震災後 企業CMはどんな表現・時期に流すべきか宣伝部長苦悩

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東日本大震災以後、各社はCMを自粛。テレビがACのCMだらけになったのは記憶に新しいところ。だが、企業活動をするにあたり、いつか復活はさせなくてはいけない。そのタイミングはいつであるべきか? そして、どんなCMでどんなメッセージを発信すべきか。現在各企業の宣伝部はこの点について苦慮している。

生活雑貨メーカーのエステーは震災後、ACのCMを経て過去に流したCMをオンエアし、そして4月下旬から新規のCMを流し始めるという。このCMは、過去に同社が流した『消臭力』の歌をポルトガルの子供たちが歌うもの。一体このCMに込めた意図は何だったのか? 同社における“震災後のCM”への考え方と併せて特命宣伝部長の高田鳥場氏に聞いた。

――震災後、各社CMには苦慮したと聞きました。「経済を回すために早く流せ」や「ACのCMだらけで気が滅入る」といった声がある中、「不謹慎だ」「被災者の気持ちを考えろ」という声も出てくる。今回のCMを流すことを決断した理由、内容をどうしてこのようにしたのかを教えてください。

高田鳥場:このCMでは震災については全く触れていません。今は何を流しても「偽善だ!」となってしまいます。それは仕方がありません。いくら応援コメントを出そうがCMしている時点で偽善にはなる。だからこそ「偽」の幅を極力小さくする必要があります。今回のCMは震災後に撮影したものですが、当然企画は当初のものから変わっています。

ただし、制作陣から「私たちは今まで通り視聴者を笑わせなくちゃいけないし、内容もど真ん中ではなく、はずさなくちゃいけないです。それでメッセージを送る。これがエステーの文化ですよ!」と言われたのですね。

――でも、今回のCMってCMの“王道”である“子ども”が出る内容ですよね。しかも歌。サントリーが『上を向いて歩こう』と『見上げてごらん夜の星を』を71人がメドレーで歌うのはまさに“ど真ん中な応援メッセージ”だし、“歌”とだけ聞くとむしろエステーも同様に“ど真ん中”を狙ったのかなと思ってしまいますが。

高田鳥場:確かにそうですよ。“子供が歌”は本来はど真ん中なCMでしょう。でも、歌を歌ってもらうけど、彼らは消臭力の歌を堂々と歌う。ここで言いたいのは「被災者頑張れ、ニッポン頑張れ!」ではなく「日常の生活に戻ろうよ」ってこと。多分これが震災から1か月経ち、被災者以外のテレビを見ている・買い物をすることができる人に向けたメッセージであるべき。

日本人の子供を出すとあざとくなるんですね。そして“ど真ん中”になっちゃうんですよ。だからこそ、舞台は外国で、外国人でやらなくてはいけないのです。外国人でやらなくてはいけない。だからこそ、外国人の子供を使おうと思った。でも、日本にはみんないなくなっちゃったんですよ! しかも、当初予定していた撮影場所は計画停電の影響で撮影ができるか分からない。しかも、スタッフの一人がツイッターで「電源を使うんだったら仕事はやらん!」と宣言したので、結局外国で撮影をすることに決めたのです。

――それは大変でしたね。どう乗り切ったのですか?

高田鳥場:ただね、今、ヨーロッパでは子供をCMに出すのが大変なんですよ…。「週2回しか撮影日がない」とか言われるし色々な場所の許可取りが必要なんですね。そんなとき、ルールが楽なところを見つけたところ、それはポルトガルだったのですね。で、実は「ポルトガルが私たちを呼んだ」という結果になったのです。このCMは必然で作られたのです。

――ど、どういうことですか?

高田鳥場:私が言うところの「ポルトガルが呼んだ」ですが、1755年、リスボンで大地震があり、大津波が街を襲いました。死者は6万2000人から90000人とも言われましたが、大航海時代にドーンと世界での地位を上げたポルトガルが、地震で大打撃を受けてしまいました。

その時、高台にある教会に皆逃げてきたのですね。今回私たちはロケでこの教会にも行きましたが、ここには地震の跡が残っています。でも、この時にこの街を作りかえる! という強い意志を皆が持つのです。そしてリスボンをパリをモデルにした街に生まれ変わらせようとしているのです。

教会

――意図はしていたのですか?

高田鳥場:いや、最初はあくまでも「撮影しやすい場所」ということで考えていただけなのですが、やっぱり「ポルトガルが呼んだ」んです。今回のCMは、まさしく地震にものすごく関係した街を背景にしたCMなんです。

――クリエイティブで気をつけたことは?

高田鳥場:実は、撮影した場所の近くには海や川がありましたが、それらは見せられません。津波を連想させるのは駄目です。海や川をバックにした方がキレイな“画”が撮れますが、その角度のものはやめました。基本的には街の中で撮りました。

――CMの最後にエステーがいつも使っている「黄色い鳥のキャラ」と「空気をかえよう」というメッセージが出ましたが、これって“自粛ムード”をかえようってことも意図していたのですか?

高田鳥場:いやいや、それは元々あったメッセージなので意図はしていませんが、結果的に意図していますよね。実はCMのテーマにも合っていますね。今回のCMですが、「日本語の歌詞があるバージョン」と「メロディだけのバージョン」があります。日本語の歌詞で歌っているやつをメインにすると、あざとさがあって、震災を利用している感がありますので、たまに月9ドラマのCMで流すようにしたいと思います。基本は“メロディ”のCMでやってみますね。私自身、心情的に振り切れなかったのです…。

やっぱり、ニュースを見ていても、子供がお父さん、お母さんを探している映像を見ると、CMって世界で何をやっても駄目な気がしたのです。お葬式があって、家族がいて、おじいちゃんが死んだ…という状況が現地ではあるわけです。その時に「おじいちゃんがこんなバカみたいなもの持っていたんだ!」と身内はガッハッハとやっています。震災を受けた人は今は笑いたいのです。自分たちで笑うネタを見つけている最中です。皆さんが自ら笑いたいネタをみつけて笑いに行く。これはOKです。

ただ、外部の人が、そのおじいちゃんの家に行き、パントマイムとかで笑わせようとしたら駄目です。恩着せがましいのは今は絶対にダメなのです! 映画産業だったら、「どうぞ来てください!」とやるわけですが、CMってのは、「その家に飛び込むご近所の人」なのですね。テレビのコンテンツは意志とは関係のないところで割り込んでくるのです。番組は番組表があるので視聴者も事前の準備はできますが、CMは急にやってくるもの。突然やってくるご近所の空気読めない人がキレイな身なりでやってきたら……、いきなり美形な人が……、本業ではない人が……入って来ると人々はどう思いますかね? CMってものはそういうものなんですよ。だからこそ、今は反感を持たれないように企業は注意すべきですし、内容・流すタイミング、綿密に考えなければならないのです。

高田鳥場氏:エステー特命宣伝部長
▲高田鳥場氏:エステー特命宣伝部長

インタビュー・文/ヘア・臼井


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