■ J2再開 

J2もリーグ戦が再開。ファジアーノ岡山との開幕戦に5対0と圧勝した湘南ベルマーレが、コンサドーレ札幌と対戦。札幌は開幕節はアウェーで愛媛FCと対戦して0対2で完敗を喫した。ホームの開幕戦で立て直しといきたい。

ホームの札幌は<4-2-3-1>。GK李昊乗。DF高木、山下、河合、岩沼。MF芳賀、宮澤、古田、アンドレジーニョ、近藤。FW三上。MF近藤が左サイドで先発。ユース出身のFW三上の1トップ。2列目には、MF古田、MFアンドレジーニョ、MF近藤が並ぶ。セレッソ大阪から加入のDF山下は前日に入籍したばかり。開幕戦に続いて2試合連続スタメンとなった。43歳のFW中山もベンチ入り。

対するアウェーの湘南は<4-2-3-1>。GK西部。DF鎌田、大井、遠藤、石神。MFハン・グギョン、永木、坂本、アジエル、菊池。FW佐々木。2010年のアジア大会の日本代表であるDF鎌田が右サイドバックでスタメン。名古屋から加入FW巻は怪我のためベンチスタートで、FW佐々木の1トップ。FW佐々木は開幕戦で2ゴールを決めている。

■ MF坂本が決勝ゴール

前半からアウェーの湘南ペースで進む。湘南はMFアジエル、MF菊池を起点にした細かいパス回しで相手を崩していく。対する札幌も、FW三上が前線で頑張ってボールをキープし、MFアンドレジーニョらが絡んでくるとチャンスになるが、厚みのある攻撃はできず。前半は0対0で終了するも、湘南優勢で折り返す。

後半になると、湘南も疲れが見え始めて停滞するが、後半23分にMF永木とのワンツーで右サイドの裏に抜け出たFW佐々木が中央にクロス。これをMF坂本がヘディングで決めてようやく先制に成功する。札幌も、MFブルーノ、FW横野を投入し、最後まで攻め込むが、あと一歩、届かず。結局、1対0で湘南が勝利。開幕2連勝となった。対する札幌は2連敗スタートとなった。

■ 湘南は連勝スタート

快勝スタートの後、インターバルがあって、どうなるかと思った湘南だったが、中断期間にいいトレーニングができていたようで、攻守ともに申し分ない内容で勝利を飾った。シュート数は札幌が8本だったのに対して、湘南は16本。ミドルシュートも多かったが、積極的にゴールを狙って、試合の主導権を握り続けた。

2010年のJ1ではわずかに3勝のみでJ2降格となった湘南であるが、メンバーも大きく変わって、新しいスタートを切っている。MF永木、DF遠藤、MFハン・グギョンといった経験の少ない選手が多いのは不安材料ではあるが、若さを前面に押し出した面白いサッカーを見せている。中心となるのはMFアジエルで、彼が戻ってきたのは大きいが、MFアジエルの周りでプレーするMF菊池、MF永木のパフォーマンスも高く、MFアジエル頼みというわけでもない。

J1に昇格した2009年シーズンは、MF坂本、MF寺川、MF田村の中盤で固定されており、MF寺川とMF坂本がフルシーズン頑張って昇格を手にしたが、22歳のMF永木、20歳のMF菊池、21歳のMFハン・グギョンの若手トリオの運動量とアグレッシブさを前面に押し出したサッカーで、反町監督が好みそうなスタイルに様変わりしている。ブンデスリーガで首位を独走するドルトムントにも似たスタイルで、「若さ」と「運動量」というキーファクターをうまく組み込んできている。

■ MF菊池が大活躍

中でも、光ったのがMF菊池大介で、積極的にミドルシュートを放っていって、一人だけで、シュート数が6本あるいは7本を超える勢いで、左サイドを起点に素晴らしいプレーを見せた。昨年10月のU-19アジア選手権にも出場しているが、この時期から急激に伸びてきており、レンタルバックした湘南でも、がっちりとポジションをつかんでいる。

MF菊池は20歳であるが、高校1年生からトップチームで出場しているので、2種登録の時期を含めるとプロで5年目となる。当初は、テクニックを売りにするテクニシャンタイプで、「運動量」や「守備意識」といった部分で課題は多かったが、ザスパ草津での修業期間を経て、目覚ましく進歩している。チャンスがありながらも、「ゴール」という結果を残せなかった点だけがマイナスだが、何年か前の頃と比べると、びっくりするような成長である。

■ 中盤を落ち着かせた永木

湘南ではボランチのMF永木も好プレーを見せた。大卒ルーキーとはいえ、特別指定選手だった昨シーズンも、スタメン出場していた時期もあったので「新人」という風には感じないが、正式にプロになって、落ち着いたプレーを見せている。決勝ゴールにも絡んだが、苦しい状況でも前を向いてパスをさばけるのが魅力である。

ボランチでコンビを組んだMFハン・グギョンとのバランスもよくて、MF永木が攻撃に参加しても、ほとんど守備体系が崩れそうな雰囲気はなかった。開幕戦では、MFハン・グギョンが欠場したため、MF永木の1ボランチとなったが、ダブルボランチの方が、やはりMF永木の良さは生きる。

■ 佐々木はアシスト

決勝ゴールをアシストしたものの、1トップに入ったFW佐々木はやや物足りない出来だった。鹿島から加入して、開幕戦では2ゴールを挙げたが、2トップから1トップになって、プレーが整理されていなかった印象で、効果的に攻撃に絡めなかった。

FW巻が戻ってきたときに、1トップのままなのか、2トップにするのかが気になるところであるが、反町監督であれば、相手によってうまく使い分けてくるのではないだろうか。FW佐々木が1トップタイプではないので、どのように使い分けていくのかは、楽しみなところである。

■ ホーム開幕戦を飾れず

対する札幌は、試合の終盤に決定機を作ったが、追いつくことは出来ずに連敗スタートとなった。ただ、試合内容は開幕戦の愛媛FC戦と比べると、はるかに良くなっており、DF山下、DF河合のセンターバックコンビも、落ち着いた守備を見せた。

特に、開幕戦は散々なプレーに終始したDF山下に目途が立ったのは収穫で、湘南の1トップのFW佐々木と対峙することが多かったが、しっかりとつぶしていて、及第点以上のパフォーマンスだったといえる。経験の浅い選手なので、この試合を自信にして、飛躍してほしいところである。

■ MFアンドレジーニョは不発

愛媛FC戦は出場しなかった新外国人のMFアンドレジーニョがデビュー。トップ下に近い位置でプレーした。「持ちすぎ」と指摘されることが多いが、この試合は、球離れも悪くはなく、惜しいシュートもあって、まずまずのデビュー戦となった。

MFアンドレジーニョを獲得したときに、真っ先に気になったのは、同じように小柄でレフティであるMF古田とどう共存できるのかという点であり、MF古田も右サイドでスタメンだったので初共演となったが、それほど持ち味を殺すわけでもなく、無難なものだった。

ただ、今シーズンの札幌は<4-2-3-1>で行くのであれば、MF古田とMFアンドレジーニョがどう共鳴していくかが大事で、「持ち味を殺さない。」というレベルでは都合が悪い。今後は、もっと、二人が近くでプレーして、共鳴し合うくらいにしていかないと、上位進出は見えてこない。

■ 三上は1トップで奮闘

昨シーズンは、2種登録ながら10試合で3ゴールを挙げたFW三上は、晴れてトップチームに昇格して、今シーズン初出場。1トップでスタメン出場したが、悪くないプレーだった。後半になって動きが落ちて絡めなくなったが、前半はうまく前線で起点になっていて、及第点といえる内容だった。

石崎監督率いる札幌にとって、1トップの人選は苦労しており、FWキリノ、FW内村、FW近藤といった選手が起用されてきたが、与えられる役割が多いこともあって、ぴったりとハマる人材が見つからずに苦労している。

「それならば、素直に2トップに変更すればいいのでは?」という気もするが、石崎監督は1トップにこだわっており、1トップができる人材を探し求めているが、FW三上という選手も、体が張れて、キープも出来て、一人でドリブルで進むこともできるので、有力候補の一人ではある。


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