男性が育休をとらない事情

写真拡大

男性が育児休暇(育休)をとらない……。5月9日付の南日本新聞に掲載された「育休取得、男性3.4% 鹿児島労働局調べ」という記事によると、鹿児島労働局が県内の1744事業所を対象にして、「育児・介護休業」アンケート(回答は789社)をおこなった。その結果、育休を導入する企業は90%以上で、94.4%の女性が育休を取得・申請したのに対して、「男性は3.4%にとどまった」ことがあきらかになった。

同記事は、「鹿児島でも制度導入は進んでいるものの、『育休は女性のもの』との意識が強い実態が浮き彫りになった。その意識改革に取り組もうと、従業員への取得を、ほぼ義務づける県内企業も出てきている」とつづく。1980年以降、共働きの家庭は増えている(『男女共同参画白書 平成22年版』)。ならば、家事や育児を男性がおこなう機会も増えて当然なのではないか……。

育休の実態は、そのように単純な構図の話ではないようだ。2009年10月に内閣府がおこなった「男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、「『夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである』という考え方について、全体では賛成が41.3%、反対が55.1%、性別では賛成の割合は男性で、反対の割合は女性で、それぞれ高くなっている」のだという。つまり、男性は、妻が専業主婦であることを望む傾向があり、女性は、自身が外で働くことを望む傾向がある、ということだ。

同白書では、「こうした考え方は,時代とともに変わりつつあるもののいまだ根強く残っているため,固定的性別役割分担意識を解消し,男女共同参画社会に対する認識を深め,定着させるための広報・啓発活動を積極的に展開する必要がある」と提言している。たしかにそのとおりだが、子どもは親の背中を見て育つ。自分の両親に「固定的性別役割分担意識」が残っていたら、どれだけ地域社会や学校、企業などで広報・啓発をしたとしても、その子どもの意識には親の影響が残る。

男性の育休取得をはばむ原因は、「固定的性別役割分担意識」のほかにもある。『ライフデザインレポート』(第一生命経済研究所、2006年11-12月号)の松田茂樹「男性の育児休業取得はなぜ進まないか」という論考は、「現行制度が日本の男性およびその家庭のニーズに合っていない」ことがその最大の理由だと分析する。そして、ニーズに合った制度の変更を、以下のように提案している。

第1に、妻が育休中でも夫が育休をとれるようにすること。第2に、短期で複数の育休が取得できるようにすること。第3に、育休の申し出を、現行の1か月前ではなく、1週間前にすること。第4に、育休中の賃金がしっかりと保障されること。たしかに、これらの制度が整備されれば、男性が育休を取りやすくなる“環境”にはなる。とはいえ、制度の整備に先立つ問題として、やはり“根強く”残る“意識”の改革が必要となろう。

とりわけ、「結婚したら、妻は専業主婦」という固定観念を持たず、女性の社会進出を認め、後押しするとともに、夫婦で子育てをしようと考えるような「柔軟な思考の男性」が増えてこそ、そういった制度改革も活きてくるのではないか。一方で、20歳代の若い女性については、「妻が家庭を守る」という意識が強いという調査結果が出ており(同白書、2010年版)、男性の育休取得への道には、今後も多くの波乱が予想される。

(谷川 茂)




■関連記事
なぜ今頃発表? 「母乳」の放射性物質濃度調査について厚労省にきいてみた
【第7回】子どもがどうしても欲しい私と欲しくない彼 他の人を探したほうがいい?〜占い師ニコラシカの『お悩み相談』
今読んでおきたい漫画! 親子ではない二人の親子愛『うさぎドロップ』
“話を聞かない夫”に“話”を聞いてもらうのに大事な5つのこと
「休日くらいはゆっくりさせろ」とぼやくKYな世の中のパパさんたちへ