【震災孤児】 「かわいそう」の一言で済ますのではなく

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東日本大震災で孤児になった18際未満の子どもの数が100人を超えた。厚生労働省の集計によると、岩手県で44人、宮城県で43人、福島県で15人の震災孤児(以下、孤児という)がいるという。被災地で困難に直面している“社会的弱者”には、孤児のほかにも障がい者や高齢者などもいる。だが、今回は孤児にしぼって話を進める。

上記の各県をはじめ、他県の福祉関係者も現地に入り、孤児の実態調査に乗りだしている。対策をこうじるためには、まず実態をつかもうという姿勢は評価できる。しかし、小学から高校までの就学児童については、実態が把握できた子どもから順に、養育や生活、そして学習の支援をすべきであろう。

被災地の混乱で、孤児の実態調査がはかどらないなか、いくつかの企業が孤児に対する支援の方針を打ちだした。報道されている範囲では、まず3月22日にソフトバンクの孫正義社長は、孤児に対する携帯電話の完全無償提供(18歳になるまで)と、2011年度から引退するまでの役員報酬を全額寄付して、孤児を支援すると約束。

3月25日には、ロート製薬が孤児を長期的・継続的に支援するための“震災復興支援室”を設置。アシックスは、16年前に会社が被災したことから、今回は「神戸からの恩返し」と位置づけた上で、震災孤児に製品を無料提供することやスポーツ教室に招く方針を4月6日に発表した。

また、ビックカメラでは4月16日に、1500品目の商品を対象にして、売り上げの1%を震災孤児の支援金にあてるキャンペーンを開始する。さらに、私立の学校も支援に乗りだした。岡山県の岡山龍谷高校は、「経済的な心配は一切せず、新たな一歩を踏み出してもらいたい」と、学費や寮費、学用品、日常生活の私費なども含めて、入学した孤児が在学中に必要とする費用の全額を負担する。

「我々大人が試されているのだと思います」。“あしなが育英会”広報の小河光治さんは、『週刊文春』(2011年4月21日号)の取材にこう答えた上で、孤児の現状について以下のように語っている。

「津波で親が見つかっていない、お別れをきちんとできていない子どもたちや、実際に目の前で人が流されていくところを見ざるを得なかった子どもたちがたくさんいます。そういう心の傷というのは、私たちも出会ったことのない深刻なもの。それに大人は向き合わざるを得ないのです」(同誌、p39)。

壊滅した街がある。学校の受けいれ体制は整っていない。親戚が近くにいればいいが、保護者が見つからない子どももいる。一部の企業や学校がいち早く、孤児に対する支援を発表したことは、大変喜ばしいことだ。そして、個人レベルでいうと、いま私たちおとなの一人ひとりには、心に大きな傷をおった子どもたちとどう向きあえるのか問われている。けっして、「かわいそう」の一言で済ますのでなく。

(谷川 茂)


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