組はそもそも必要ありませんね。最後に、この問題で一番注目されている「株主と銀行の負担」についてですが政府文書上ではどうなっていますか。

原:この枠組決定後の会見で枝野官房長官は「債権放棄が一切ない場合はどうなるのか」と質問され、それでは「国民の理
解は到底得られない」としました。公的資金投入が投入されないという可能性を示唆したことになりますが、これも文書上は根拠がありません。この決定の前に政府は東電に6条件を示しました。その中に「利害関係者に協力を求めること」とありましたが、ここでも債権カットまでは言及していません。

――言っていることと実際の政府文書ってここまで違うものなのでしょうか

原:ここまで「総理や官房長官の発言」と「政府の正式決定」がかけ離れているものを、あまり見たことがありませんね。総理や官房長官は「東電の救済ではいけない」などの「思い」はあるのでしょうが、「思い」を政策に落とし込めていない。政治主導体制が確立できていないとこうなる、という典型みたいなものです。

――ありがとうございました

休み明けよりこの枠組みに関する議論が活発化し、場合によっては紛糾することだろうが、被災者の賠償、国民の負担、そして電力事業の将来がかかった話だ。しっかりと議論の行方を見守りたい。そして、おかしいと思う人はしっかりと声を上げて欲しい。

●参考リンク
東電賠償スキームに関する嘘(フォーサイト、有料誌)
http://www.fsight.jp/blog/10481

※写真:国会議事堂 the Capitol(japan) / puffyjet に「東電救済?―― この枠組で本当によいのか。」とのテキストを挿入させていただきました。

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