サンデル教授の講義に学ぶ“会議運用術”

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 NHK教育テレビでその講義が放送されると瞬く間に話題となり、『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房/刊)も大ベストセラー、東京大学で特別講義を開講したハーバード大学の政治学者といえば、マイケル・サンデル教授です。

 サンデル教授の特徴といえば、学生たちに議論をさせながら真理を追究していく対話型の講義です。テレビでもおなじみですが、「ビル・ゲイツやイチローの年収は高すぎるのか?」といった身近な内容から時にはモラルを問うものまで、様々な議題を提示し、正義や公正の意味を全員に考えさせます。

 『白熱教室の対話術』(TAC出版/刊)は日本ファシリテーション協会フェローの堀公俊さんが、ファシリテーターとしてサンデル教授を捉え、そのスキルを解説する一冊です。どうして私たちはサンデル教授の講義スタイルに惹き込まれるのでしょうか。その手法を本書の中から3つ、紹介します。

■「私たち」を主語にして講義を進める
 送り手と受け手が一体となったプレゼンテーション。それがよくあらわれているのが、「私たち」という主語です。サンデル教授は「私たち」という言葉を巧みに使いながら、講義を一緒につくるパートナーとして対等の関係で学生たちと接します。堀さんは「こういったフラットな関係性が白熱を生み出すベースになっている」と言います。

■3つの要素で筋道を考える
 どうしてサンデル教授の話は分かりやすいのでしょうか。それは、以下の3つの、論理的に説明をするための要素をしっかりと抑えているからです。
(1)出発点―論点《物事を考えたり話し合ったりするテーマ》
(2)経路―根拠《論点と主張を結びつける根拠》
(3)終着点―主張《論点に対して根拠を並べて筋道立てて物事を考え、最終的に導きだした主張》
 一般的には、(1)→(3)→(2)の順番で語るほうが分かりやすくなります。サンデル教授も頻繁にこの言い回しを使っています。

■「要するに?」で抽象化、「たとえば?」で具体化する
 白熱教室の特徴の1つは「つまり」や「たとえば」といった言葉を使って抽象化と具体化を使い分けていることです。学生の言った意見にサンデル教授は「なるほど、つまり君は○○○だと言いたいんだね」と、相手の主張のエッセンスを取り出すのです。また、「要するに?」「ポイントは?」といったオープン・クエスチョンを投げかけ、発言者に意見をまとめさせることができます。
 一方、抽象的でよくわからない主張に対しては、「たとえば」といった言葉を問いかけて具体化を求める働きかけをします。具体的な事例を挙げることで、抽象的で理解しづらかった意見がより分かりやすくなるのです。

 本書では「上から目線にならない」「考え方の枠組みを広げる仮定質問」など、サンデル流議論のまわし方が全4章で説明されています。会議になると沈黙してしまうというのが日本人の特徴であると言われてきました。しかし、そうした中で「対話」に主軸を置くサンデル教授の講義がここまで人気を博しているのは、日本人がこうした真剣な対話を求めていたからではないか、と堀さんは言います。

 さらに、よく考えてみると、サンデル教授のファシリテーション術は普段のビジネスでも応用することができますよね。
 議論がなかなか進まないとき、もっと活性化させたいときは、サンデル教授の議論の動かし方を参考にしてみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)




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