脳の中にもあったπ

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今回は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

脳の中にもあったπ
π(パイ)とはご存知円周率のことで、円周と直径の比になります。ですので、直径1の円の円周はπになります。面白いのは、πが一見、円とは何の関わりもないようなところに顔を出すという性質です。

例えば、適当に2つの自然数(1,2,3,……)を選んだとき、両者の最大公約数が1しかないような2つを選ぶ確率は、6/πの2乗になるそうです。また、幅1の間隔で何本も平行線を引いたとき、その上から落とした長さ0.5の針が平行線の1つと重なるように落ちる確率は、1/πなのだそうです(ビュフォンの針)。確率以外では、河川の長さと水源から河口までの直線距離の比もほぼπになるそうです。
このようにπは、自然界の色々な場所で顔を出す不思議な数なのですが、今回脳の中にもπが見つかったということで、昨年の『Science』11月19日号に報告がありました。*1

*1:「Universality in the Evolution of Orientation Columns in the Visual Cortex」『Science』
http://www.sciencemag.org/content/330/6007/1113.abstract

脳の後頭部には、視覚に関する処理を行う視覚野という領域がありますが、その中で一次視覚野と呼ばれる領域は、最初にその処理を行う場所として知られています。この一次視覚野は6層の層構造をしているのですが、その層を貫くかたちでカラム(柱)と呼ばれる柱状の機能単位があることがわかっています。それぞれのカラムは、固有の傾きをもった線分にしか反応しない神経細胞で構成されており、方位選択性カラムと呼ばれています。反応する線分の傾きごとに色分けしたカラムを上から見たもの が冒頭の図になります。

図の中の四角い枠の中を拡大したものを見ると、色(反応する線分の傾き)の異なったカラムが、まるで風車の羽のように互いに接している部分があります。これを特異点(Pinwheel center:風車中心)と呼ぶのですが、この特異点の密度(同色のカラム間の距離の2乗当たりの特異点の数)がπ±2%だったというのです。この法則は、異なった種の哺乳類の脳でも同様だったことから、このようなカラム構造の形成は、種ごとの遺伝的な制御を受けているというよりは、より物理的な自己組織化のメカニズムによって制御されているのではないかと論文著者らは考えているようです。

※トップ画像は『Science』さんのサイトより引用させていただきました。ご覧いただくには会員登録が必要(有料)です
http://www.sciencemag.org/content/330/6007/1059.summary

執筆: この記事は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

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