計画停電が首都圏のITを揺さぶる……企業のサーバーたちが移動し始めた

写真拡大




今回はみやびさんのブログ『Amazonの悪魔』からご寄稿いただきました。

計画停電が首都圏のITを揺さぶる……企業のサーバーたちが移動し始めた

「来週中にサーバーを西日本に移せ!!」
怒号を飛ばす経営者。
「いやいや、今までいい仕事振ってきたでしょ? 頼むよ〜、今月中にさ。工事業者もたたいたらやるっていってるし...後はあんたらがうんって言えば移設できるんだよね〜」
スケジュールを無理矢理ねじこむクライアント。

計画停電により既存ITが崩壊していく。経営者の無知が、担当者のパフォーマンス狙いの行動が、東京のITをさらに混乱させる……。

とずいぶん緊迫した出だしですがドラマでもアニメでもなく現実です。

3月11日に発生した歴史的な大地震。

被災地はいまだ復旧の目処どころか補給もままならない状態。首都圏は地震のダメージよりも停電のダメージの方が大きい有様。買いだめやらなんやらが起きて人間の性根が露呈したりしなかったり。そんな中……昨日某F社の下請けの友人と電話で話したり元インチキバカマヌケ社出身で小さな会社をやってるいる人なんかと話していたら……先週の火曜日……22日にはもうそんな話が飛び交っていました。

サーバーの移動とは言いますがそう簡単にはできません。停止、梱包(こんぽう)、移動、開梱(かいこん)、設置、検証、そのすべての作業が終了して“きちんと動いている”状態でなければ移動しても意味がありません。ネットワークの設定は。IPはどうするのか。他のシステムとの連携は。一度動き始めてしまったシステムは“止める”ことを許されません。

経営者にとっては「移動になんでそんなにかかるんだ」という状態に。金もかかれば時間もかかる。難易度も高い。システムにもよりますが、複数サーバーが絡んでいるシステムだとその連携にも支障が出たりすることも。あるいはどこで知恵をつけたか勉強したか、突然「この機会にクラウド化だ。きみ、今月中に移行したまえ」なんて指示まで飛んでしまってはもう目もあてられない。

思いつきで動くようなものではないのですから……。

企業によっては特殊なハードを制御している場合もあります。そんな特殊ハードを含む特別なシステムをどうやってクラウドに乗せろと言うのか。クラウドはやはり幻想なのかも……なんて思っちゃうぐらいの無茶ぶり。

こんな時こそITコンサルタントなる人たちの出番なのですが、彼ら彼女らはこういったトラブルの際に緊急提案するのはあまり得意ではありません。きちんとした移行スケジュールをたてて準備して行動するのが基本ですし。

小中企業のシステムはそれほど難易度が高くなく、移動ができる場合もあるのがまたやっかいで。できるからにはやらねばならないのが担当するシステム屋さんたち(あるいはシステム部のみなさん)。短期間での移動計画を立案しなければなりません。業務システムであれば運用に関しても取り決めをし、いついつの何時に止めていつ復帰する……そんな計画書を作らねばならない。

こんなことを言ってもなんですが西日本なら大丈夫という考えもそもそもどうなんだよと(苦笑)。慌てふためく経営者の姿にげんなりって人もいたらしいですがそこはお仕事。まして北日本の停止したサーバーの代わりを立てるなどの話であれば否も応もない。やるしかない人もいます。

とはいえ。

一時期は大変なガソリン不足もありトラックの手配もできない。まして精密機器を運ぶのですからそれなりのトラックと業者でないとだめ(エアサス車は必須としても他にもいろいろと)。そう簡単に移送もできない。設置した後配線などはどうするのか。落ち着いた経営者はきちんとした予算と計画を立てて遂行するように言うのですが、いかんせん慣れてないITなんかわからないって経営者からは結構無茶ぶりが……。

個人的に以前勤めていた会社の関係もありトラックの手配など頼まれたのですがそもそもガソリンがないので走れず(苦笑)クライアントにきちんと説明しなさいよとさとす場面もあったりなかったり。まぁある程度の手配はしたので(元の勤め先ではないですが、西日本に行くならOKという会社があった)、お手伝いはしたんですが……無茶な計画に現地のSEの手配もままならず、相当きつい進行具合。

震災ではなく停電のせいで首都圏のITは麻痺(まひ)し始めています。無茶ぶりでなくてもそれなりの対応は迫られているので、サーバー類の移設やリプレース(データセンター内に新サーバーを立ててそちらに移行とか)はどんどん増えています。被災で首都圏側のSEの確保もままならない状態ですが、それでも懸命に各社頑張って対応しています。一度に相談がきて営業も回らない状態。

政府発表を信じないという経営者もいますが、やはりTVや新聞で不安をあおられれば心穏やかではない。停電しても大丈夫な施設に移すか。あるいは地方の支社にとりあえず移すか……各社様々な状況に合わせた提案が飛び交っています。私の会社も何らかの対処はしなければならないんですが……まだ指針が出ていません。

どこに逃げても逃げられないと個人的には思うのですが(サーバーを自社内に置くのにそもそも反対してる立場なので。基本はデータセンターに預けたい)、命令とあればやはり検討せざるを得ませんしね……。知り合いの会社などでもいろいろと対応が開始されています。

揺れ動く首都圏の計画停電。東京電力の対応ひとつで東京のITは今以上のパニックになりかねないな……そんな危険もはらんでいます。人間による対応・運用で乗り切るという会社もありました。人件費こそかかりますがその手もあるでしょう。

誰も気づかないうちに、企業のサーバーが集中から分散へと動き始めています。

クラウド化するところもあるでしょう。案外自社サーバーを持つよりリスクもコストも安いと気づいたところもあるようで。ただ、なかなか移行が難しい。現場には現場の動きと運用がありますから……経営者の一存でやれる規模の会社ならいいんですが、なかなか難しい。

小さな会社をいくつか束ねて、そこのシステム担当者たちをまとめて運用の子会社を合同で立ち上げさせる。そこで各社のシステムを統合的に管理する……今そんなプロジェクトを進行させています。プライベートの余暇で協力してるのでメインのメンバーではないですが(笑)、仕事に影響の出ない範囲でいろいろと手を貸そうかと思っています。

ピンチをチャンスにするのが信条なので、このピンチは逆に小さな会社でITを押し付けられていた人たちをひとまとめにして助けるチャンスかもしれない。今そんな風に考えています。言うほど簡単でもないんですが。

その管理会社でデータセンターを借り、サーバー内にVMで既存システムを移行させれば……ある程度の概要は見えてきましたが、まだまだ問題は山積みです。どうなるかわからない話ですが、彼らだけではちょっと荷が重い話かな? と一枚噛(か)んでみました。

西に行くのか。あるいは北の果て北海道に行くのか。はたまた九州か(鹿児島に某社のデータセンターがあったりしますしね)。少なくとも東京にメインを置くというのがどれだけ危険か。それを考えてコストを考えて。

企業のサーバーが移動を開始しようとしている……それは事実です。まだ始まったばかりの状況ですが……。

タイムリミットは現在の計画停電からさらに悪化した状態になる夏前まで。首都圏の担当者達のアツい日々はもう始まっています。時間はわずか、震災の傷跡の中で何ができるのか。何も起きないまま人力で運用してしのいでしまいそうな気もしないではないですが(苦笑)。

そうならないよう、何かの手を提案してくれる企業が仕事を勝ち得るのかもしれません。

余談
個人的にはサーバーなんかより墨田区や大田区の工場地帯が気にかかっていたりします。あそこだけは止めないでほしい……大手の下請けいじめはすでに始まっています。停電地帯への発注を止め、停電がない工場に発注する。あたり前のようにそういうことをしておいて、停電は仕方ないとうそぶかれては町工場はたまったものじゃない……。まぁこの話はいずれまた書くこともあるかもしれませんが……今回の話の余談ということで。

※データセンターといえど完璧ではなく、今回の被災で北日本のデータセンターなどは相当めちゃくちゃです。落ちた天井。倒れたサーバー。決して公開されない惨状がそこにはあります。掲載は控えますが(機密ですし)、データセンターだから万全というものでもなく。むしろ海外のサーバーも含めてサーバーの仮想化に取り組む……なんて考えもありなのかな……なんて思っています。状況と会社に応じた対応が必要でしょうけれど。


執筆: この記事は今回はみやびさんのブログ『Amazonの悪魔』からご寄稿いただきました。

■関連記事
(無)計画停電(ジンバブエの場合)
みんなはいま、なにを思っているんだろう?
広くわかりあえる疎開論とは
原子力発電所で起こっていることは隠せても放射線は隠せない
広くわかりあうための原発論とは?:賛成派と反対派の壁を越えて