芥川賞作家が団塊の世代にアドバイス

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 どんな人でも、何かしらの悩みを抱えながら、日々を過ごしていることと思います。
 悩みというものは、年齢とともに移り変わり、質も変化します。そして、年を重ねていくと、年齢に関わる不安や、悩みが増えてくるのではないでしょうか。

 『哲学で解くニッポンの難問』(講談社/刊)は、団塊世代や、初老にさしかかる年代の方を対象に、定年退職後に遭遇する老人問題や、夫婦関係の問題などを取り上げて、助言を与えてくれる一冊です。著者の三田誠広さんは武蔵野大学教授で日本文藝家協会副理事。1977年に『僕って何』で第77回芥川賞を受賞しています。
 本書では、定年退職を向かえる方、すでに向かえた方々に向けて、多くの人が直面する問題に対して哲学を通じたアドバイスをしてくれます。

 哲学を通じた、といっても不要に難しい言い回しをしていたりはしません。三田さんのアドバイスは、非常に痛快で、本質を突いた回答が心地よくもあります。
 また、取りあげられている悩みや問題は、ごく日常に根ざしたものです。その一例をご紹介しましょう。


Q、定年後はのんびりしたいのに、妻の目にきびしさを感じます。(63歳 退職者)

A、夫が冴えない毎日を送っている……妻はこのことに絶望するのです。

 老後というものを考える上で基本的な問題です。
 「テレビの前でごろごろ」「パジャマでうろうろ」はなぜ嫌われるのか?

 夫婦関係の基本は、信頼と尊敬です。
 あなたの奥様は、あなたのことを信頼し尊敬していただろうと思います。
 しかしそれは、あなたが会社に勤め、それなりの社会的地位を有していたからでしょう。

 「ご主人は何をしていらっしゃるのですか?」
 そんな話題になったとき、今までなら、そこそこの企業名と、部長や課長だとか役職を告げることが、奥さまにとって、誇らしい瞬間だったのではないでしょうか?

 ところが今は、「テレビの前でごろごろしてます」とか、「朝起きてパジャマのままでうろうろしています」といったことを言うこともできず、答えに窮していらっしゃることでしょう。

 必要なのは、自分なりの存在意義を持つことです。自宅にいて、テレビの前でごろごろしているのはただの粗大ごみであり、産業廃棄物と言われても仕方ないのです。

 難しいことではありません。やりたいことをやって、元気に活動すればいいだけです。
 そうすれば奥さんの心は救われ、あなたに優しく接してくれるのです。



 回答例を聞いて、「どこが哲学なんだ?」と思ったかもしれませんが、この本が指す「哲学」とは、ソクラテスやプラトンといった、議論も難解な「フィロソフィ」ではなく、もっと身近で生活感のある問題を、「根底まで掘り下げて考え、的確な答えを引き出す」という実用的なものです。
 三田さんのアドバイスも、問題の本質をシンプルに捉えて、理解しやすいように構成されています。

 「この本は、一種のエンターテイメントになりうる」つもりで書かれたそうなので、真面目なことも扱いつつも、非常に面白く仕上がっています。
 冗談も含んで、ウィットに富んだ回答も見所のひとつです。
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