1ヶ月以上のご無沙汰をしておりました。連載シリーズ「新作アニメ捜査網」のコートクでございます。まず冒頭に、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、被災されました皆様には心よりお見舞い申し上げさせていただきます。
さて今回は、去る4月7日は戦艦大和が沈没した日。そのことに因み、本稿では戦艦大和と、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』、実写映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』にコメントを加えたいと思います。まずは史実を簡単に見ておきましょう。太平洋戦争末期の昭和20年4月6日、菊水一号作戦に基づいて、第二艦隊(司令長官は伊藤整一)の旗艦である戦艦大和は、軽巡洋艦矢矧と駆逐艦8隻を伴い、沖縄に向けて出撃しました。これは、大和を沖縄の陸上に乗り上げて砲台として利用し、乗組員を陸上兵力とするものでしたが、事実上の特攻作戦でありました。またこの作戦は、上空直衛の戦闘機を伴わない計画でした。制空権を抑えない状態での作戦は、極めて無謀なものですが、この辺りからも、この作戦が特攻作戦であったことが窺えます。とは言うものの、第五航空艦隊司令長官・宇垣纏は独断で鹿屋基地の戦闘機を出撃させ、九州近海で途中まで大和の護衛に就かせたそうです。しかし米軍の航空隊との戦いでは第二艦隊は航空支援なしの戦いを迫られ、4月7日に大和、矢矧、駆逐艦4隻が沈没。日本側は戦死者約3千7百名を出しました(一方、米側戦死者は12名)。あまりにも無残な大和の最期に心を痛めた日本人は少なくなかったと思います。

このことを踏まえて、『宇宙戦艦ヤマト』『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を見てみたいと思います。

『宇宙戦艦ヤマト』は昭和49年に放送されたアニメですが、関東地方では裏番組に『アルプスの少女ハイジ』と『猿の軍団』があり、裏番組との厳しい競争の中で打ち切りになってしまいます。しかし昭和52年にはテレビシリーズを再編輯した劇場版が公開され大ヒット。この劇場版『宇宙戦艦ヤマト』は、コンテンツ史において3つの功績を残しました。
1、日本でSF映画ブームを巻き起こす原動力となった点
2、中高生がアニメを堪能する文化を生み出した点。一般的に、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』を支持した中高生がオタク第一世代と呼ばれています。
3、第一次アニメブーム勃発の布石となった点

では、『宇宙戦艦ヤマト』のストーリーを見てみましょう。舞台は西暦2199年。地球侵掠を狙う宇宙人・ガミラス人の攻撃によって地球は放射能汚染に見舞われます。これに対し人類は、海底に沈んでいる戦艦大和を引き揚げて宇宙戦艦に改造し、イスカンダル星という星に放射能除去装置・コスモクリーナーDを取りに行く、というのが大まかなストーリーです。
上記のようなプロットの元ネタは『西遊記』であると言われています。宇宙戦艦ヤマトとその一行は玄奘三蔵、イスカンダル星は天竺、コスモクリーナーDは経典、登場人物スターシャはお釈迦様に対応しています。

しかし、『宇宙戦艦ヤマト』のプロットは『西遊記』のみに対応している訳ではなく、菊水一号作戦をも彷彿とさせるものです。即ち、イスカンダル星が沖縄に対応しているように見えるのです。そして航空支援なしでの戦闘を迫られた大和の姿と、ガミラス艦隊と単艦での戦闘を迫られた宇宙戦艦ヤマトの姿がダブるのです。実際、『宇宙戦艦ヤマト』の劇中には、太平洋戦争中に戦艦大和が菊水一号作戦で出撃する様子を描いたシーンが登場しています。また主題歌の歌詞は、沖縄に向かう途中で沈没した大和を悲しみ、ヤマトには任務を終えて必ず帰ってきてほしいという願いが込められているように見えます。
次に、昨年に公開された実写映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を見てみたいと思います。この映画も、未来の人類が海底に沈んでいる戦艦大和を引き揚げて宇宙戦艦に改造し、イスカンダル星に放射能除去装置を取りに行くというストーリーです。そして注目すべきなのは、木村拓哉演じる主人公・古代進が「1945年4月、戦艦大和は絶望の中の僅かな希望のために出撃した」と語っているところです。即ち、太平洋戦争中の大和の姿と、宇宙戦艦ヤマトの姿が重ね合わされているのです。

なぜ『宇宙戦艦ヤマト』『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は観客の心を打つのでしょうか。それは宇宙戦艦ヤマトの姿と実在した戦艦大和の姿がダブるからでしょう。太平洋戦争時の大和特攻には理不尽な面もあり、必要以上に美化されるべきではありませんが、アニメ及び実写の『宇宙戦艦ヤマト』は、地球を救うという重大な使命を帯びて決死の航行をするヤマトの悲壮な決意を描くことで、観客に感動を与えているのです。

最後に、太平洋戦争の戦歿者に鎮魂の祈りを捧げ、本稿を終わりとしたいと思います。合掌。

■ライター紹介
【コートク】

本連載の理念は、日本のコンテンツ産業の発展に微力ながら貢献するということです。基本的には現在放送中の深夜アニメを中心に当該番組の優れた点を顕彰し、作品の価値や意義を世に問うことを目的としていますが、時代的には戦前から現在まで、ジャンル的にはアニメ以外のコンテンツ作品にも目を向けるつもりでやって行きたいと思います。そして読者の皆様と一緒に、日本のコンテンツ産業を盛り上げる一助となることができれば、これに勝る喜びはございません。

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