ニコミュ『ココロ』石沢克宜インタビュー「機械は自分の友達になる」

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4月29日より、ニコニコミュージカル(通称:ニコミュ)の第4弾『ココロ』が上演される。 この作品はトラボルタさんにより作られたオリジナル曲『ココロ』を舞台化したもので、2009年に水戸市芸術祭、2010年には新宿シアターサンモールにて上演され好評を博した。 今回はその『ココロ』の脚本・演出を手がけた石沢克宜さんにインタビューを行い、その人となりを聞いた。

−まずは石沢さんの略歴を教えて下さい。
演劇もやっていたんですけれど、元々PC系のライターをやっていまして。 最初のころは雑誌のムックとか、紹介本などをやっていました。 96年、97年のWindowsの黎明期頃の話です。 で、その頃って某レコード会社にいたんですよ、3年くらい。 そこでゲームの製作と広報をやっていて、ライターも仕事もちょこちょこやってて、っていう生活をしてましたよ。

−もともと編集マンになりたかった?
もともとは、……なんですかね。 でもライターの仕事は楽しかったですね。 演劇はですね、水戸市芸術祭演劇フェスティバルっていうのがありまして、今年は地震で中止になっちゃったんですけど、年に一回くらいそのイベントで色々と携わっていたんです。そのときに寺門(『ココロ』に出演している寺門文人さん)とかにも役者で出てもらっていて。 彼は彼で東京で細かい劇団の活動をやっていたんですけど、その時は「一ヶ月来てくれ」って水戸に呼び戻したんです。 そんな感じでやっていましたね。 その企画の1つとして『ココロ』の舞台をやったんですが、そのあとに水戸のコミケの一環として『ペテン師』(『ココロ』と同じくニコニコ動画の有名曲『ペテン師が笑う頃に』のこと)を実験的に上演してみました。 ちっちゃいギャラリーみたいなスペースだったんですけど、広い階段がありまして、そこを舞台に上演したんです。

−色々とやっているんですね。
時間軸的には、某レコード会社に入る前後で水戸の芸術祭に関わり始めて、サラリーマンをやりながら年一回舞台をやって、その時にちょうど寺門(文人)が出たりとかしてて。 で、
会社を辞めたのが98年くらいなんですけど、その間もライターとかしていましたね。 そこから2000年までは水戸の活動をガッツリやっていました。 その後からは映像編集の仕事もチョコチョコやっていまして……。 なんなんですかね、わかり難いですね(笑)

−今はどんな感じなのでしょうか。
今は幸いニコミュをやらせて頂いたりしているので、"脚本を書いて演出をする人"として、今年一杯は頑張っていこうかなと思っています。

石沢克宜さん2
−先ほど、お名前も出ました、寺門さんとの出会いは?
寺門が高校生の頃ですよ。彼は高校の後輩で演劇部をやろうとして、どうやっていいか分からず先生に聞いたところ「OBに水戸で芸術祭をやっているやつがいるからそっちいけ」と投げられまして、尋ねてきたので「じゃあ出ればいいじゃない」と。

−立ち位置としては演劇人?
あんま演劇人じゃないです(笑) どっちかっていうとそっちからは「違うんじゃないの?」と扱われる。 相手にされない(笑) あと映像もちょこちょこやっていたり。 あれはたまたま暇な人がいっぱいいたんで。

−映像を使った演出があるのも、映像の下地があるからですか?
そうですね。でも最近の演劇も映像を使っていたりもしていますよね。 ただ東方(ニコミュ第2弾『ニコニコ東方見聞録』)の時は映像を作って映写するチームと現地で中継するチームとニコ動で(生放送を)送り出すチームと3つチームがあって、結構大変でしたよ。 さすがにそこまでは(他の芝居では)ないんじゃないかな、と。 普通の演劇でも中継とかは入るでしょうけれど、中継チームに劇中のぽこたさんとかが客席へ入ってくるのをハンディで追うとかもやってもらっちゃったり……。 そう考えると、中継チームじゃない仕事もやってもらってるなぁ。

−今回もそういう仕組みは?
考えたんですけどね、元々既にストレートプレイとして上演しているので差し込みにくいかな、と。 オープニングムービーは前回もやっていたんですけど、今のところはそのくらい……。 あと実現するか分からないんですけど、劇場中継って客席側にカメラを設置するじゃないですか。 それプラス、ステージ上にCCDとかであっちこっちにカメラを仕掛けて、例えば後ろ側から客席に向けた映像とか、あと役者が後ろ向いたときにその映像を拾ったり、そういう切り替え方とかはニコ動ならではかな、と。

−『ニコニコ東方見聞録』では、百花繚乱さんが舞台上で生放送をしていましたね。
あれは私的にも感動でしたね。 初めての試みだったので。 舞台側から見る画ってなかなか見る機会がないじゃないですか。 なので、あれは今回の『ココロ』でもちょっとやりたいですね。休憩時間にちょっと繚乱になんかやってもらおうかな(笑) ただ、これは決定じゃないので、やれればOKですし、やれなかったら「ああできなかったな」と思って下さい(笑)

−演劇の世界は型を破ろうとする反面、「こうあるべき」という主張もありますよね。 こういった演出はアリなんでしょうか。
それは人によるんじゃないですかね。 あんまり…(少し考え込んで)言いにくいなぁ(笑) どうなんでしょうね。 そういう演劇事情に明るくないんですけど……、でも、昔やった舞台が劇作家協会の新人賞の最終選考に残ったことがありまして。 (最終選考で)劇作家の偉い人たちが審査をするんですよ。 その審査が公開で、紀伊国屋ホールかなんかで客席から見えるんですよ、そのやいのやいの言っているのが。その時に丁度書いた作品が「ウルトラ警備隊」という基地の話でして。 それを「SFだ」って理由だけで相当叩かれましたからね。

−それだけの理由で?
それだけですよ。 「SFは嫌いだ」って言う人もいるし、なんか分けわかんないとか言われて。 ウルトラマンとかセブンとかあの辺の知識の下地が全くない方たちが多かったので多分そういうこともあるんだろうと思うんですけど。 でも、演劇とはこうあるべきだと思っている人達もいるだろうし、そこに入り込めない作品っていうのは駄目っていうのは多少あるのかなって気はしますね。 ……直接被害をこうむったのでちょっと恨み言をね(笑)

石沢克宜さん3
−石沢さんは、どこまで演劇としてやっていいと思っていますか?
やれる限り。 劇場がやめてくれって言ったりとか、そういう色んな理由でやめてくれって言われること以外はやってみたいですね。

−タブー視するものはありますか?
ないです、下ネタをやらないくらいですかね。 (下ネタは)嫌いじゃないですけど、個人的に下ネタは大好きなんで下ネタを封じることでなんかやろうっていうルールを。 おっぱいくらいはいいと思うんですけど(笑) 笑いを取る時に自分を縛るってことをやっておかないと、自分に際限が無くなってしまうので……。 いや、下ネタを否定しているのではなくて、自分がそっちに行っちゃうとダメになってしまう気がするので。

−石沢さんが作りたい作品っていうのはどういったものですか? 完全オリジナルの作品なども?
機会があれば完全オリジナルもやりますよ、基本はコメディーですね。

−影響を受けたものなどはありますか?
映画が多いかもしれません。 例えばエディ・マーフィー出演の一連作。 あとはモンティ・パイソンなどのイギリスのダーク目なブラックな感じの作品。

−衝撃を受けた作品はありますか?
『マルサの女』(監督:伊丹十三)。 あれは高校くらいの作品でしたけど、ショッキングでした。 リアリティのレベルっていうか。 漫画っぽかったり、リアルだったりってバランスが物凄く絶妙だな、と。 誇張されるところは誇張されてリアルなところはリアルで、嘘の吐き方が凄いな、と。 脱税とか国税局なんていう今までスポットの当たらないものを扱ったのも新鮮でした。

−かなりのニコ厨とお見受けしたんですが、何故ニコニコに手を出したんですか?
ニコニコって見ちゃいますよね(笑) 元々『2ちゃんねる』のニュー速(ニュース速報板)で話題になっていましたよね、まだニコニコにIDがない時代ですよ。 なので最初の頃から出入りしていました。それでもID200万番台でしたからね、ニュー速民のプライドが邪魔をして(笑) そんな流れで色々と見ていました。

−『ココロ』がひっかかったのは?
初音ミクの発売日が8月31日でしたよね。メールを辿っていったら9月か10月くらいに、人にメールしているんですよ。 「初音ミクが面白いから見ろ」って(笑) その頃からボカロ曲を聴き始めていて、『ココロ』を知ったのは、……3月3日が投稿日だったと思うんですが、その2、3ヵ月後くらいだったと思います。 それで曲を聴いて、いい歌だなと。 ボーカロイドの曲が作られた最初って、「機械が歌う」ってコンセプトで作られるものが多かったんです。歌う機械、まぁ実際には機械じゃないですけど、具体的な形をもっていますから。機械が心を持つってテーマはSFにも昔からあるテーマですけど、そこにボーカロイドっていうものをあわせることで物語が、SFの新しい流れが作れるんじゃないかな、と。

−舞台化は大変でしたか?
誰かがやってくれるだろうと待っていたら、あんまりそんな話が聞こえてこなくって、じゃあ自分でやるか、と(笑) 例えば「歌う機械」とか女の子のロボットってモチーフをやるとしたら、これは『ココロ』って曲に筋を通さないと無理だな、って。 ボーカロイドを使う使わないに関わらず「歌うロボット」・「ロボットが心を持つ」ってSFは、このご時勢や、自分が興味を向いている方向を色々と考えると、『ココロ』という曲に背を向けた状態では作れないだろう、と。 これを駄目もとで(作曲者であるトラボルタさんに)舞台化について聞いてみたら「いいよ」と即答でした。 また、色んなとこに怒られるのも嫌だったのでクリプトン(クリプトン・フューチャー・メディア)さんに相談もしたりとか。 二次創作の範囲内で協力して頂きました。

−ファンの反応は如何でしたか?
会場が狭かったので、絶対数が少なくて、実際に見られる人数は700人くらいしかいなかったんですよ。 ただ、会場のアンケートの評判は良かったです。

−そこでニコミュプロデューサーの片岡さんも見た?
そうですね。 再演の時にに劇場に観に来てsくれまして。 それで終わった翌週にドワンゴさんに「来て」と。怖いですね。 もしかしたら怒られるんじゃないかな、と(笑) その時にニコミュの、主に『ニコニコ東方見聞録』の話になりました。 そこからの話は早かったですね。

−石沢さんにとってニコニコの魅力とは?
なんか……、こう、その時の波みたいなのがあるじゃないですか。 凄いエネルギーが集中するところっていうか。 それも色んなジャンルの人たちがニコ動を接点にして作っていますよね。 音楽やPVや、そのエネルギーが凄くて、なんとか仲間に入りたくて。 演劇ならやれるな、と。 最初、水戸の時も中継しようかなと思っていたんですが出来ませんでした。 その時はまだ確かニコ生で舞台を見せるのは出来なかったんですよ、30分刻みしかできなかったですし技術的にも人的資源もなくて。その時は諦めました。

−石沢さんの演劇で大事にされている部分、ここだけは自分の芝居において譲らないポイントはありますか?
ちょっとずれるかもしれませんけど、分かり易さは最優先で、自分の好きなこととか、やりたいことは、そこにちょこちょこはさんで織り交ぜていこうとは思っていますね。 物語の設計をするときに、セオリーを外さないようにして、最低限の骨格の設定は外さない。 それさえあれば細かいネタが分からなくても最後までたどり着けるっていう。 全部が分かる必要はないので、細かいセリフとか小ネタとかはいいんです。この前の『ニコニコ東方見聞録』は完全にニコ動ユーザー向けですから、そういうのをガシガシ入れて、ニコ動の層によって分かるネタも分からないネタも、それを全方位に向けてギュッと入れちゃえば、相対的にみんな楽しめるんじゃないかと。 土台はしっかり作って、その上で遊ぶとは心がけていますし、そうありたいと思っていますね。

−『ココロ』2011年版はどうなりますか?
あんまり変わってないです(笑) ネタはいじってますけど、あと『ニコニコ東方見聞録』で(ニコ動ネタを)大分やっちゃっていますんでネタがないんですよ(笑)

石沢克宜さん4
−『ココロ』の見所を教えて下さい。
うーん、たぶん、ほとんどの方が初めて見ると思うんですけど、セット・衣装なんかも見所です。 「機械に心を」っていう、SFではかなりよく見かけるテーマである分、楽曲という切り口でどこまで新鮮に見せられるか?っていう所も見所ですかね。 もうこのテーマはやられ尽くしていますから。『ココロ』は機械と人間の心・義体とゴーストみたいな、「機械に心を与える罪」をテーマにしていて、そういった点を加味してSFとして楽しんでいただければ。 この作品においては、「心はないのもアリなのでは」っていうことも言いたいんです。機械に心がなくても、あるように見えているじゃんっていう。 例えばパソコンに感情移入したりとか、本当に心があるように見えれば、それは心があるのと一緒で、それはこっち側の問題で機械に心が本当にあるのかどうかは関係ない。 この作品中のロボットは心を欲しがるんですけど、それを作った科学者は心がなくてもロボット・機械自体を愛することによって心があるのと同じだ、っていうのをこの作品で伝えたいんですよ。 私は、もともと機械が好きなんです。 小学生くらいの頃からPC8001とかでベーシックのプログラムを組んでいて。 その頃に「機械は自分の友達になる」と思って、今でもそのまま友達ですよ(笑)

−音楽に関しては如何でしょうか?
音楽は、前回非常に良い曲が多かったのでそれプラス、新曲もいくつか。 前回は音楽と台本が同時進行だったので(笑) 色んなギリギリのオーダーをトラボルタさんにしてしまったんですが、そういった部分を新たに作ってもらおうと考えています。

−他に何か言い残したことは?
うーん、、、色々あるんですよ……、色々あるんですけどまとまらない……。 地震で色んな娯楽が延期・中止になりましたが、公演はゴールデンウィークなので、そこで皆が楽しんでもらえれば。 『ココロ』のファンの皆さんとかボーカロイドのファンの皆さんの色んな思いに応えたいですよね、それだけはキッチリとやらせて頂きたいと思っています。

−ありがとうございました!

ニコミュ第4弾『ココロ』
Ill. by redjuice
(C)Crypton Future Media, Inc. www.crypton.net

ニコニコミュージカル 舞台劇『ココロ』公式サイト
http://info.nicovideo.jp/nicomu/kokoro/index.html

日程:
4月29日(金・祝)  19:00公演
4月30日(土)    18:00公演
5月01日(日)   12:00公演
5月03日(火・祝) 12:00公演
5月04日(水・祝) 12:00公演
5月05日(木・祝)  18:00公演
5月07日(土)    12:00公演
5月08日(日)    18:00公演

場所:
THEATRE1010(北千住)

料金:
リアルチケット 4500円
ネットチケット 1200ポイント
(ネットチケットはニコニコポイントで購入可能。1pt=1円)

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