「読者が読む前と読んだ後で変化するような作品を書きたい 」―平山夢明さんインタビュー(3)
 ここまで2回にわたり、長編『ダイナー』で第13回大藪春彦賞を受賞した平山夢明さんにお話を伺ってきました。
 最終回の今回は平山さんが小説を書き始めたきっかけについて。それまではライターとして活躍されていた平山さんが、創作の道に入ったことにはどんな事情があったのでしょうか。

■読者が読む前と読んだ後で変化するような作品を書きたい

―平山さんご本人についてお聞きしますが、平山さんは小説を書き始める前はライターとして活躍されていたそうですね。

平山「インタビュアーをやってたんだよ。外タレが多かったけどいろんな人にインタビューをしていました。」

―ちなみに、どんな方にインタビューをされていたんですか?

平山「デ・ニーロとかコッポラ、ダスティン・ホフマンもやったかな。あとはジョージ・ルーカスもやったよ」

―すごい!緊張しなかったですか?

平山「最初はしたよ。だって場所は、普段絶対入らないような一流ホテルのスイートだしさ。でもそのうち慣れたかな。通訳が入るから1時間のインタビューでも実質30分なんだよ。だから30分我慢すればいいんだなと思って(笑) それと、フランクに話したほうが向こうも乗ってくれるんだよね。それがわかってからは楽になった」

―小説を書き始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

平山「小説を書き始めたのはね、徳間でホラーノベルスシリーズを出すから書かないかって声をかけられたのが最初だな。その前は『異常快楽殺人』っていうノンフィクションを角川から出しました。その頃、まだ日本では知られてなかったんだけど“ストーカー”っていうものがあるっていうのをアメリカの友達に聞いたんだよね。アメリカで流行ったものは5、6年したら日本に行くからお前ストーカーについて書けよって。それで『異常快楽殺人』がそこそこ売れたから次は同じようにノンフィクションでストーカーやりますって言って角川に企画書出してやり始めたんだけど、途中でしくじっちゃって本を出せてないんだよ。取材費もらってアメリカまで行って死刑囚に会ったりもしたのに出せてない。それじゃ仕事来なくなっちゃうだろう(笑) それでぐだぐだしていたころ、徳間書店から声をかけてもらったんだよ。それまでは小説書くなんて全然考えてなかったし、書けないだろうと思ってた」

―平山さんは、ご自身の作家としての個性をどのようなものだとお考えですか?

平山「締め切りを守らない…(笑) それは冗談として、いつも心がけているのは、ありふれた話は書かないようにしようということ。あとは、できれば読者の人が読む前と読んだ後で変化するものを書きたいと思ってるね。できあがったものが売れるか売れないかはそれほど意識しないけど、そういうところでは読者を意識するんだ。
“この本を読んだら今まで付き合ってた彼氏がどうも胡散臭く見える”とか面白いじゃん。今とは違った自分になりたくなるとか、暴れてみたくなるとか、そういう変化をしてもらえるようなものを書きたいと思っています。映画館で『仁義なき戦い』を観た後に肩を揺らして出てくるとかさ(笑) そういう高揚感を与えたい」

―平山さんが人生で影響を受けた本がありましたら3冊ほど教えていただけませんか?

平山「何回も読み返したということでいったらグレゴリー・マクドナルドの『ブレイブ』だと思う。あとは『羊たちの沈黙』とひなちゃん(故杉浦日向子氏)の『百物語』かな。風呂で読んで傷んでしまったり、電車の中に置いてきちゃったりするけど、そのたびに買い直してますねえ。『羊たちの沈黙』なんて6冊くらい持ってて、1冊は気に入ったフレーズとかグッとくる箇所に線引きしてある」

―今後の執筆活動について教えていただけますか。

平山「今書いてるのが“講談社書き下ろし100冊”の『シエスターズ』っていう作品。あとは角川から出る予定の『ろくでなしの死』っていう短編集と、角川春樹事務所から出る予定の『ビキマン』っていう作品もあります。大藪賞のパーティの時に大沢在昌さんと北方謙三さんに“てめえ年3冊書かないと承知しねえぞ”って言われてね。エッセイは数えないけど短編はありらしい(笑) だから3冊は是が非でも出さないと」

―最後になりますが、平山さんの作品の読者の方々にメッセージをお願いします。

平山「まずはありがとうと言いたいです。俺みたいなジャンルはなかなか手に取りずらい本だと思うけど、でも読んだら確実に強くはなれるんじゃないかと思います」

■取材後記
 拷問シーンのあまりのリアルさに「実は怖い人なんじゃ…」と若干ビビり気味の取材前でしたが、実際お会いした平山さんはとても気さくな方でした。
 年3作は書くと、北方謙三さん・大沢在昌さんと約束して(させられて?)しまったという平山さん。大藪賞受賞を皮切りに、さらなる飛躍が期待されます。
(取材・記事/山田洋介)





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