「本は紙である」という環境で育ってきた僕らに、電子書籍はどんな未来を見せてくれるのでしょう。『Web本の雑誌』はブック・コーディネイターの内沼晋太郎さんとともに、関わりのありそうな方にお話を聞いてきました。第8回は、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さん。本を持って山へ出かけたりもする、四角さんの「アウトドア読書」のスタイルとは? 移住先のニュージーランドにいらっしゃる四角さんにSkypeでお話を伺いました。


【行く山や森によって、読みたくなる本が変わるんです】

内沼 「山スカート」の第一人者として知られる四角さんですが、ファッションだけでなく、アウトドアでのライフスタイル全般についてさまざまな提案をされていますよね。

四角 もともとアウトドア好きだった主人に上手に洗脳されたんです(笑)。普通、誰かにものを教えるときって、自分なりのやり方を教えてくれますよね。でも最初に釣りに連れて行ってもらったとき、ふたりでボートに乗ってただ大自然を味わって過ごしたんです。彼が口にするのは「きれいだね」「気持ちいいね」という言葉くらいで、アウトドアってなにかをする行為ではなく、感じることが大切なんだと教えてもらいました。その後も、ボート上やテントのなかで、小説や手塚治虫全集を読んで過ごしたり、自由なアウトドアの過ごし方を教えてくれたのが、やはり大きかったですね。

内沼 ぼくはアウトドアにあまり詳しくないのですが、アウトドア好きの方というのは、フィールドに本を持って行くものなんですか?

四角 そういう人は多いと思います。私がアウトドアを始めた当初は、山登りの楽しさと言えば「ピーク・ハント」――つまり登頂を目指すことと同義だと感じていました。でも最近はいろいろな楽しみ方をされる方が増えました。山で食べるご飯が一番の楽しみだという方もいらっしゃいますし、私のようにきれいな景色のなかで本を読むために山や森に入る人もいます。

内沼 ちなみに、「大自然の中で読むならこの本!」というような定番の本はありますか?

四角 彼が最初にプレゼントしてくれた、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』はいまも大好きな一冊ですね。「子どもの頃、ドキドキしていたようなものが自然のなかにある」ということを教えてくれました。でも山によって読みたくなる本は違います。日本の山だと硬派に新田次郎とか。ニュージーランドの大自然のなかだと、マンガを読んだりもしています(笑)。

内沼 日本のマンガですか?

四角 そうです。山を舞台にした『岳』(石塚真一)などが好きですね。でも日本とニュージーランドを行き来する際にそれらすべてを運べないので、1年ちょっと前――2010年の1月にこちらに移住する少し前から手持ちの本をスキャンして、iPadに取り込んでいるんです。


【ソーラーパネルに加えて、あの機能もほしいんです!】

内沼 海外に長期滞在するというのは、本が好きな人にとっては悩ましくもありますよね。大量に持って行くには重くてかさばるけれど、割り切ろうと思って諦めるとストレスが溜まってしまう(笑)。必要なものを一台の端末にすべて入れることができるのは理想的ですね。

四角 海外で暮らすからといって、好きな日本語の本を諦めることをしたくなくて。ニュージーランドにいて、日本語の資料本が必要なとき、東京に注文して本が届くのを何日か待たなくちゃいけません。そうして手に入れた資料だって、次にいつ必要になるかわからないまま、場所を取ってしまう......。そういう課題って、本が電子化されればすべてクリアになる。新刊や雑誌の最新号がどこにいてもリアルタイムで手に入れられる。電子書籍なら、ニュージーランドの湖畔でも東京でも、同じように情報が手に入るようになるわけです。

内沼 今回はお持ちのiPadに加えて、反射光端末であるKindleも事前に試して頂きました。日本でも続々と電子ペーパーの端末が発売されています。

四角 電子ペーパーの質感にきちんと触れたのは初めてだったんですが、マットな質感がすごく本に似ている印象でした。自然光の下だと液晶よりも読みやすかったですね。あとは普段iPadを使っているからか、とても軽くて驚きました。アウトドアの世界には「ウルトラライト」という考え方があるんです。私たちが山に入る時、自然の中で必要な衣・食・住すべての荷物を持って行きます。その荷物を軽くするほど、体力的な負担も軽減できますよね。すると、これまで行けなかった自然の奥の方まで分け入って行くことができて、景色を味わう心の余裕も生まれます。持ち物を軽くすることで、大地へのインパクトも小さくすることができる。そして、より深く自然とつながることができます。山に本を何冊も持って行くことはできません。軽量でバッテリー寿命の長い電子書籍端末があれば、「本を本棚ごと山に運び上げるようなこともできますよね。

内沼 自然とつながる地球への負担を軽減するという意味で言うと、KDDIのbiblioLeafはソーラーパネルを搭載しています。

四角 それはますます太陽の下で読みたくなりますね(笑)。あとは防水機能がほしいです! 屋外に端末を持ち出すとき、水濡れが恐いのでいまは透明な防水パックに入れているんですが、本体に防水機能はぜひつけていただきたいですね。ソーラーパネルと防水機能は相性が良さそうな感じがします。でも難しいんでしょうか......?

内沼 ニーズがあるとなれば、いつか出るかもしれませんよ。防水の端末が出たら、ぼくももっとアウトドアでの読書に挑戦してみたいと思います!


<プロフィール>
四角友里
よすみ・ゆり●アウトドアスタイル・クリエイター。着物の着付け師。着物の着付け教室を運営しながら、女性のための新しいアウトドアを提案するWebサイトを立ち上げるなど、アウトドアスタイル・クリエイターとして、精力的に活動する。日本における「山スカート」の提唱者でもある。2010年1月、夫の四角大輔とともに長年の夢、ニュージーランド移住を実現。日本との間を往復するノマドライフを実践している
http://www.respect-nature.com/

内沼晋太郎
うちぬま・しんたろう●1980年生まれ。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。「本とアイデア」のレーベル「numabooks」主宰。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)。LISMO Book Store Magazine編集長。http://numabooks.com







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