テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より


久々にニュースから。

4月も過ぎ、新社会人の皆さんも新しい環境でがんばっておられることと思います。

そんな皆さんに、僭越ながら人生の先輩として一つ「僕が失敗から学んだこと」についてお話をさせていただければ幸いです。

「失敗談」というとそりゃあもう山のようにあるのですが、中でも一つ挙げろと言われたら……僕は小学生のときのとある出来事を思い出さずにはいられません。

今回はそんなノスタルジックなお話をしていこうかと思います。

今はもう引っ越してしまったのですが、当時のうちの実家は山深い地域にある2階建てで、2階が住居、1階が農具などを置いている倉庫になっていました。さらにすぐ隣には祖父母が住む母屋があり、子どもたちの面倒を祖父母が見てくれることもあってか、父母は安心して共働きができていました。

ある日のことです。小学校が早めに終わった僕は、自宅に帰り、本を読んでいました。父母は仕事で弟妹はまだ学校。家には誰もおらず、一人でゆっくりと落ち着いた時間を過ごしていたのです。

そうこうしているうちに、外の空気が吸いたくなった僕は、2階からベランダに出ました。空には初夏の爽やかな青空が広がり、かすかにミーンミンミンという蝉の声が聞こえてきます。「ぼくの夏休み」というゲームをやったことがある方は、あの光景を想像していただければだいたい間違いないかと思います。自然に囲まれた小さな町――それが僕のふるさとでした。

さて、そんな田舎の空気を目一杯吸い込み、深呼吸した僕の目に、ふとあるものが飛び込んできました。

それは、ベランダに取り付けられた柵でした。

鉄骨製で何の変哲もない柵――僕が生まれたときからそこにあり、特に存在を意識したこともなかったその柵が、なぜだか妙に気になってきたのです。

そして僕の中から、ふつふつと激しい欲求が沸き上がってきました。

まだ小学生だった僕は、自分の中からそんな気持ちが出てきたことに戸惑いました。しかし、その欲求はどんどんと強くなり、僕の中で大きさを増してきたのです。


――柵。


僕は柵を見つめました。僕の背丈より少し低い手すりから、数十センチ間隔で下に伸びた白くなまめかしい鉄棒が僕を誘っているような気がしました。


――あの柵の――。


僕はその欲求に逆らうことができませんでした。ふらふらと柵に近寄った僕は、その欲求を実行に移すことにしたのです。


――あの柵の間に、頭を入れてみたい!


……なんというか、小学生ならではの意味の分からない短絡的な発想というか、強いて言うなら子どもの好奇心ってどこに向けられるかわからないというか。

家に誰もいないのをいいことに、僕はその柵の間に頭を突っ込んでみることにしたのです。

たぶんこれが、自分の頭よりもはるかに大きな隙間だったら、あるいはどう考えても入らないくらいに狭かったら、僕はそんなことを考えなかったと思うのです。

しかしその柵は、頭が入るか入らないかというギリギリの幅でした。それゆえに「果たして頭は入るのか?」という思いに僕は取り憑かれてしまいました。

鉄棒部分を両手で持ち、ゆっくりと頭を隙間に入れていきます。心配していた額部分はわりにあっさりと隙間を通り、僕は安心しました。頭蓋骨に伸縮性はないので、ここが入らなければ終わりだったからです。

そのままゆっくりと柵の向こう側へと頭を突き出していく僕――と、鉄棒部分に耳が触れました。どうやら隙間の幅は、耳の幅ギリギリくらいの大きさだったようです。

しかし耳は肌にペタンとつけてたたむことができるので、それほど問題はありません。鉄棒を耳の上に滑らせるようにして、僕はそのまま頭を前に進めました。

そして、ついに頭が全部柵の向こう側へと出たのです。

「やった!」

思わず声に出して叫びそうになりました。僕はやった、やり遂げたんだ。

今思うと単なるアホの極みですが、当時の僕はよくわからない達成感に打ち震えていました。

よし、戻ろう。

満足した僕は、頭を柵から引き抜こうとしました。

……が、なぜか途中でガツンと耳が鉄棒に引っかかって抜けないのです。

(えっ……?)

おかしい。僕は焦りました。だって入ったものが出ないはずはないじゃないですか。入れたら出る。出ないものはそもそも入らない。それが世の中の真理ってやつなんじゃないの?

しかし、現に頭はまったく抜けません。いくら抜こうとしても、耳が柵を通らないのです。

そのうち耳がヒリヒリしてきました。僕はさらに焦ってきました。なぜなら、僕が今頭を出している真下には道路があり、そこは小学生たちの通学路になっていたからです。

もし、もしも、僕のこの姿を見られたりしたら、どうなる?

学校からの帰り道、ふと上を見上げると、そこにはベランダの柵の隙間から顔を出し、動けなくなっている小学生の姿――。

いやもう、間違いなく笑いものじゃん! 明日からしばらく学校行けないじゃん! 小学校なんて学校のトイレでうんこするだけで噂になるような場所ですよ。そこへきて柵に頭突っ込んで抜けなくなったとか、シャレにならないだろ。絶対一生言い続けられるよ。「頭デカマン」とかいうあだ名つけられるよ!

いかん、これはいかん。絶対に誰かが通る前に頭を引き抜かなければ。ますます焦り、脱出を試みる僕でしたが、しかしやはり頭は抜けません。なんだよ、どうなってるんだよ、この超常現象……。

そしてふと、気づいたのです。

皆さんも耳の構造を手で触って確認してほしいのですが、耳というのは、通常顔に接続されている部分から、後ろ斜め方向に向かって伸びていますよね。

そして、そのまま後ろへ向かってペタンと折りたたむのは簡単ですが、逆方向、いわゆる「ギョーザ耳」の形に折りたたむのは意外と弾力があって力が必要なのです。

そう、頭を入れるときは耳を滑らせるようにしてギリギリ鉄棒が入ったのですが、抜くときは逆方向になってしまうため、付け根のところで引っかかってそれ以上動かない状態になってしまっていたのです。

まさかのトラップ――!

それに気づいた瞬間、僕は悟りました。


あ、これ、自力で抜け出すの無理だわ。


――と。


そして僕は、母屋に届くようにあらん限りの声を絞って叫びました。


「おじーーーーちゃーーーーん!!!」


……それから30分後、かけつけた祖父によって柵から頭を引っこ抜かれた僕は、しこたま怒られたのでありました。


僕はこの経験以来、二度と柵に頭を突っ込むことはありませんでした。


つまり何が言いたいのかというと、


・「絶対に大丈夫」と思っていても予想外の事態は必ず起こりうるということ

・ギリギリの勝負をするときは必ず誰かに相談してみるべきだということ

・そしてやってしまったら手遅れになる前に必ず助けを求めるということ


――そういったことを、仕事におかれましてもゆめゆめお忘れにならぬよう、新社会人となった皆々様方に伝えたかったのであります。






あ、あと一つ付け加えるなら、会社で手頃な隙間を見つけても、頭は突っ込まない方がいいと思います。
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この記事の元ブログ: 新社会人に伝えたい、僕が失敗から学んだ3つのこと


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