東京ファッションが「ポスト震災」へ再起動

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 いったんは足踏みを強いられた東京ファッションがリスタートを切り始めた。コレクションの発表を見合わせていたブランドが4月に入って相次いで展示会やオンラインショーの形で新作を発表。映像やウェブでの作品公開も活気づいていて、東京モードは「ポスト震災」のステージに移りつつあるようだ。

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 第12回「東京発 日本ファッション・ウィーク(JFW)」が開催中止になったのは、参加予定ブランドにとって計り知れない痛手となった。コレクション発表直前だっただけに、スケジュールの組み替えが難しく、年に2度しかない貴重な発表の場を奪われ、途方に暮れたブランド関係者は少なくない。

 だが、計画停電が見合わせとなり、街に人が徐々に戻り始める中、仕切り直しの動きが広がっている。2011-2012年秋冬の展示会が4月初旬には立て続けに東京都内で開かれ、「ayame'(アヤメ)」「everlasting sprout(エヴァーラスティングスプラウト)」など13ブランドが参加した合同展示会「BEYOND NOW」も4月5〜 7日に開催され、最終日には展示会場を一般開放し、消費者との接点も広げた。

 約20ブランドのファッションショーや映像作品を配信する「TOKYO FASHION FILM(トウキョウ・ファッション・フィルム)」は4月9日、「mintdesigns(ミントデザインズ)」を幕開けに始動。「SOMARTA(ソマルタ)」「KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS(ケイタ マルヤマ トウキョウ パリス)」「NOZOMI ISHIGURO Haute Couture(ノゾミ イシグロ オートクチュール)」などの有力ブランドが業界に閉じないファッションコンテンツをダイレクトに届ける。ランウェイショーをマルチアングルでライブ放映するだけでなく、デザイナーインタビューやショートフィルムなども盛り込んだ、立体的な構成でファッションを掘り下げていく試みだ。

 ファッションイベント「roomsLINK(ルームスリンク)」も再起動した。ファッションショーと合同展示会を軸に、様々なメディア、イベント、ショップなどと連動するプロジェクトで、4月20〜22日の開催が決まった。合同展示会は六本木アカデミーヒルズ40階で開催する。

 個別のブランドでも工夫を凝らした新作披露が相次いでいる。「THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)」は4月15日から、初のAR(拡張現実)ファッションショーを開く。ARを本格的に導入したコレクション発表は国内主要ブランドでは例がないという。ルックブックや映像作品の形で、公式サイトに新作を公開するブランドも多い。イメージムービーを公式サイト以外にYouTubeやUSTREAMなどの外部メディアに公開する意欲も高まっている。

 これまではまず東京コレクションで発表した後、公式サイトに画像やランウェイ映像を載せるケースが多かった。今回の一連の動きは、東コレが見送られたせいで、従来よりも早いタイミングで一般公開された格好であり、業界向けと一般向けの「時差」が縮まる効果を生んでいる。


 コンテンツやブランドイメージを大事にしすぎて、一般ユーザーがアクセスできるメディアへの提供を敬遠してきたブランドにもオープンな場への露出が広がる気配がある。ブランド側は新たな表現方法や、消費者に直接訴えかけるマインドを手にしたとも言える。日本ファッションのオープン化は加速しつつあり、ウェブを通じた新たな顧客獲得の可能性が膨らんでいる。


 ファッション通なら知っている通り、東コレ参加ブランドの服には、国内産地の特別な生地や素材が用いられていることが珍しくない。日本ならではの精緻な縫製、特殊加工がディテールを支えている服も多い。日本人が日本製の服を買うことは、東京ファッションを再発見するチャンスでもある。産地のメーカー、生産者を応援する意味もあるおしゃれ消費は誇らしいショッピングの選択肢となり得るのではないだろうか。相次ぐウェブでの作品公開をきっかけに、東京ブランドの奥深さに触れてみてほしい。


(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)


■東京コレクション ライブ中継ページ
 http://www.fashionsnap.com/tokyo-fashion-film/