ちょうど1年前、少々興奮気味で紹介した時代小説があった。永福一成『竹光侍』である。松本大洋の人気コミック『竹光侍』の原作であることを読み終わって知ったのだが、昨年、コミックのほうは8巻で完結した。
 そしていよいよ小説『竹光侍』も4巻で終わる。冒頭の殺戮シーンから一転して、江戸の浪人暮らし。最初は江戸のどの時代かもよくわからず、浮世離れした瀬能宗一郎であったが、巻を追うごとに骨格が浮かび上がり、時代背景が明確になってくると、かなりの時代小説通でも唸らされる細かいディテールに圧倒される。終生のライバル、木久地真之介との戦いは息をするのも忘れるくらいだし、愛すべき人たちが殺されると、胸をかきむしられるように苦しい。
 実は、小説を読み終わるまでコミックには手を出さないでいた。評判があまりにいいので、ちょっと怖かったこともある。しかし小説を読み終えて我慢できずに大人買い。一気に読んで安心した。もちろん傑作なのは間違いないが、小説とは別のものだ。動物や子供の可愛らしさは当然ながら絵のほうがいいけれど、女の色気は小説の勝ち。どちらも甲乙付けがたい力作である。
 元々は発表するつもりのないマンガ原作を粘り強く小説の形に整えた編集者にも拍手。痛快で読み応えがあるチャンバラ小説の完成をお祝いしたい。

(東えりか)







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