「2011年本屋大賞」の投票結果が発表された。第8回の大賞受賞作は、昨年からベストセラー街道を突っ走る、東川篤哉の連作ミステリ『謎解きはディナーのあとで』(小学館)。本屋大賞ノミネート時点で累計刷り部数が50万部近くに達していた人気作だが、その後も増刷に継ぐ増刷。今回の受賞でミリオン突破となった。
 小説の中身は、本屋大賞受賞作史上初の本格ミステリ。ヒロイン(というかワトスン役)は、財閥令嬢にして警視庁国立署捜査一課に所属する刑事、宝生麗子。その運転手兼執事を勤める影山がホームズ役(安楽椅子探偵)をつとめる。現場での捜査を終えたお嬢様が、影山の運転するリムジンで屋敷に帰り、ディナーのあとで(あるいはリムジンの中で)事件のあらましを影山に報告。毒舌の影山が、「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」などと主人を罵倒しつつ、名推理を披露する----というのがお決まりのパターン。
 全6話の連作形式を採用したユーモア・ミステリで、主役コンビはもちろん、麗子の上司にあたる風祭モータース(中堅自動車メーカー)の御曹司・風祭警部など、レギュラーの登場人物がマンガ的に誇張され、その掛け合い漫才をキャラクター小説的に楽しめるのが特徴。犯人当ての難度は意図的にかなり下げてあるので、さほどミステリ通でなくても真相を推理する楽しさが味わえる仕組み。なお、『謎解きはディナーのあとで』は、第11回本格ミステリ大賞の候補作にも選ばれている(大賞決定は5月14日)。

「2011年本屋大賞」候補作の得点と順位は以下の通り。

1『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)386.5点
2『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)354.5点
3『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦(角川書店)310点
4『錨を上げよ』百田尚樹(講談社)307.5点
5『シューマンの指』奥泉光(講談社)270.5点
6『叫びと祈り』梓崎優(東京創元社)263点
7『悪の教典』貴志祐介(文藝春秋)259.5点
8『神様のカルテ2』夏川草介(小学館)259点
9『キケン』有川浩(新潮社)241点
10『ストーリー・セラー』有川浩(新潮社)202点


 本屋大賞は、「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」の看板どおり、書店員の投票によって受賞作が決まる賞。まず、一次投票により候補作10作が決定。その10作すべてを読んだ書店員がその中から推薦作3作を選び、順位をつけて投票(1位3点、2位2点、3位1.5点)。集計の結果、もっとも獲得ポイントが多かった作品が大賞受賞作となる。

 今回は一次投票者が458人、二次投票者が439人と、いずれも過去最高を記録。二次投票では、『謎解きはディナーのあとで』に178人が投票している(1位60人、2位59人、3位59人)。とくに、著者の出身地である広島では圧倒的な人気を集めた(広島県における『謎解きはディナーのあとで』投票者数は42人で、これは東京都の21人の2倍にあたる)。版元の小学館は、前回(夏川草介『神様のカルテ』)、前々回(和田竜『のぼうの城』)と2年つづけて2位に甘んじていたが、今回ようやく初受賞を果たした。

 一次投票の8位から大幅に順位を上げて2位に入ったのは、ノミネート時点では刷り部数が2万部にも達していなかった(と伝え聞く)、窪美澄『ふがいない僕は空を見た』。知名度の低い新人作品としては大健闘の部類だろう。

 森見登美彦は、2007年の『夜は短し歩けよ乙女』2位、2008年の『有頂天家族』3位に続き、3度目のノミネートとなる『ペンギン・ハイウェイ』で3位。

 有川浩は2作ノミネートされたため、二次投票では下位に甘んじたが、両者の獲得ポイント(『キケン』241点、『ストーリー・セラー』202点)を合計すると、1位のポイントを上回る。

(大森望)







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