これまでのビジネス戦略は「押し」が中心とされてきました。「押し」とは、人や組織が顧客の要望を予測し、効率的なシステムを設計することでニーズを満たすことができると考えるものです。原理としては、学校のカリキュラムなどを思い浮かべると分かりやすいでしょうか。
 「押し」では、消費者を受け身であるとみなし、種をまけばまくだけ収穫できると信じられがちです。しかし今、企業はそうした「押し」のビジネス戦略から、「引き」の戦略にシフトしつつあります。

 デロイトセンター・フォー・エッジのメンバーであるジョン・ハーゲル3世、ジョン・シーリー・ブラウン、ラング・デービソンの3氏によって執筆された“The Power of Pull : How Small Moves, Smartly Made, Can Set Big Things in Motion(「引き出す」力〜スマートに引き起こされた小さな動きは、いかにして大きな動きを生み出すか〜)”有料Podcast番組「エグゼクティブ・ブックサマリー」にて邦訳要約版を配信中)では、「引き」の戦略とは何かについて説明してくれます。

■3つの大きな変化を伴うビッグシフト
 どうして今、「引き」の戦略が注目を集めつつあるのでしょうか。それは3つの大きな変化を伴う「ビッグシフト」が起こったからだと著者たちは言います。
 まず、「インフラの変化」は新規参入の壁を取り払い、「人、製品、お金の、アイディアの国境を越えた移動」を推し進めました。
 さらに、データ、人、リソースが世界中を素早く移動するなかで、「知識の流れ」は「蓄積」よりも価値のあることとみなされていきます。つまり、「知識の交換」によってビジネスの成功が後押しされるようになったのです。この変化はインターネットによって加速しました。
 そして、最後に「企業革新」です。「押し」の戦略は重要性を失っていき、「引き」の戦略に基づいた企業が台頭して社会を変えるのです。

■「引き」のビジネスモデルとは?
 では、「引き」のビジネスモデルとはどのようなものなのでしょうか。
 「引き」のネットワークでは、「押し」のビジネス戦略とは違い、需要を予測しようとはしません。消費者が求める製品やサービスを使い、消費者との繋がりを持つのですが、この「つながり」が大きな意味を持ちます。
 「押し」の基本的な骨格はサービスプロバイダーを手助けすることでしたが、「引き」はエンドユーザーを優先します。例えばアップル社の「iTunesストア」は顧客それぞれのニーズに合うよう、個人化された音楽に関連したサービスを提供しており、「引き」の戦略の事例の1つとして挙げられています。

 デジタルの発達というパラダイムシフトの中で、ビジネスの方法も大きく変わりつつあります。そうした中で、「押し」から「引き」へという変化の発生はある意味必然であると言えるでしょう。今後、業績を伸ばすために「引き」の戦略に注目してみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)




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