もう一人でするのは嫌だ! セックスレス夫婦の悲哀を描く『ミッドナイト』

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 セックスレスの夫婦が急増している。日本家族計画協会が行った「男女の生活と意識に関する調査」によると、直近の1カ月間、性交渉をしていない有配偶者の割合は40.8%(2010年)と過去最高。10年前と比べ、10%以上増加している。また、1年間にわたり性交渉をしていない夫婦は24.9%、全体の4分の1の夫婦が深刻なセックスレスにある。独身者でも、日本人の年間性交回数は平均48回と世界最低水準だ。

 夫が性欲を催さないケース、妻が拒むケースと、事情は夫婦によりさまざま。『ミッドナイト』(リトルモア)は、セックスに消極的な妻を横目にセンズリをかく男の悲哀を描いた小説だ。電子書店「パピレス」などで小説を発表している福島幸治氏の、初の単行本となる。マンガ『鈴木先生』(双葉社)の武富健治氏が描いた迫力ある装画が目を引く。

 "俺"33歳、"嫁"28歳。結婚して半年がたち、性交するペースは多くて月2回ほどにまで落ち込んでいた。"俺"は嫁の身体を求めるが、嫁は「疲れた」となかなか応じてくれない。揚げ句「一人でして」と言い放たれる始末で、"俺"の性欲は我慢の限界に達している。「一人でするのはもう耐えられないんだよ〜!」。嫁が関西の実家に帰った夜、とうとう"俺"はデリヘル嬢を呼ぶに至る。哀しい三十代男の性の探求はどんどん深みにハマっていき......。

 主人公はうだつの上がらないダメリーマンであるが、性に対しては切実である。嫁に金を払ってフェラチオを要求し、土下座して「やらせてください!」と懇願する。その真剣な姿は滑稽であり、行動すべてがことごとく空回りするさまは、妻帯者なのにどこか童貞くさい。大事なのは年齢でも、婚姻経験でもない。現代における夫婦の関係性を問い直す風俗小説であり、アラサー男が童貞膜を破り、ひとつ上の男へとステップアップするビルドゥングス・ロマン(成長物語)だと言える。この『ミッドナイト』読後は、恋人の、伴侶の寝顔も一段といとしく思えるのではないだろうか。
(文=平野遼)

・ふくしま・こうじ
1975年京都府生まれ。高校卒業後、劇団、お笑い活動を経て、上京する。アルバイトの傍ら小説を執筆。電子書店「パピレス」(http://www.papy.co.jp/)で連作短編『出会いロール』を読むことができる。本書は書き下ろしで、単行本デビュー作。



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