斎藤佑樹は“持ってる”だけか?|2011年NPBペナントレース

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先頭岡田幸文への初球はやはり速球だった。144km/h 。3月21日阪神に滅多打ちされたときよりも球速があった。落ちついていた。ただし、これより速い球は投げなかった。この日は速球が少なく変化球を多投。かわそうと言う意図が見て取れた。

大学時代はあの球速でも相手を見下ろしていた斎藤だが、NPBに入ってからは打者を見上げている感がある。

1回1死荻野貴が失策で出塁して井口。MLB帰りの右打者はこの手の球を動かす投手には慣れている。変化球をファウルして好球を待ち、外側の速球に上手く合わせた。しっかり踏み込んでリストの強さでもっていった一発だった。

斉藤が非凡なのは、以後の打者を淡々と打ち取ったことである。低めの微妙なコースに変化球を投げ込む。いいところにはめったに来ない。ベテランのような投球だ。左右よりも高低差をよりうまく使うから四球の心配がほとんどない。打者は打たざるを得ない。こうしていつの間にか打者は斉藤にペースにはまっていき、ゴロの山を築くのだ。

こういう投手を打ちこむには、ボールを良く見て引きつけて速いスイングで振り抜く必要がある。4回の福浦、5回の岡田、荻野、いずれも真ん中低めに来るボールが捕手にミットに収まる寸前にカチッと合わせたものだ(5回井口の安打は明らかな失投)。見方を変えれば、配球を読むことが出来れば簡単に打てる投手になる。抑えるのも打たれるのも紙一重なのだ。

この日の斎藤を救ったのは金泰均。WBCから注目していた打者だが、体が重そうで切れがなく、その上にじっくり待つと言う彼の持ち味が消えていた。集中力、根気がないのだ。斎藤との3度の対戦で、ことごとく流れを断ち切っていた。

本来の斎藤は、打ち頃に見えて打ちにくい微妙に動く速球を思いきり良く投げ込んで打者を幻惑し、変化球をうまく使うのが持ち味だと思う。かわすだけでは、いつかは捉えられる。勝ち身が遅くなるから完投はおぼつかないし、何より魅力を感じない。運がいいだけで白星を重ねる投手だとすれば、斎藤は並みの投手になってしまう。打たれることを恐れず、もっと攻めの姿勢を見せてほしい。