「原発、東京湾に作れ」という言葉 もう一度噛みしめてみるべきでは

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レベル7。福島第1原発での事故について、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価が最悪のレベルであることを、経済産業省原子力安全・保安院が4月12日に認めた。そして、4月13日の読売新聞によれば、事故発生の13日後である3月23日の時点で、放射性物質の放出量はレベル7に達していたことが、内閣府原子力安全委員会のデータであきらかになっている。

●何をいまさら“レベル7”

何をいまさら、と言いたい。小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)は3月28日の時点で、「レベル7といわなければいけない状態」と指摘している(『あえて最悪のシナリオとその対処法を考える』、ビデオニュースドットコムで配信)。事態の深刻さを理解し、的確な対処するためには、政府はもっと早めにレベル7であることを認め、公表しておくべきであった。日本の人びとに対しても、世界の人びとに対しても。

核燃料の融解、放射性物質の大気への飛散、汚染水の処理……。こうした異常事態のオンパレードを目の当たりにしていれば、福島第1原発の事故がチェルノブイリ原発事故と同じ規模であることは、誰もがなんとなくわかっていたことなのではないか。いや、レベルがどうこうという以前に、原発事故が引きおこす深刻な問題の数々について、多くの人びとが認識を深めたことはまちがいない。

●世論は原発の現状維持を望んでいる!?

にもかかわらず、である。マスコミ各社の世論調査(以下、調査という)では、一部の例外を除いて、原発の稼働を容認する声がもっとも多くなっている。まず、4月3日の読売新聞による調査では、国内の原子力発電所の今後のあり方について、「現状を維持すべきだ」が46%、「減らすべきだ」29%、「すべてなくすべきだ」12%という結果が出ている。

また、4月4日のJNN(TBS系列)による調査では、稼働中の原発について、「これまで通り稼働すべき」1%、「これまで通り稼働しながら、安全対策を強化すべき」68%、「いったん停止させ、対応を検討すべき」14%、「原発を停止させ、別の発電方法をとるべき」15%となっている。以上は、全国規模の調査結果である。

他方、地域別の調査結果はどうなっているのだろう。3月19日の東京新聞による「東京都内の有権者」に対する調査では、「国内の原発をどうすべきか」という問いに対して、「これまで通りで運転」1.7%、「運転しながら安全対策を強化していく」56.2%、「いったん運転を止め、対応を検討」25.2%、「やめて、別の発電方式をとる」14.1%。

FNN(フジテレビ系列)の「首都圏の成人男女」を対象にした調査では、「今後、原子力発電所をどうすべきだと思いますか」という問いに対して、「増やすべき」8%、「減らすべき」25.8%、「現状を維持すべき」49.8%、「すべてなくすべき」12.6%となっている。

●福島の人びとは、原発の現状維持を望んでいるのだろうか?

原発のリスクがこれだけあきらかになっているにもかかわらず、全国規模、または首都圏における調査では、原発の稼働を容認する声がほぼ過半数を占めている。各社の調査方法やその範囲などを考えると、多少の“かたより”が存在する可能性はある。しかし、これらの調査結果によって、原発を取りまく日本の“雰囲気”は、ぼんやりと見えてきた。

調査の結果から、“容認”の理由まではわからない。だが、原発の稼働を停止し、新規の建設を中止することにより供給される電力が減り、現状の“快適な暮らし”が維持できなくなることへの危機感が、“容認”される理由のひとつであることは察しがつく。くわえて、どれだけ原発事故の深刻さが報じられても、身近な場所に原発そのものがなければ、“対岸の火事”という感覚になってしまうのかもしれない。

ここで、原発の建設に反対する声が多数を占めるという“一部の例外”を紹介しておこう。4月3日の毎日新聞では、同紙が三重県の有権者を対象に、「中部電力が原子力発電所の候補地として三重県内を検討していること」について、新知事がどう対応すべきかを調査したところ、「反対すべきだ」が60%で、「賛成すべきだ」8%であった。

原発を受けいれた地域では、原発を誘致することにより、地域経済や雇用がうるおうという現実があったり、政府や東電の「安全神話」が素直に信用されたのかもしれない。とはいえ、“レベル7”の現状を、いま原発周辺で暮らす人々はどう考えているのだろう。筆者が知りたい調査結果は、なによりも福島県の人びとを対象にしたものである。

●「対岸の火事」を「他山の石」に

原発のない地域で暮らす人々は、福島県での調査結果とみずからの“快適な暮らし”を比較した上で、原発の稼働を”容認”するのか再考してみてはどうか。ビートたけしさんの「原発、東京湾に作れ」という言葉は、けっして暴言ではなく、その再考をうながす問いかけだと筆者は理解している。

“対岸の火事”が“他山の石”になったとき、「快適な暮らしは維持できないけれど、その高いリスクを考えれば、順次、原発の停止や廃止は仕方がない」という声が増えるのかもしれない。政府や東電を糾弾するのも、代替エネルギーについて考えるのも、原発の停止・廃止と同時進行でおこなえばよい、という議論につながる可能性もある。

いま、私たちは、原発に関する問題について、どんなことを優先して考えるべきなのか。その判断材料として、専門家の意見も重要だが、まずは福島県の人びとの声を聴いてみるのはどうであろう。混乱する被災地や避難地域での調査はむずかしいと思うが、ぜひともマスコミ各社に実現してもらいたいものである。

(谷川 茂)


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