原子力発電のまわりでうごめく“気持ち悪いもの” それでもおれたちには東電しかない!

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1988年にRCサクセションが『ラブ・ミー・テンダー』および『サマータイム・ブルース』で原発反対を歌ったとき、私はティーンエイジャーでした。同2曲にリアルタイムで接することになったわけですが、残念ながら当時の私に、忌野清志郎さんが感じたのと同質の恐怖や怒りを感じることはできませんでした。「原発は怖いもの」という認識を共有することはできても「放射能はいらねえ!」と叫ぶほど怒ってはいなかった。統計とったわけじゃないからわからないけど、当時のファンの認識は、たいがいそんなものだったんじゃないかな、と思っています。

むしろ、違和感を覚えたのは、原発反対運動そのものよりも、それを清志郎さんが歌った後で起こったできごとでした。RCサクセションの配給会社である東芝EMIは、上記2曲を収録したRCサクセションのアルバム『カバーズ』を発売中止にしてしまったのです。

理由は、「親会社である(原発推進企業の)東芝に配慮した」から。東芝EMIといえば、かつてローリング・ストーンズを配給していたこともあるロックのレーベルです。ストーンズの麻薬礼賛の歌は平気でも、原発反対は許せない。「所詮ロック・ミュージシャンの戯れ言じゃん」と笑って見過ごせない勢力が、たしかに存在している!

原子力発電のまわりには、どうやらそういう“気持ち悪いもの”がいるらしい。巨大なナメクジとかムカデとか、そういう動物がうごめいているような気がして、大きな恐怖を感じずにはいられませんでした。

それから長い長い時間が経って、私はいつか、あの“気持ち悪いもの”の存在を忘れていました。思い出すことがあっても、気にとめるほどじゃなかった。強烈に意識するようになったのはつい最近……3月11日、震災当日より後のことです。

福島原発の事故報道において、質・量ともにもっとも優れた報道をしていたテレビ局はNHKです。現在はそうでもないけれど、事故が起こってしばらくの間、民放各局の報道はあきらかに及び腰でした。

むろん、理由はわかります。東京電力は大スポンサーだから、悪くいうわけにはいかない。広告事業を主要な収入源とする企業なら当然のことでしょう。それは理解できるんだけど、あの「気持ち悪いもの」がぞろっ、と動いたような気がして、寒気を覚えずにはいられなかったのです。

さらについ先日、あの“気持ち悪いもの”の姿をいっそう見せつけられる報道に接しました。東京電力の役員が自民党にたいして、毎年多額の政治献金をしていたことがあきらかになったのです。

東京電力は民間企業ですから、政治献金それ自体は悪いことではありません。でも、東電は表むき、「政治献金はしていません」といっていたんです。東電みたいな一社独占、競争知らず不景気知らずの企業が献金すれば批判も出る。その批判をするりとかわしつつ、裏できっちりカネは渡していた。「役員からの個人献金」というまわりくどいことをやっても、渡したかったわけです。
 
さらに、これは週刊誌報道ですから真偽は定かじゃありませんが、河村たかし名古屋市長が民主党議員時代に、枝野幸男官房長官と江田五月法務大臣といっしょに原発を視察し、接待を受けたそうです。当時、民主党は野党でした。野党にたいして接待サービスしていたとすれば、与党にたいしてはもっと、だったことは想像に難くありません。

あの“気持ち悪いもの”は政府にも国会にもマスコミにも表現メディアにも、黒々とした息を吹きかけていたわけです。
 
福島原発の事故は“想定外”の津波によるもの。東電はそう発表しています。「“想定外”なんて許されるか!」という批判もあるようですが、それはある意味、致し方ないのかな、とは思っています。

でも、東電のその後の対応は、あきらかにお粗末だった。「炉心溶融の可能性」は、地震・津波のすぐ後に政府に伝わり、首相から“ベント”と呼ばれる排気操作が指示されています。にもかかわらず、東電はベント操作を即座に実行しなかった。どういう理由があったかはまだ類推の域を出ませんが、「操作が遅かった」ことは事実で、それが現在の状況につながっていることはいうまでもありません。

現在、福島原発に近寄ることができるのは、東電だけです。政府はむろんのこと、日本のメディアも海外のメディアも、東電にすべてをまかせ、東電の発表をもとに報道を組み立てざるを得ない。

願わくば、そこであの「気持ち悪いもの」が働かないことを願っています。もはや、そんな段階じゃないんだ。

「健康に害がない」微量だろうと、僕らは放射能のまじった空気を呼吸し、放射能のまじった土壌で育った野菜を食べ、放射能のまじった海水で育った魚を食べて生きていかなければならない。それはもう決定された事実です。覚悟せざるを得ないけど、事態をそれ以上に悪くするのだけは、勘弁してもらいたい。

“気持ち悪いもの”によって守られ、批判にさらされることなくぬくぬくと生きてきた組織に、それを託さなければならないことに、正直、大きな不安を覚えています。

でも、おれたちには東電しかないんだ。東電のがんばりに期待し、東電の発表を信じる以外、術がないんだ!


■ 参考サイト
時事ドットコム「1700万円を自民側に献金=東電役員、07年から3年間−「組織ぐるみ」の指摘も
http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2011040801039

(草野真一)


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